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姫の一億円札を盗ったのは誰 Vol.8

俺は、引っ越し当日のみんなの行動を思い返していた。 そもそも、「姫」はどこに居たんだ? 俺は親父から姫が持っていた1億円札が消えたと親父に聞いてから色んな想いが頭を巡っていた。 もしかしたら貴子が盗ったのかもしれないと考えると、帰りの道運転しながら涙が流れてきた。 「え?どうしたの?」 そんな俺の異変に気が付いた嫁が聞いてくる。 俺は親父に聞いた事をそのまま嫁に説明した。 「実は姫の持ってた1億円札がなくなったらしい」 嫁はしばらく考えた後、一緒に姫の行方の記

    • 姫の一億円札を盗ったのは誰 Vol.7

      親父の引っ越しが無事に終わった次の日 親父から電話がかかってきた。 「洗濯機の使い方がわからないから、来てくれ」 俺は定時で仕事を上り、急いで嫁と親父の新居に向かった。 古い家に住み続けた親父は 新居に移るまで二層式の洗濯機を使っていた。 今ではほとんど見なくなった代物だ。 平成産まれの子は、逆に二層式の洗濯機の使い方の方が わからないんじゃないだろうか。 そんな昭和の家電を使い続けていた親父は 令和の家電についてこれなかったのだ。 俺は親父に使い方の説明をし

      • 姫の一億円札を盗ったのは誰 Vol.6

        俺たちは汗だくになりながら、昼過ぎには引っ越しも終盤を迎えていた。 親父の動きは70歳を越えているとは思わせないほど元気だ。 ズボンまでビッショリ汗をかいてる親父を初めて見た。 まだまだ現役で仕事をしている親父。 普段もこうやって汗を流しながら必死に働いてるんだろうな・・・ 昔の親父からは想像できない姿だ。 引っ越しがとりあえず落ち着いて、親父はご飯に行こうと提案した。 みんな汗だくだったので、新居で順番にシャワーを浴びてからご飯を食べに行く事になった。 嫁は

        • 姫の一億円札を盗ったのは誰 Vol.5

          引っ越し当日、あまりの暑さに外に出た瞬間俺は着替えを取りに帰った。 引っ越しの日するには辛い時期だ。 まだ梅雨が明けたところだったが外は38度を超えるか超えないかくらいの温度。 身体の大きい俺と貴子が一緒の車に乗っていると、一気に車内の温度が上がった。 そして、なんともカオスな雰囲気で俺たち5人は喫茶店で引っ越しの段取りについて話していた。 親父が言うには、嫁は新居で待機してその他の人達で荷物を運ぶと言う事だった。 嫁は暑さに弱く、夏になると引きこもりに拍車がかか

        姫の一億円札を盗ったのは誰 Vol.8

          姫の一億円札を盗ったのは誰 Vol.4

          引っ越しが終わって数日後、俺は当日の事を振り返っていた。 誰がどこに居て、どの時間に何をしていたのか。 いよいよ明日引っ越しと思っていたところ、なぜか貴子からLINEが届いた。 「明日、本当に私行かなくていいのかな?」 メッセージを読んだ俺は深いため息をついた。 なぜ来なくていいと断ったのに、まだ参加しようとするのか。 「親父が引っ越しの後美味しいもん食べさせてくれると思ってるんか?」 俺は送信したメッセージをすぐに取り消した。 つい本音が漏れてしまったのだ。

          姫の一億円札を盗ったのは誰 Vol.4

          姫の一億円札を盗ったのは誰 Vol.3

          親父の引っ越しの段取りを説明する為に、俺は息子に連絡した。 「当日8時に迎えに行くから」 「絶対に遅れてくるなよ」 いつも遅れてくる息子に念を押した。 その時、俺は前妻は呼ばなくていい事を息子に伝えた。 「ママは今回は呼ばなくていいから」 俺がそう伝えた後に聞こえてきた息子は落ち込んでいるようだった。 息子の悲しそうな声に、俺はまた甘やかしてしまいそうになった。 もうすぐ二十歳を迎える息子は未だに「ママ」と呼んでいる。 正直息子がこのまま、まともに育ってくれ

          姫の一億円札を盗ったのは誰 Vol.3

          姫の一億円札を盗ったのは誰 Vol.2

          親父の引っ越しが決まる1か月前、俺は親父に頼まれて嫁と実家まで向かう事になった。 どうやら親父は引っ越し前に家電を買い揃えておきたかったようだ。 「9時にはきてくれよ」 俺の家から実家までは高速を使っても1時間はかかる。 電気屋が開くのは10時からだったが、親父から9時には実家に来て欲しいと連絡があった。 親父は昔から休日は喫茶店に行かないと気が済まないという習慣があった。 だからこの日は電気屋に行く前にモーニングに行きたかったようだ。 かなり早く家を出ないとい

          姫の一億円札を盗ったのは誰 Vol.2

          姫の一億円札を盗ったのは誰 Vol.1

          とある家族の異質で歪な話。 なんの前触れもなく、突然親父から電話がかかってきた。 「引っ越しを手伝って欲しい」 これが全ての始まりだった。 俺の実家は片田舎にある、まあ・・・貧相な家だった。 連棟のそれはボロボロで、ついに建て壊しが決まったのだ。 今時ボットン便所に風呂なしの家なんて、うちの実家くらいだろう。 親父は飲んだくれで仕事もせず、俺はド貧乏の家庭で育った。 「正則、酒買うお金をじーじから貰ってこい」 俺が小学生で1人でバスに乗れるようになったのは親父

          姫の一億円札を盗ったのは誰 Vol.1