姫の一億円札を盗ったのは誰 Vol.5
引っ越し当日、あまりの暑さに外に出た瞬間俺は着替えを取りに帰った。
引っ越しの日するには辛い時期だ。
まだ梅雨が明けたところだったが外は38度を超えるか超えないかくらいの温度。
身体の大きい俺と貴子が一緒の車に乗っていると、一気に車内の温度が上がった。
そして、なんともカオスな雰囲気で俺たち5人は喫茶店で引っ越しの段取りについて話していた。
親父が言うには、嫁は新居で待機してその他の人達で荷物を運ぶと言う事だった。
嫁は暑さに弱く、夏になると引きこもりに拍車がかかる。
外で荷物を運んでも邪魔になるだけだろう。
新居で業者が来た時の対応を任せたいとの事だった。
お金を預ける事にもなるし、適任だろう。
なにせ貴子には前科があるから・・・
そして朝10時頃から引っ越しが始まった。
親父が早めに少しずつ荷物を運んでいただけあって、残りは大物ばかりだ。
2階にあるタンスを息子と2人で運んでいく。
どうやって入れたのか、出すのにかなり苦労した。
それに階段は狭くて、運び出すのにかなり時間を有した。
「もうちょっとこっちから引っ張って」
「私がここ持つから、そっちもうちょっと上げて」
突然、貴子が仕切りだした。
俺はただでさえ暑さで苛立っていたのに、貴子に指示された事でさらに怒りのボルテージが上昇した。
息子は現役で引っ越し屋のアルバイトをしているだけあって、なかなか手際がよかった。
普段ダルそうに歩く息子だったが、意外な才能発揮だ。
それに比べて、なぜ貴子は指示を出してくるのだろうか。
正直、持てるだけの荷物を持ってさっさと新居に運んできてほしかった。
完全に間違ったポジショニングだ。
俺は指示を出すポジションのコンバートを願った。
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