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「アダム&アダム」の感想(ネタバレあり)

Netflix配信作品。
7月24日公開の「デッドプール&ウルヴァリン」に向けて、ショーン・レヴィ監督の過去作を予習の意味で鑑賞してみた。

タイムトラベル設定がまず面白くて、普通何かしら主人公同士が出会っちゃいけないルール設定とかありがちだと思うのだけど、最初からどんどん絡んでいくのがあまり観た事ないタイムトラベル映画。

アベンジャーズエンドゲームの時に「「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のタイムトラベル設定は映画の中だけの話だ」みたいなやりとりがあったと思うのだけど、今作では子供アダムの「マルチバースじゃないの?」ってセリフに大人アダムが「映画の見過ぎだ」と返す所があってタイムトラベル映画としてスタンダードになったエンドゲームとまた違うルールの映画ですよ!と、ここで宣言している感じ。

今作のタイムトラベルルールは時間軸は一本なのだけど、何か時間軸が変更されると、みんなの記憶が後から勝手に修復されるというパターンなので、割と何をしても大丈夫という事になっている。
過去に誰かが何かすると、その記憶が消えるので敵側が変えた過去を認知出来なくなっていくのとか、あまり観た事なくて面白い。

まあ時間移動の設定とかなかなか複雑な話だし、完全に理解出来ている気はしないのだけど、よく分からないけど次はこうなる!と登場人物が分かりやすく紹介してグイグイ話が進んでいくので混乱せずに観終える事が出来た。
それでいてアクション描写とかも見応えがあって、未来のアダムが使う戦闘兵器とかガジェット的にもかなりフレッシュで面白い。「これ、ライトセーバー?」からの「ライトセーバーじゃん」の流れとか笑っちゃう。
あとタイムマシンが戦闘機と合体したマシーンなのとか、アイデアがなんとも中学生的だけどしっかりかっこいいデザイン。
このタイムマシン戦闘機はタイムトラベルの直前に攻撃を受けて壊れているのだけど、その搭乗者が負傷していると搭乗拒否されるハイテクマシンで、撃たれて怪我をしている大人アダムは仕方なく子供アダムと協力しないといけない流れとか強引ではあるのだけど、そんな事も気にならない位、子供アダムを演じたウォーカー・スコベルと大人アダムを演じたライアン・レイノルズの会話劇の息がピッタリでグイグイ映画に引き込まれていった。

監督のショーン・レヴィは「フリー・ガイ」だけ鑑賞してたけど、こういうSF的な世界観構築力とそれを映画的に分かりやすく説明する手腕がめちゃくちゃ高いと思う。
そしてそれ以上に登場人物に対して血の通った人間として優しい目線を送りながら描くドラマの要素が本当に素敵。
今作は色んな要素がありなが長い時間をかけて溝が出来てしまった家族が絆を取り戻す「ファミリー映画」の印象が一番強かった。

大人アダムは母親との関係に悔いが残り優しく接すればと後悔していて、子供アダムは母親に反抗している真っ最中、それに対して父親には大人アダムは怒っていて、子供アダムはまだ一緒にいたいと思っている。
この大人アダムと子供アダムの父母に対するスタンスがそれぞれ真逆なのが凄く面白い。

母親とのシーンで「愛してるわ」と言った後、アダムがひねくてた事を言う前に「僕も心の底では愛してる」と先に言って出ていくシーンがその時の2人の関係性を示す良い場面で印象に残るのだけど、それが偶然大人アダムがバーで居合わせてしまう所でとても感動的に機能するのとか本当に脚本が上手い。
自分の正体がバレない様にしているけど、母親と良い関係が築くことが出来なかった彼が本心からその言葉を繰り返す所で思わず泣いてしまった。

父親とのパートも素晴らしい。
一旦父親と別れた後、大人アダムと子供アダムが父親への想いをお互いがぶつけ合うシーン。
大人アダムは怒ることで父親への気持ちを上塗りしていったのに対して、子供アダムはまだその途中で何とか父親との記憶を怒りで濁さない様に踏み止まっていて、それすら忘れていた大人アダムが、辛い想いを抱えていたかつての自分をもう一度認める様な流れが本当に感動的だった。
だからこそラストの父親と抱き合って、キャッチボールする所がめちゃくちゃグッとくる涙無しで観れない名シーンになっていたと思う。

時間が経つにつれて父親への憎しみを募らせていったけど、かつての自分にそれだけじゃない事を教わった主人公サイドの関係性と、元々善人だったのに時間を経ていく事で悪人へと変わっていき、過去の自分をこちらに引きずり込もうとする悪役側の関係性が対をなしているのも味わい深い。
ただの悪役じゃなく元々は志を持っていた哀れさみたいな部分をキャサリン キーナーが見事なバランスで演じ切っていたと思う。

そんな感じでSF的な設定の目新しさと、血の通った人間ドラマをしっかり描ききる手腕。
この辺はデッドプール3に遺憾無く発揮されそうだし改めて今から楽しみ。
アベンジャーズ5の監督の有力候補という話も出ているけどそれも納得。

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