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「AIスコア社会 土砂降りの中で濡れる男」ショートショート

スコアーーという言葉が一般化したのはここ数年だろうか。

正確には個人信頼性度数というなんともつまらない名前だが、これが生活全般に影響を及ぼしている。

昔でいえば、クレジット会社の与信のようなものの進化版だとおもうとわかりやすいだろうか?

個人の行動が日々計測され、数値化され、可視化される。

これにより、最初はクレジット会社などの金融面で普及が進んだ。

さらにこれらが各個人のSNSでなどと繋がることで、その人が他者からどう評価されているか、が可視化されることになった。

それにより、SNS等での発言が信頼に足るものなのか? が判別されるようになった。

当初は反発も予想されたが、SNSと連携するのが逆にウケた。

インフルエンサーなどがこぞってこのスコアを信頼性の担保に使ったのだ。それに釣られて、一般層も自己承認欲求と組み合わさり、自分から率先してスコアを利用するようになっていった。

いまでは、スコアがある程度高くなければ、日々の生活に支障が出るくらいだ。


スコアは各人が持っているデバイスと各所に設置された監視カメラなどの映像と紐付き、行動が記録され、日々刻々と変動する。

これにより、社会秩序が保たれた。

そして、社会平和にも貢献した。

悪態をつけば、数値が下がる。犯罪を犯せばもちろん激減する。

ちょっとしたいいこと、他人に優しくするでも、募金をするでも、行動に記録されることだったら、プラスに働く。

スコアは人の行動を是正するように、働きかけてくれたのだ。

スコアは公正だ。あくまでも客観的に事実としてどうか、しかみない。

忖度もせず、容赦もしない。

他人の行動にむしゃくしゃもしなくなった。悪いことをすればスコアに反映される。

スコアの動向を気にすれば、よく生きられる。


実に楽な世の中になった。

「さて、」

土砂降りの中、男は傘をささずに歩く。

ーーなんでかって? ここでビニール傘でも買えば、エコじゃないってスコアがさがるからさ。



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