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連載小説「オボステルラ」 【第三章】15話「強い男」(2)
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15話 「強い男」(2)
そのまま1時間くらいが経っただろうか。
玄関ドアをノックする音が鳴り響き、ミリアははっと目を覚ました。
「…あ…!」
ノックに応えて出るために立ち上がろうとして、とどまるミリア。ゴナンも目を覚まし、そんなミリアの様子を不思議に感じて尋ねた。
「……ゴホッ……、出ないでいいの?」
「ええ。リカルドが、誰かが訪ねてきても『居留守』をしてていいからって」
「そう…。じゃあ、静かにしなきゃな…」
ゴナンはまた、目を閉じる。
が、まだ、ドアの外で人の話し声がする。男性が何人かいるようだ。
(……?)
ゴナンは耳がいい。耳をそばだててみる。
「……いないのか?」
「いや、朝からこの小屋に入るのは見た。他の2人と家主の3人が出ていったから、今は1人でここに残っているはずだ」
「何か感づかれたか…? 押し入るか」
(……!)
ゴナンはハッと目を開ける。そしてミリアに小声で声をかける。
「……ミリア。外の人たち、ミリアを探してるっぽい。俺が中にいるのは、気付いてないみたい」
「…え…?」
ゴナンは起き上がって掛け布団のシーツを剥ぎ取り、そして念のため、棚に置いている剣とナイフを手に取った。そして、ミリアと共に長椅子の陰に隠れ、ミリアにナイフを持たせて、上からシーツを被る。
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「…ゴナン?」
「…なんか、ちょっと、いやな感じがする…。念のため隠れよう。ミリア、内鍵はかけた?」
「…あっ」
ミリアが鍵をかけていないことに気付いた瞬間、玄関がガチャリと開けられる音がした。そして複数人の荒々しい足音が中に入ってくる。そのまま無言で家の中を歩き回る音。やはり、ただミリアを訪問してきた人間の動きではない。
「…うわ!なんだ、この部屋。ガラクタばかりじゃねえか。ゴミ部屋か」
脇の部屋の扉を先に開けたようだ。2人はじっと息を潜める。すぐに寝室のドアが開けられた。
「…いないか…?」
しかし、男の一人がベッドに手を当てる。
「…いや、ベッドが温かい。誰かが寝ていた形跡がある」
(…!)
2人はさらに息を潜める。ゴナンは、ミリアの肩を抱いて自分の方に引き寄せながら、咳が出そうになるのを必死に抑えた。が…。
「…おい、その布が、動いた」
咳を抑える挙動が、感づかれてしまった。すぐに人が近づいてくる気配がする。男の一人がシーツを剥ぎ取る、その瞬間にゴナンは剣を抜いて、相手に向けた。
「…触るな!…ゴホッ、ゴホッ…」
「なんだあ、もう1人いたのか」
男が近づいてこようとするが、長椅子が邪魔して近づけない。
「くそ、妙にデカい椅子だな…。おい、その女を渡せ…!」
「なんなんだ、お前達は…! ゴホッ…」
ミリアを背後に守り剣を向けながら、そう尋ねるゴナン。しかし、剣が重い。高熱のせいもあるが、元々、今は重くて振れないのを承知で買ったこの剣。十分な力が、まだゴナンにはついていないのだ。
ゴナンの剣先が震えているのを見て、男も剣を抜く。
「おいおい、パパの剣でも使ってるのか? 全然、扱えてないじゃないか」
「…」
ゴナンはその男を見るのは初めてだったが、雰囲気に覚えがあった。ストネの街で卵を奪いに来た帝国の軍人達と、身のこなしや佇まいが似ている。
(…でも、卵じゃなくて、ミリアを探していた…?)
と、男が剣を振りかぶり、ゴナンの剣をたたき落とした。ゴナンはすぐに脇の枕を取り振り回すが、剣で裂かれ羽毛が飛び散る。男はベッドの上に飛び乗り、ゴナンの顔を殴った。勢いで倒されるゴナン。
「ゴナン!」
「来い!」
男はミリアを部屋の隅から引きずり出し、寝室の外へと抱えて出した。
「…う…、ミリア…!」
ゴナンはすぐに剣を拾い、追いかける。そこでミリアを抱えた男が「いてっ!」と叫んで、ミリアを床に落とした。ゴナンから預かっていたナイフを抜いて男の腕に切りつけたのだ。ゴナンはすぐにミリアの元に駆けつけ、背後に守って剣を構える。リビングには、他に2人の男がいた。
全員、顔は知らないが、武装の雰囲気にはやはり、見覚えがある。
「…おいおい、ご立派な騎士様だな」
男の一人がニヤリと笑ってゴナンに斬りかかってくる。ゴナンは剣で受けるが、手の添え方が悪く、左手が刃に触れて血が出てくる。それでも剣から手を離さない。ミリアはゴナンの背中にすがっている。
男がもう一度、力いっぱいゴナンに剣を叩きつけた。まだ耐える。しかし3撃目で剣が弾かれてしまった。そのまま男はゴナンを蹴り倒す。リビングの椅子とテーブルをなぎ倒しながら、ゴナンは飛ばされ本棚に体を打ち付けられた。
「…う…」
「ゴナン!」
「…お嬢さんはこっちだ、危ないものは離しな」
そう言って、ミリアが手にしていたゴナンのナイフを奪い捨てた。すぐにミリアに猿ぐつわをはめ、手足を縄で拘束する。
「…ミリア…! やめろ!」
ゴナンはまた起き上がり、ミリアを抱えた男に飛びついた。
「くそ、鬱陶しい!」
男は再度、ゴナンを蹴り飛ばした。椅子の1つの上に飛ばされ、椅子が壊れる。その衝撃に、ゴナンは動けない。
と、リビングにいた男の一人が、最初の男に提案した。
「…おい、そいつも連れて行くぞ。多分、役に立つ」
「…わかった」
そうして、熱と格闘のダメージでぐったりしているゴナンも縛り、ミリアと共に玄関から運び出す。小屋の入口を覆い隠すように止められた荷馬車に乗り、そして拠点を後に立ち去った…。
↓次の話↓
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