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「幸福なレンガ積み職人と不幸なレンガ積み職人」ショートショート

とある旅人が、そこを通りかかると男たちがレンガを積んでいました。

「せいがでますね。なにをつくっているのですか?」

「さぁなぁ、自分はレンガをつんでいるだけだから」

近くにいる男に声をかけると、そんな答えが返ってきました。

「気になるなら、お偉いさんにききな。お偉いさんに聞けば、なにをつくっているかおしえてくれるだろうさ」

「そうですか。ありがとうございます」

旅人はお礼をいうと、近くにいるもう1人の男にきいてみました。

「なにをしているのですか?」

「私は立派な大聖堂をつくっているのです!」

男はそう胸を張って答えました。

「大聖堂ができた暁には多くの人が参礼し、幸せを祈ることでしょう」

「それは立派な仕事ですね」

「はい!」

そう男は答えました。

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「おう、帰ったぞー」

「「「おかえりなさいーー!!!」」」

レンガを積んでいると答えた男は家に着くと、子供たちが出迎えました。

力仕事でくたくたですが男は、一人一人の頭を撫でました。

「お帰りなさい」

「おう。今日の分の賃金さ」

妻も出迎えてくれます。男は給料袋を渡します。すると妻は両手で預かります。

「今日もおつかれさま。晩御飯はシチューよ」

「お、お前のシチューはうまいからな」

そういうと、一家団欒を男は楽しみました。


ーーーーーー

「帰ったぞー!」

立派な大聖堂を立てているといった男が家に帰ります。

しかし、返事は返ってきません。

それもそのはず。男は毎晩、飲み歩いてから家に帰るのです。

そのため、いまはもう深夜。普通なら寝静まっている時間です。

今日の賃金も飲み代にほとんど消えてしまっています。

それに妻は文句を言うものなのですが、男は気にしません。

立派な大聖堂を作る仕事は疲れます。飲んで気持ちを晴らさないとやっていけません。ですが、それくらい許されるはずです。

なんせ、立派な仕事をしているのですから。

「おい! こっちが1日つかれて帰ってきたんだ! 出迎えくらいしないか!!」

男はどなります。いつもなら、ここでようやく妻が起きてきて、子供も心配そうに出てくるのですが、今日はまったく反応がありません。

「なんなんだ。こっちが立派な仕事をしているっていうのに、ねぎらいひとつできないのか」

そう文句を垂れながら、家の中の机を見ると、手紙が置いてありました。



「実家に帰らせていただきます」







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