🎭双子村【短編小説】サクッとショートショート!
僕は友人2人と双子村に向かっている。
双子村とは通称で、本来の村の名前は僕も友人も知らない。
双子村はネットのオカルト好きには、それなりに有名らしい。
僕はオカルト的な事には興味はないが、友人2人はとてもオカルト好きなため、この双子村の情報を知った途端、興奮が収まらない様子だった。
双子村の場所が、僕達が住んでいる場所の隣県ということで話が盛り上がり、その勢いで双子村に行くことになった。
僕は行くことに乗り気ではなかったが、2人に無理やり連れて来られた感じだ。
双子村は森に囲まれて車では行けないため、途中から徒歩で双子村まで向かうことになった。
10分くらい森の中を進むと、真夏だというのに何か肌寒く嫌な感じがした。
樹海には行ったことはないが、樹海とはこういう場所なのかな?とも思った。
僕は一応、リュックの中にそれなりの救急道具と食料を入れ、万が一の怪我や遭難に備えて来た。
友人2人は僕の慎重さを馬鹿にしたが、僕的にはお化けや幽霊の類よりも、怪我や遭難などの方がよっぽど怖いと思っている。
1時間ほど歩くと、目の前に少し開けた場所が見つかった。
そこには民家の土台らしき残骸があった。
友人2人は「ここが双子村だ!」と興奮気味で叫んだ。
更に開けた場所を奥に進むと、3つほどの民家の跡地があった。
どうやら昔、ここには小さな集落があったようだ。
友人2人の話では、昭和初期に双子村で不気味な双子が村の人々を惨殺したらしい。
しかし、そんな猟奇的な事件があったとすれば、新聞などの記録に残っているはずだが、そんな記録など全くないらしい。
確かにここには小さな集落はあったようだが、どうやらオカルト好きの人々が作り上げた、でまかせの事件だと僕は思った。
小さな集落跡地の探索に飽きた僕は帰りたいと思っているが、友人2人は何かを一生懸命に探している。
どうやら双子村の象徴とされている双子の家を探しているようだった。
その双子の家は集落から少し離れた場所にあり、その家の大きさは物置小屋くらいの小ささしかないらしい。
僕はそこで疑問に思った。
他の民家がほぼ原型を留めていないのに、そんな物置小屋ほどの小さな家が残っているはずはないと。
すると遠くの方で、友人の一人が大声で僕達を呼んでいる。
どうやら目的の小さな家を見つけたらしい。
僕は本当に見つかるとは思っていなかったので、正直驚いた。
小さな家はボロボロになっていたが、かなり原型を留めていて、ちゃんと家と言える代物だった。
そして友人の一人が引き戸に手をかけ、扉をゆっくりと開ける。
家の中は薄暗く、家の隙間からは所々、細い太陽の光が差し込んでいた。
僕達三人はゆっくりと家の中に足を踏み入れた。
4畳ほどしかない小さな家の奥に何か縦長の何かが見える。
よく見ると、ゴツゴツした岩が3つ縦に積み重ねてあった。
下の岩は縦に楕円形をしており、その上にバスケットボールほどの岩が縦に二つ積み重ねてあった。
それはまるで小さな人間が立っているように見える。
しかし、人間というには頭が一つ多い。
もしかして、この頭のように見える岩が双子村の由来なのかと思った。
全くの嘘のオカルト話ではなかったが、結果がわかってしまうと何ともガッカリな感じだった。
そして僕は家から出ようとした。
しかし、何故か足が動かない。
いや、足どころか、体全身が金縛りにあったかのように動かなくなっている。
オカルト的なことを信じていない僕でも、さすがにこの現象には恐怖を感じ、体中から冷や汗が止まらなかった。
僕は二人に助けてもらおうとしたが、声も出せなかった。
僕の前には友人2人がいるのだが、二人の体は小ギザミにわずかに動き、どうやら僕と同じ現象になっているのだとわかった。
すると、目の前にある二つの岩の頭部部分がガタガタと揺れ始め、横回転し始めた。
二つの岩が180度横回転し終えると、更に岩は荒ぶるようにガタガタと激しく揺れる。
するとその岩に、人間の顔が浮かび上がってきた。
下の岩には悲しく泣く女性の顔があり、上の岩には怒りに満ちた男性の顔が浮かび出された。
そのとき頭の中に男の声で叫ぶように『殺してやる!』と聞こえた。
すると男の顔の岩が勢い良く跳ね上がり、一人の友人の頭へと落下した。
グシャリと不気味な音とともに、友人の頭は半分まで陥没していた。
友人の体は小ギザミにピクピクと痙攣し、崩れるように床へと倒れる。
そして男の顔をした岩は、なんとムシャムシャと友人の体を頭部の方から食べ始めた。
僕はあまりにも異常な光景に吐きそうなくらい気持ち悪くなったが、体は金縛りのままだったため、動くことができなかった。
一分もしないうちに、男の顔の岩は友人の体を食べ尽くした。
そこには友人の大量の血だけが床に広がる。
すると女性の顔をした岩が更に悲しい顔になり、目からは大量の涙を滝のように流し始めた。
その涙はまるで意志があるように、床に広がった友人の血をキレイに流し取り、まるでそこに死体があったとは思えないほどだった。
もしかしたら今まで何の事件にもならなかったのは、こうして殺した人間を痕跡を残さず消しとっていたからかもしれない。
僕がこんな状況で、そんな事を考えていると、男の顔の岩が僕の方へと顔を向けた。
そしてまたしても頭の中に『殺してやる!』という身の毛のよだつ絶叫が響き、さっきまであった男の顔の岩は一瞬にして僕の視界から消えた。
と同時に僕の頭の頭頂部にとてつもない激痛が走った。
金縛りで声を出すことはできなかったが、僕は心の中で断末魔のような悲鳴をあげた。
僕の体が徐々に倒れているのか、ボヤけた視界が横へと倒れて行くのがわかる。
床に倒れる瞬間の間に、もう一人の友人の顔が見えた。
友人も金縛りにあっているはずだが、その顔は絶望と恐怖で歪んでいた。
たぶん僕が死んだあとは、残された友人も殺されるのだろう。
僕は今更ながら双子村に来なければと後悔した……。
※
―――数年後、ある民家で奇っ怪な資料が見つかった。
その資料には、昭和初期にある小さな集落で、頭部が上下に繋がった赤ん坊が出産されたと記載されていた。
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