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だや@光と私語
2021年12月15日 20:34
川野芽生歌集『Lilith』評𠮷田恭大 二〇一八年に第二十九回歌壇賞を受賞した著者の第一歌集。庭と芝居小屋。「借景」という機能によって二つの建築が結び付けられる。市庁舎、図書室、美術館。人工物の中に詩歌を見出すためには、自分の中にその建築を、都市の機能を改めて理解する必要がある。歌集の中に取り込まれた人工物は、実在のものに留まらない。とりわけ中盤以降、竜や天使といった、先人たち
2019年6月23日 12:31
千種創一『砂丘律』評吉田恭大 また言ってほしい。海見ましょうよって。Coronaの瓶がランプみたいだ。もう服も乾いただろう、行こうか Perrieの瓶へ吸殻おとし双子のような二首を挙げる。それぞれ他者からの呼びかけ「海を見ましょうよ」、他者への呼びかけ「行こうか」を起点に、一首が成立しており、それが定型に落とし込まれた際に句跨りや破調として存在感を主張する。韻律を撓めて主張される個
2019年12月22日 00:03
乗るたびに減る残額のひとときの光の文字を追ひ越して行く /山階基『風にあたる』 SuicaやPASMOで自動改札を通るとき、小さな窓にチャージの残額が一瞬現れる。その表示はほんの一瞬で、人によっては改札を過ぎれば忘れてしまうくらいの些細な出来事かもしれない。 いわゆるSuica、前払式支払手段を使うとき、私たちは「運賃を事前に支払っている」という理屈で改札を通っている。そして改札を出