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髪の色いろいろ

先週、健康診断に行って来ました。

採血の順番待ちをしていると、採血ブースからマダムが顔を出し、次の患者さんを呼びます。採血担当マダムの髪の色がパッと目を引く青色です。心の中で、おぉ、と思いました。そして、おぉ、と思っている自分に気がつきました。


街中ではいろんな色に髪を染めている人を見かけます。ピンク、青、緑色。
撮影の仕事では虹色に髪を染めているモデルもいます。
そんな時にはいちいち、おぉ、と思わないのに、病院で青い髪の人を見ると、おぉ、と思ってしまったのは、どうしてか?

それは自分の中に、病院で働く人は"落ち着いた髪の色"をしているものだというステレオタイプがあったからです。

そもそも地毛が金髪の人も赤髪の人も茶髪の人もいる訳で、"落ち着いた髪の色"という表現も危ういものです。

病院で働くには髪を染めてはいけないのか?いえ、何色に染めていたっていいでしょう。だって採血の技術に髪の色は関係ないのですから。


パリに暮らし始めてすぐの頃、郵便局に行ったら担当してくれるお兄さんがドレッドヘアーで両腕が立派なタトゥーで覆われていて、しげしげと眺めてしまいました。その時も、おぉ、とひとりごちると同時に、好きな髪型や格好ができることを羨ましく思いました。

日本の郵便局ではタトゥーが見える人も、ドレッドヘアーも、モヒカンも、金髪も見かけたことがありません。でも誰も印象に残っていないことの方が特殊なことだったのかもしれません。


パリにいて住みやすく感じる理由のひとつは、外見に対して寛容なところです。
職種によっては規則もあるのでしょうが私の生活半径内を見る限り、病院で働くには髪を染めたらダメとか、郵便局員はタトゥー禁止とか、そういう決まりは少ないように感じます。

リクルートカットでも雑な仕事をする人はいます。自由な格好をしていても仕事のできる人はいます。

一様にスタンダードな外見であることを押し付け過ぎると、外見のコードに適しているかどうかという枝葉末節の基準にだけ注視してしまい、見かけの奥にあるその人の能力の部分を正確に評価することを妨げてしまう危険を感じます。


社会の決まりやコードには便利な部分もありますし、礼節を守った装いはとても大切です。

外見に対するステレオタイプで人を見てしまうことは誰にでもあることで、とっさに判断するためには有効でもあります。


でも、果たしてそのステレオタイプは正しいのか?
その決まりは本当に有効なものなのか?
常識が良識とは限りません。

無意識のうちに”こうであらねばならない”と思い込んでいる固定観念は、頭の中の深いところに根ざしているので、影響を受けていることにすら気づきにくいものです。

だから何気ない瞬間に何か、おぉ、と心に思うことがあるときは、一度立ち止まってどうしてなのか振り返りたい。そうすることが自分の中の固定観念に気づくきっかけになり、それが本当に必要なものなのか見直し、必要とあればアップデートする機会になるのではと思います。


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