姫の一億円札を盗ったのは誰 Vol.8

俺は、引っ越し当日のみんなの行動を思い返していた。

そもそも、「姫」はどこに居たんだ?



俺は親父から姫が持っていた1億円札が消えたと親父に聞いてから色んな想いが頭を巡っていた。

もしかしたら貴子が盗ったのかもしれないと考えると、帰りの道運転しながら涙が流れてきた。

「え?どうしたの?」

そんな俺の異変に気が付いた嫁が聞いてくる。

俺は親父に聞いた事をそのまま嫁に説明した。

「実は姫の持ってた1億円札がなくなったらしい」

嫁はしばらく考えた後、一緒に姫の行方の記憶を辿ってくれた。

「私は1日新居に居たけど、姫は段ボールに入ってたよ」

「リビングと和室の間の扉の前に置かれてたの見たから」

嫁は朝から姫の存在を確認していたとの事。

「1億円札も見えたけど、縁起物だし・・・」

「触るのが嫌だったから荷ほどきはしなかったの」

親父も神経質な性格だったから、嫁に荷ほどきはしなくていいと念をおしていた。

「する事もなくて、段ボールから荷物出しておこうかと思ったんだけど」

「お義父さんに触らなくていいって言われてたから」

だとすると、姫の1億円札は朝から新居にちゃんとあったという事だ。

俺はある人物が頭をよぎった。

エアコンの取り付けをしていた大平さんだ。

リビングに待機していた嫁の横で和室にこもって数時間作業していたのは大平さんだけだ。

もし、その数時間の間に嫁が席を外していた時間があるとすれば?

大平さんなら十分に盗める隙がある。

もしくは親父の飲み友達の佐藤さん。

新居が見たいとやってきてしばらくリビングに居座っていた。

俺は荷物を運ぶので忙しかったから見ていないが、嫁曰く盗む機会があるとするならこの2人ではないかとのこと。

もしこの2人が犯人だったら、俺とは接点がないから問い詰める事もできない。

そして考えたくはないが、犯人が貴子か息子だったらという事。

嫁と俺は引っ越しが終わってすぐに車で待機していた。

居酒屋へ行くまでの間、貴子と息子は数十分新居でシャワーを浴びたり準備をしていた。

その隙に盗むことは容易いだろう。

いったい誰が親父の姫が持っていた1億円札を盗んだのか。

価値でいうと大した物ではないが・・・

ギャンブラーの親父からしたら宝物だった。

これがあるからギャンブルに勝てると信じていた縁起物だから。

俺は早く解決したい気持ちから、すぐに息子と貴子にLINEを送った。

「親父の大事な縁起物がなくなったんだけど、知らない?」

この文面で縁起物が何かわかった奴が犯人だ。

俺は、縁起物の特徴を説明せずに2人に聞いた。

頼むから犯人じゃないと分かる返事をしてくれ。

俺は2人からの返事をジッと待った。










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