深夜、突然水浸しになった葬儀式場の話
怖さ:★☆☆
会社の友人で、以前葬儀社に勤めていた方が、今から15年ほど前に体験したお話です。
その葬儀会館の造りは、正面の入り口を右手に事務室、中央に葬儀を行う式場、左手に安置室(霊安室?遺体を保管する部屋)があり、左手を奥に曲がったところに従業員の出入り口がある、というものでした。
ですので、従業員が夜、家に帰る時には、まず事務室で全館の電気を消して、暗闇の中を携帯(体験当時。今だったらスマホ)のライトで前を照らしながら、葬儀式場と安置室の前を通って従業員用の出入り口に進み、セコムをして施錠するというのが、一連の流れだったそうです。
彼が新卒で葬儀社に入ってから3年程たったある夜のことです。秋か冬か、少し寒い時期でした。一日の仕事を終えて、夜10時ごろ帰ろうと、残っていた同僚と2人で事務室を出ました。
事務室を出て、暗闇の中を進むと、足元で「ピチャッ」と音がしました。
「ん?」
隣にいた同僚も変な音に気が付いたようで立ち止まりましたが、またもう一歩、進みました。するとまた「ピチャッ」と音がします。
なんだろう?と、事務室に戻って電気をつけてみました。すると、エントランスの部分が、式場の前から霊安室の前まで一面水浸しになっていました。1センチくらい、水が溜まってるみたいだったそうです。
どうしようか?と迷ったのですが、そのタイミングで上司に連絡を入れると、絶対に「残って何とかしろ」と言われることは分かりきっていたので、同僚と2人、何も気付かなかったことにして、葬儀会館の電気を消して、ピチャン、ピチャンと水音を立てながら霊安室の前を通って、従業員出口に向かいました。
そのままセコムの警備のスイッチを入れて、施錠して帰りました。
翌朝、気になって最初に出社した事務の女性に「今朝、異常はなかったですか?」と確認したところ「いいえ、別に何もありませんでした」との返事でした。
あの床一面が浸っていた水はいったい何だったのかは、今もわからないままだそうです。
話し手:40代 男性
採取時期:2020年11月
採取場所:東京都内
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