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人体代休散文

今から大変不謹慎なことを書く。
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わたしは昔から、体が動かなくなる人や、休職せざるを得なくなる人が、羨ましい。それも、ものすごく羨ましい。

わたしは、人体における忍耐力のようなものが、そして体力が、どうやらかなり、ある。そっとやちょっとで ”体が” 壊れることなど決してない。立ち仕事をして気がつけば10年近く、体調不良での欠勤はゼロ。

一方メンタルはズタズタである。経験をうまく処理できずトラウマは増え、生きれば生きるほど過去は増えてゆく。いろんな ”普通” のことができない。嫌なことを嫌と言えない。疲れたと言えない。体は丈夫だから頑張れてしまう。そもそも疲れているのはわたし自身であり、人体ではない。どうしたら良いのか分からないまま歳を取る。向き合わなければいけないのに、何を見れば良いのか分からず、自己嫌悪する。無駄に鮮明な記憶の数々。付きまとう、"嫌なことを嫌というと、見捨てられる" という確信に近い信仰。社会から。大事な人から。目の前に立ちはだかるのは "諦め" の高い壁。最後に残された選択肢はいつも、”突然、全てを捨てて逃げる”。もう頑張れない。けれども自分はついてくるのだから人生は依然として苦しい。当たり前であるが疲れなど取れない。

わたしの希死念慮は、結構ヤバい。世界はどうでも良くなって、でも死ねない。眠れないからお酒で睡眠薬を規定の2倍飲み、窓を開け色のない世界を見つめては鮮明に蘇る過去が頭を通り過ぎるのを待つ。朦朧とした頭で、最初からなかったことにできたら幸せだとぼんやり思う。どんなに空が泣いていても、わたしはこれっぽっちも泣けない。ただただ内に佇む暗闇にひたすら耐える。
 が、朝になりアラームが鳴れば、飛び起きて仕事に出ることが、できてしまう。それがわたしなのである。一歩職場に入ればニコニコして、完璧に仕事をこなすことも、できてしまう。まるで何もなかったように。突然逃げる、その日まで。


わたしは生活に、この人生に、疲れ果てている。ヘトヘトである。そしてこれがこの先も続くと考えると、未来など考えられない。本当はなんにもしたくない。なのに、税金はかかる。光熱費の請求が来る。わたしは大人なので、人体を必要に応じて睡眠薬とピルでコントロールし外に出る。アラームで起きれるし、多少体調が悪くても仕事くらいできる。精神的に疲れたからといって起き上がれなくなる日など、わたしにはこの先も一生来ない。泣けないまま日々は過ぎる。

それは、とても、苦しいのである。
捨てても捨てても ”自分” はついてくる。

もし、起き上がれなくなる日が来たら、幸せだろう。それが鬱でも、高熱でも何でも良い。仕事を休まざるを得ない日が来たら、幸福だろう。わたしには自ら休みを取る勇気などないし、そんなことしたら罪悪感でもっと疲れることを知っている。だから、休める人が目の前にいると、焦る。そもそも欲しいのは人体の休みではないと、解っているが、焦るものは焦る。疲れているのは外部の出来事に対してではなく、 "出来事を消化できない自分"であり、 "人生" であり、"それに伴う自己嫌悪" である。言うまでもない。
だけどもついつい思ってしまう。自分の判断でなく、強制的に休めたら、訳もなく涙が溢れる経験をしたら、楽だろうと。幸せだろうと。そんな人を、素敵だなあと思う。羨ましいと思う。あの人たちは、生きている。休むパワーがあり、「休みます」と口にできる。それはつまりその先も生きてゆく力があるということである。自分にはないあの力が、わたしは欲しい。大変不謹慎且つ情けない、そんな自分にまた疲れる。


睡眠薬が切れる頃には目覚めて、朝を待つ。白々と明け始める夜のなかで、聞き慣れたアラームを待つ。もうすぐ一日がはじまり、また歳を取る。アラームが鳴る。布団から出て準備をし、出勤する。職場では体力のある人ポジションに身を置いている。終わりの始まり。これくらい極めると、「いつも明るいけど、落ち込むこととかあるんですか?」などと言われる始末である。わたしは考える。この人体で、一体何をしているのだろう。中身の自分は、こんなに疲れているのに。


閉め切った窓から溢れる希望
最終列車の窓に

小山田壮平


ここにいる。人生とは、いまこの瞬間。だけど、一体なんのための?さっきまで待っていたのは、朝か?それとも人体の死か?救いなどない。生きるのなら、自分で何とかしなければならない。けど怒られたくない。見捨てられるのも怖い。でも本当はもう頑張りたくない。


いつになったら夜は明けるのだ?
神さま、せめてわたしに涙をください。
救いなど無いことなら、生まれたときから知っていますから。



【余談】
あ、元気です。
先程まで友人と、大人になって、頑張れちゃうよねという話をしていた。

次の給料日にはアルトーの『タラウマラ』とと吉行淳之介 の『人工水晶体』を買います。

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