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仏蘭西生活記

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フランスに住んで考えたこと、気づいたこと
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#海外生活

さよならパリ、たくさんのありがとうを!

突然ですが、今月で日本へお引越しすることになりました! パリを去るにあたって7年間のパリ生活総まとめを書きたかったのですが、この街で過ごした日々を一言にまとめてしまうのはどうにも難しそうです。でも帰国したらまた、バタバタと忙しい中でいまの気持ちはどこかへ忘れてしまうことでしょう。その前に何か残しておきたいので、とにかく書き出してみます。 小さなアパートの床を埋め尽くすように全ての持ち物をひっくり返し、必要なもの、誰かにあげるもの、処分するものと選別していく。本を一冊、服を

ブルターニュの島で、時間は静かに流れる

義両親とパートナーと4人でブルターニュ地方のとある島へバカンスに来ています。 この辺りは天気が変わりやすいことで有名なよう。朝は曇り、昼に小雨、午後に晴天、夕方に雷、夜の間にまた小雨と1日の間にコロコロと空の様子が変わります。 とは言っても太陽がカンカン照りになることは珍しく、曇り空と霧雨が交互にやって来ます。 8月だけど気温は20度前後。パリよりも涼しく、ビーチで泳いで日光浴というよりは、のんびりしたりお散歩するのによい避暑地という趣きです。 レストランはどこもバカン

パートナー、日本語講座始める

隣りでカリカリカリとノートに書き綴っているパートナーが「こんなもん覚えられるかー!」と声を上げノートを投げ出す。 「どうして3種類もアルファベットがあるの?」 「なんでひらがなだけで46文字もあるの?」 「どうして”こんにちわ”って発音するのに”こんにちは”って書いてあるの?」 前々から日本語を習ってほしいと思っていたけれど、語学にしろなににしろ押し付けられて学ぶ気になるでものでもなし。何事も本人の自主的なやる気がなければ身につくものではないよなと半ば諦めかけていただけに

ある冬の朝、パリを想うこと

自転車に乗って十一区のアパートを出る。 冷たい風で耳が痛い。キャスケットじゃなくニット帽を被ってくればよかった。まだ夏時間だけど、朝はすっかり冬だった。夏と冬の個性に押し潰され秋はどこへ行ってしまったのだろう。秋を感じるのは近所の八百屋で南京と葡萄を見かける時くらいだろうか。 自転車を漕ぎ、パルマンチエ通りを北上し、ヴォルテール通りへと抜ける。夏時間が冬時間に変わる前の朝は特に暗い。見上げると灰色の分厚い空が建物に切り取られている。 六時一五分。 七時前に郊外の撮影ス

俳優とばったり遭遇する街、パリ

マレ地区を散歩していた時のこと。ギャラリーの入り口に貼られたポスターを見ていると、中から出てきたムッシューが「ここ、よかったよ」とニコッと教えてくれた。 後からパートナーに「さっきのムッシュー誰だかわかった?」と聞かれ、驚きました。なんと俳優のダニエル・オートゥイユだったと言うのです!全然分かりませんでした! ダニエル・オートゥイユといえば、『メルシィ!人生』。 コンドーム会社に勤める主人公が突然解雇を言い渡され、思い詰まってベランダから飛び降りようとするところを隣人に

山でダラダラするか、街でダラダラするか

久しぶりにパートナーの母とその旦那さんのお家に遊びに行って来た。 義母たちはパリから電車を乗り継ぎ5時間、さらに最寄りの駅から車で30分ほどの山の上に住んでいる。人口6人の小さな村だ。 猫4匹と暮らす大きな家にはお庭とテラス、それに屋根裏部屋と地下室があって、遊びに行くといつも屋根裏部屋に泊まっている。 一度、ノミが大量発生して全身を噛まれてからしばらく訪ねていなかったのだけど、今年はノミ対策をしっかりされたようで、去年のように足が水玉模様になることはなかった。 家の前に

ひととひとがつなぐ幸福な食卓

ある晩、友人Fが豚の脂身のスモークとパリンカというお酒を持って遊びに来てくれた。 Fはとあるファッションブランドで働いていて、ロシアのウクライナ侵攻が始まったとき、ブランドのオーナーと一緒に社用のトラックに服や支援物資を詰め込んで、ルーマニア人の同僚とともにウクライナとルーマニアの国境から5kmの街までトラックで向かった。その街にはウクライナから多くの人が逃れて来ているという。 すぐに自社のトラックで支援に赴けるというのは金銭面でも物資の面でも一個人がすぐにできるスケール

パリで滞在許可証の身分を学生から配偶者に変更する方法

この度ようやく滞在許可証の更新及び身分変更に成功いたしました。 学生から配偶者への身分変更についてあんまり情報がなかったので、ここにまとめておこうと思います。 ※滞在許可証の更新に必要な書類や条件、手続き方法は常に変わる可能性があります。また対応する窓口の人によって求めてくる書類が変わるので、あくまで参考程度にご笑覧くださいませ。 1 とにかくまずはRDVを取る しまった!滞在許可証の期限が切れる!と気づいたのが期限切れの一ヶ月前。多分三ヶ月前もしくは二ヶ月前からRDV

”日本好き”フランス人に困惑する

パリには日本好きなフランス人がたくさんいます。 どこの出身かと聞かれ「日本」と答えると、日本大好き!、日本に行くのが夢なの!、バカンスで日本に行って最高だった!こんな素晴らしい国はないよね!、日本食大好き!毎日食べれる!などなど概ねポジティブな反応をいただけます。 フランスに憧れる日本人がたくさんいるように、日本に憧れるフランス人も思った以上にいて、今のところ日本人ということで特別に嫌な思いをしたことはないし、会話のきっかけにもなる。自分の国に興味を持ってくれている人がい

髪の色いろいろ

先週、健康診断に行って来ました。 採血の順番待ちをしていると、採血ブースからマダムが顔を出し、次の患者さんを呼びます。採血担当マダムの髪の色がパッと目を引く青色です。心の中で、おぉ、と思いました。そして、おぉ、と思っている自分に気がつきました。 街中ではいろんな色に髪を染めている人を見かけます。ピンク、青、緑色。 撮影の仕事では虹色に髪を染めているモデルもいます。 そんな時にはいちいち、おぉ、と思わないのに、病院で青い髪の人を見ると、おぉ、と思ってしまったのは、どうしてか

ふつうの人生

パートナーの友人カップルで、私も仲良くさせてもらっているVとSに会ってきた。Vはフランス人、Sはオーストリア人。つい1ヶ月半前にVが男の子を生んだばかりだ。まだ人間というよりは虫のような小さな生命がぽこんと現れて、ふたりの腕の間を行き来しているのを見ると不思議な気持ちになる。 4人で話していたのが、いつの間にかVとうちのパートナー、Sと私、と会話がふたつに分かれた。最近はどうしているのか、仕事はどうかとSに尋ねる。 Sはオーストリアの地方の小さな町に大きな家を持っていて、

仕事の話 : 外国人として働く価値とは

昨日、撮影の仕事のあと先輩アシスタントMからお褒めの言葉を頂戴しました。よく頑張ってくれてるってわかってるよ、と。 昨日の撮影はかなり大きなお仕事でした。某有名ブランドのキャンペーン広告と動画の撮影です。午後の初めまではなかなか順調に進んでいたのですが、最後のショットを撮っている最中にライティングが変更になりました。その時私はスタジオの外で余っていた機材を片付け中。他の2人の先輩アシスタントがフォトグラファーについていました。 早く上がれるように、使わないであろう機材を先に

家庭の異文化比較:オノマトペが通じない

以下、会話はフランス語 パートナー「どうそのセーター?」 私「悪くない、けどちょっとチクチクするわ」 パートナー「え?CHIKU CHIKUってなに?」 私「あ〜!オノマトペだよ。肌に刺す感じの生地とか、かきむしりたくなる生地って、"チクチク"って感じしない?」 パートナー「いや、全然!」 そうなのです、フランス人のパートナーとはオノマトペが通じないのです。 一方、日本人の中でも特にオノマトペを多用すると言われている関西人の私。オノマトペが使えないのは不便なもの。

パリのファッション写真業界に潜り込む方法/フォトアシスタントの仕事とは

フランスに引っ越す前に日本でよく聞かれたことが、「なんでフランス?」「何するの?」「そんなに貯金あるの?」などなど。答えは「フランスに住んでみたいから」「まずは語学学校に行って大学に行こうかな。何か書いたり写真撮ったりするような仕事もしてみたいな」「ビザ取得に要求される金額は貯めたよ」。特に明確な目標を掲げて渡仏した訳ではなかったので、心配されたり呆れられたりすることも多々ありました。 それでもやってみると案外何とかなるもので、パリ生活も7年目に入りました。自分の長所は運が良