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太平洋と大西洋、よく似た言葉だけど頭文字が「太」と「大」なのはナゼ?【6/8は世界海洋デー】

本日は、国連が定めた世界海洋デーです。
ブラジルのリオデジャネイロで1992年6月8日に開かれた「地球サミット」において、カナダ代表が提案して制定されました。

今日はこの海洋にちなんだ雑学をご紹介します(一昨日投げっぱなしになっていた奥多摩の話はまた後日、、)

漢字が異なる二つの大海

この地球上には大きく分けて3つの大海があります。
それが私たちの国・日本が面している太平洋と、アメリカ大陸とヨーロッパを隔てる大西洋、そしてインド亜大陸の南に広がるインド洋です。

このうち、太平洋と大西洋はとてもよく似た名前です。
読み上げれば、「たいへいよう」「たいせいよう」と、一文字違い。子どもの頃に違いがよくわからなかった人もいるでしょう。

しかし漢字で書いてみると、明確な違いが出ます。どちらも最初は「たい」と読ませるのに、
太平洋が「太」で、一方の大西洋が「大」という字なのです。太いと大きい、点が1つあるだけで漢字の意味は異なってしまいます。

では、なぜこのような違いがあるのでしょうか。2つの海の名付けから探っていきましょう。

平穏な海を意味した「太平洋」

太平洋という言葉は、英語で書くと「Pacific Ocean」。直訳すると穏やかな海という意味です。
この語源は「Mar Pacifico」というポルトガル語で、史上初めて世界一周航海に成功した、16世紀の探検家フェルディナンド・マゼランによって命名されたといわれています。

マゼランがこの大海を〈穏やかな海〉と名付けたのには理由があります。
ポルトガルを出発したマゼランは、西回りで航海していきました。南米大陸南端の海峡を抜けて、フィリピン諸島に到着するまでおよそ100日を航海していたわけですが、マゼラン一行はこの間、なんと一度も嵐に遭うことなく、平穏な航海を続けられたのだそうです。そのため、この海に〈平穏〉という言葉を名付けたというわけです。

そしてこの「Mar Pacifico」を日本語にするとき、「平穏」という意味の類義語である「太平」があてられました。幕末の1855(安政8)年のことです。
戦乱のない平和な世の中のことを「太平の世」などと時代劇では言ったりしますが、荒れた様とは正反対の穏やかなようすを指す言葉というわけですね。

ちなみにこれ以降、「太平」と同じ意味の「泰平」と表記されたり、「太平海」「静海」などと書かれたこともありましたが、大正期には「太平洋」に統一されました。

伝説の大陸が由来の「大西洋」

一方の大西洋の由来といえば、太平洋とは全然違います。
まず英語の「Atlantic Ocean」の語源は、古代ギリシャの哲学者プラトンが唱えた、海中に没した幻の大陸・アトランティスです。
この伝説が基になり、この海域は古くから「Atlanticos」(アトラスの海)と呼ばれてきました。

ただ、これが大西洋という漢字に直接つながったわけではありません。
「大西洋」の初出は17世紀。
1602年に中国大陸で布教中だったイエズス会宣教師マテオ・リッチが、漢字の世界地図『坤輿万国全図』を作成した際、ポルトガルの西側に漢字で「大西洋」と書いたのが始まりです。

マテオがこの漢字を選んだ明確な理由は伝わっていませんが、おそらく「西洋の前方に開けた大きな海」というそのままの意味を込めたのだろうと推測されています。

この『坤輿万国全図』は日本にも伝来しましたが、その後に英語の「Atlantic Ocean」と混同されて「亜太臘海」「壓瀾的海」という表記もたまに見られました。

太平洋と大西洋、読み方は似ていますが、〈平穏の海〉と〈西側の海〉という全然違う意味だったのですね。


Ⓒオモシロなんでも雑学編集部

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