姫の一億円札を盗ったのは誰 Vol.7

親父の引っ越しが無事に終わった次の日

親父から電話がかかってきた。

「洗濯機の使い方がわからないから、来てくれ」

俺は定時で仕事を上り、急いで嫁と親父の新居に向かった。

古い家に住み続けた親父は
新居に移るまで二層式の洗濯機を使っていた。

今ではほとんど見なくなった代物だ。

平成産まれの子は、逆に二層式の洗濯機の使い方の方が
わからないんじゃないだろうか。

そんな昭和の家電を使い続けていた親父は
令和の家電についてこれなかったのだ。

俺は親父に使い方の説明をした。

使い方と言っても、電源を入れてスタートボタンを押すだけなんだが・・・

それだけなら電話でも済みそうな気もするが、
直接会って確認したい事があったようだ。

親父は前の家に一緒に取りに行きたい物があると
俺を連れ出した。

そして2人きりになった時、冗談ぽく親父は俺に問いかけた

「姫の前に昔から置いてあった一億円札がなくなってるんだけど」

「見てないかな?」

親父は生粋のギャンブラーだったのもあり
縁起物をやたら大切にする節がある。

「そんなの置いてあったっけ?」

俺は必死に記憶を呼び起こしたが、なんとなくしか思い出せない。

「もしかして・・・貴子じゃないよな?」

親父は貴子が盗ったんじゃないかと思っていたようだ。

「さすがに、それはしないだろ」

俺も貴子の事が一瞬よぎった。

以前も親父の家でお金がなくなったりしたが
貴子が犯人だった。

でも、まさか引っ越しの日を狙って盗るような事はしないよな。

俺は頭の中に嫌な想像がグルグルとまわっていた。


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