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舞台血界戦線(ぶたけつ)を観て、私たちが2.5次元舞台に求める構造と魅力を考えてみた


2.5次元舞台に対して、わたしたちは何を求めるのだろう。魅力とは何だろう。

ーー実存する錯覚を愛して、妄想が具現化した喜びと、新たに配給される「人間関係の営み」。原作公認から増幅される「人間関係のあり方」の尊さに堪らなく感じてしまう私たちを、夢中にさせるのだ。

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2.5次元の舞台観劇を、生で初めて体験してきた。

血界戦線の舞台が発表されたのは三度目。SNSで三作品すべて生舞台で観劇した人のコメントを見ていると、毎度パワーアップデートされている所感。これだけ続編が創られるということは、アニメや漫画だけのファンでなく、“それ自体”のファンも付いてきたという結果だろう。

私は、血界戦線がとても大好きな作品で、生み出してくれた原作の内藤泰弘先生に対して、感謝してもしきれないオタクです。

血界戦線の過去舞台作品は、映像やライブビューイングで試聴したことがある。ライブビューイングの平面的な映像と対比して、舞台で見る立体的に得られる感情の獲得は、完全に異なるモノであった。

ストーリーや、2次元からの再現性を確認する行為を求めるだけであれば、ライブビューイングでお腹いっぱいだが、かき集めて紡ぎ出された芸術を感じるために、なぜ今まで生の舞台で体感しなかったのだろうかと後悔したソワレだった。つまり、とても良かった舞台だったという事!

「2.5次元舞台だから、どんなもんか所感だけでいいや。ライブビューイングでいいや。」と食わず嫌いでいた自分が嫌になった。

(舞台の内容自体に言及するのではなく、私自身が舞台血界戦線を観て、思ったことや感じたことをインスピレーションを受けながら、主に2.5次元舞台に対する思考を綴っています)

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2.5次元舞台の最大の魅力は、「コイツ実際に存在しているのか…!」と、再現性が獲得できることだと思っている。

ファンが心待ちにしている中で(舞台観劇オタクで推しの役者さんがたまたま演じていて、原作を知らぬまま観劇をし、原作にハマるケースもあるが、大抵は原作ファンが流入していくことが多いだろう)「まさに、紙面や映像から飛び出してきた!」の官能的な衝撃が、ファンニーズの大部分を占めて、求められているのだろう。

すでにアニメーションで作品が出来上がっている場合は尚更、声優さんの声でイメージづけられていることや、アニメーターさんの緻密に作られた動きを印象づけられているので、2.5次元に対して抵抗感を持つ人間も多い。特に、アニメの声優さんの担う効果は大きい。アニメ声優“それ自体”にスキを送っている人がいて、2021年現在で完全に確立された推し分野になっている。(アニメから、声優さん中心のイベントが開催されることが一般化されている事より)

視覚情報オンリーで無音声だった紙面から、聴覚や動作が確認されるアニメへのファーストステップは、設定されていない未知のものから創作されるので、受け入れられるハードルが低いのだろう。対して、2.5次元舞台の多くは、アニメ化やドラマCD化が済んだケースが多く、既存のモノからの加工であり、消費者側がすんなりと受け止めるハードルが高い。

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「再現性を重要視されること」は、興味深くて、新しい舞台芸術の形だと感じている。

歴史的に何度も訳されて変容された舞台の中は、“再現だけ”ではつまらないと捉えられる。


例えば、シェイクスピアは、さまざまな演出家がいろんな解釈や、違う角度で翻訳して、色とりどりに公演をしてきた。

何度も題材として扱われたモノに対して求められるのは「オリジナリティ」。どこまで加工して新訳が出来るか、というリレーがなされている(もちろんシンプルに上映されることもあるが)。


それに対して2.5次元舞台は、「どこまで再現性が可能なのか」に焦点が当てられがちだ。特に初めての題材で舞台を行うとなったら、消費者は近接性を手に取りがちで、間違い探しのように対比させる。

実際にSNSを見ていると、「似ていたからリアルさを感じた」「似ていなかったから受け付けなかった」論争が多く見受けられる。

別モノとして解釈されても受けいられるようになるためには、“それ自体”、つまり、舞台自体が好まれて、一分野として確立するために何公演も積み重ねることが必要だろう。

あくまで、「再現性がある中での延長線上」が鍵で、初回から加工が増えすぎると、違うものと成り果ててしまって消費者が受け入れ難いのが、2021年現在の2.5次元舞台だ。

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今後は2.5次元舞台が台頭して歴史も積み重ねているので、変わっていくのかもしれない(初回からオリジナルストーリーとか!別訳とか!)。原作が派生して形が変わり、作品がより魅力的なものに感じる芸術は美しい。

正直2.5次元は「再現性がなんぼ」と思う人が多く、私自身もそうであった。思わず役者/俳優さんに目移りしてしまうことや、初回から新たな価値観の創出が受けいられるようになるのも、早い将来ではない。(すでに役者/俳優さん自体に興味を持ってる人もいるので、グッズが販売されているよね)

三度目なった舞台血界戦線は、日替わりでオリジナリティを付け加えることや、ファン受けしそうな細かい構図(シーン)が多く見受けられた。「三作品目で土壌は出来上がった、リピーターよ楽しんでくれ!」と、総合芸術が紡ぎあったハーモニーはワクワクして、こりゃ何度も足しげく通う人がいるわけだと思った。


以上、繋がっていく消費の営みに、ぶんぶんと振り回されるオタクの戯言でした。

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