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京都府立植物園で、植物紳士と邂逅した記憶について。

京都旅行の2日目、瑞雲庵で開催されていた展覧会「遍在、不死、メタモルフォーゼ」に行くこと以外は何も決めていなかった。私の場合、展覧会は長くても2時間程度で観終えてしまう。

久しぶりの京都旅行、悔いを残して帰る…なんてするなよ?
と、もう1人の自分が煽ってくる。

いい度胸じゃねぇか。やってやらぁ。
少しでも気になった場所には立ち寄ると決めた。

京都駅から烏丸線に乗り、北山駅へ向かう。
駅を出ると正面に大きな門があった。

「京都府立植物園」
こんなに広いところは1日じゃ回りきれないだろうけど、面白そう。少しの興味から、展覧会の帰りに寄ると決めた。
ま、一眼カメラの練習にもなるわけだし。

展示を観終えて、植物園に向かった。
植物園の券売機の前に立ったとき、私は驚いてしまった。

“大人200円 小人100円”

こんなに広そうな植物園に足を踏み入れる経験、200円で買えちゃうとは…!と感動した。

マップを見て、広そうだな…と思っていた印象は現実となる。

広い…迷いこんで帰れなくなりそう…(方向音痴)
でもこの後に予定があるわけじゃないし、まあいっか。
どこに何があるかはあまりわからなかったが(マップをしっかり見ていないのと方向音痴のせい)、己の直感を信じて園内を歩いていくことにした。

案の定、「ここ、鑑賞ルートじゃないだろ…」という道を歩いたり、何の目印も見つけられずマップが役に立たなくなったりしたこともあったが、なんとか沈床花壇がある噴水までたどり着くことができた。

紆余曲折あって、視界が開けたらそこは噴水を見下ろせる場所だった。
すると目の前に、地を這うように姿勢を低くして草花を見つめる初老の紳士がいた。

しかし、私は噴水と花壇の写真を撮りたい。植物に夢中な人だろうし、その人のことをあまり気にせずに噴水の方へ近づいていった。

「いやぁ…すぅごいわぁ…」

足元から、感嘆する声。独り言の声量ではない。
でも、あの人、1人で見てたよな…

ん?ひょっとして話しかけられてる?と思ってそちらへ視線を向けてみると、

…目があった。

「いやぁ、こりゃすごいですよぉ…」という言葉を皮切りに、マシンガントークがはじまった。

植物紳士は、草花に疎い私に対して丁寧に説明してくれた。
足下に咲いているセッカニワゼキショウはあまり見かけない、珍しい草花らしい。ニワゼキショウはアヤメの原種のような草花なんだよ~、などなど。

セッカニワゼキショウ(筆者撮影)
ニワゼキショウ(筆者撮影)

視野を広くしてみると、その芝生全体にセッカニワゼキショウが咲いていた。「植物園の花」と言われると、どうしても花壇の花ばかりに目が行ってしまう。この時期はバラが見頃で、バラ園は人で溢れていた。

でも、芝生の草花だって植物だ。
紳士との出会いは、僕の視野を広げてくれた。

芝生に咲くセッカニワゼキショウ、か。
へへっ、いいこと聞いちゃったぜ。
鼻高々に、これをnoteに書くんだ!と意気込んでいた。

植物園に入った時には、すでに携帯の充電は切れていた。
筆記用具を持っているわけではないし、花の名前は聞き馴染みがなさすぎてしばらく思い出すことができなかった。

携帯が使えなかったからこそ、カメラで写真を撮ることに集中できたし、目の前の植物を全身で鑑賞できたという恩恵もある。
京都駅で帰りの新幹線を待っている間にスマホは復活し、無事にニワゼキショウの名前に辿り着くことができた。

いろんな出会いがあった今回の京都旅行に悔いはない。
今まで知らなかった世界の扉が開いたことで、新しい風が自分の中に吹いてきている。

この旅行が、扉を開ける冒険心を教えてくれた。

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