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連載小説「オボステルラ」 【第三章】16話「彼方に誓う」(4)


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第三章の登場人物



16話 「彼方に誓う」(4)


 大団円のような雰囲気が部屋を包んだが、ここでナイフが話を変える。

「……ねえ、落ち着いたところで申し訳ないんだけど。みんな集まっているからあえて聞くけど、そもそも、この旅、続ける気? リカルド」

「……」

「え? どういうこと?」

ミリアがナイフに尋ね、リカルドは目線を下げる。ナイフは腕を組んでまたふう、と息を吐いた。

「…ミリア達が攫われた日。私達ね、あの卵男に遭遇したときに吹き矢で狙われていたのよ。しかも強い毒付き。どうやら、卵を探している者を卵男が釣って、仲間が吹き矢で仕留めているみたいね」

「……!」

「帝国人たちも、卵を手に入れるためには異国での人殺しなんて気にも掛けない姿勢だし、ルチカも同じようなことを言っていたし、ちょっと危ないことが多いのよ」

「…そうだね…。つい、先日までは、ウソか誠か分からないような伝承を追うだけだったのに、なんだか急に、いろんなことが動き始めている…。よくは、分からないんだけど…」

リカルドは目を伏せたまま付け加える。ナイフは厳しい口調で続けた。

「…あなたが一人で危ない目に遭うのはどうでもいいんだけど、ミリアもゴナンもいるのよ」

「…、お、俺は大丈夫だよ!」

ゴナンが叫ぶようにナイフの言葉を遮る。ナイフは少し驚いて、ゴナンに優しい目線を向けた。

「そうね。ゴナンはこれからもっともっと強くなるから大丈夫ね。……でも、今回だって危うく、将来の女王様がそうと知られないまま隣国の軍人に殺害されるっていう、わりと史上最悪な状況も起こりえたのよ」

「……わたくしは女王にはならないわ! そのために今、ここにいるのだから……!」

今度はミリアがナイフの言葉を遮った。ナイフは困ったようにふう、と苦笑いする。



「…その件はまあ、ひとまず置いておいて。ともかく、いくら騎士様が入ってくれるからと言って、護衛に完璧なんてあり得ないのよ。リカルド」

「うん……」

リカルドはじっとうつむくも、その瞳は鈍い光を宿している。エレーネはその面差しを見て、肩をすくめた。

「……何が何でもやめたくない、って顔、してるわよ。ナイフ」

「リカルド…」

「だってね、ナイフちゃん。そこまで『本気』の奴等が出張でばってくるってことは、ますます信憑性が出てきたように思うんだよ、巨大鳥と卵のこと。巨大鳥を見たミリアには、攫われるっていう不幸が起こってしまったし」

「……あの、私も巨大鳥見たんだけど、私は特に何も」

エレーネが口を挟むが、リカルドはスルーする。

「…見つけたい気持ちは、ますます高まっているよ、僕は…」

ナイフはじっと、うつむいたまま話すリカルドを見てため息をつく。

「……でも、ナイフちゃんの言うとおり、僕一人が危ない目に遭うのは構わないけど…、確かに他の皆は……」

「俺は大丈夫だってば!」

「わたくしは絶対に卵を見つけるわ!」

また、ゴナンとミリアが叫ぶように口を挟んできた。呆気にとられたように二人を見るリカルド。そして、くすっと笑う…。

「……こういう感じで、満身創痍でボロボロのゴナンも、王女様の影武者殿も、やる気でみなぎってるようだし、ディル。君を少し頼ってもいいかな?」

「あ、ああ。それは問題ない」

ディルムッドも微笑みながら答える。実は彼は、巨大鳥や卵のことが何なのか、というよりもミリアやこの一行の旅の目的がまだ全く分かっていないのだが、そんな事情は関わりないようだ。

ナイフははあ、と肩をすくめた。

「……分かったわ。お願いね、ディル」

「ああ。任せろ」



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