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連載小説「オボステルラ」 【第三章】15話「強い男」(3)
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15話 「強い男」(3)
そして、現在。
拠点で室内の惨状に呆然とするリカルドとナイフ、エレーネ。
「…どうしたんだ…、2人は無事なのか…。何が…」
「まさか、鉱山の連中がゴナンを取り返しにきたとか?」
ナイフがリカルドにそう尋ねるが、リカルドはそれを否定する。
「…いや、話を聞いた限りだと、わざわざ取り戻しに来るほどゴナンに価値を見ていたようには思えない…。しかも、ミリアもいなくなっている…。まさか、ルチカがミリアを攫いに?」
「…でも、それで彼がここまでのことをやるかしら……? 何にしても、これはただ事ではないわ…。一体どこに…」
3人が拠点から外に出たときである。
「…! どうした、貴殿等、そんなに慌てて」
そう声をかけて来た人物がいた。茶髪の大きな体、ディルムッドだ。
「ゴナンの見舞いに来たのだが、何かあったのか?」
「…ディル! 大変! ミリアとゴナンがいなくて、室内が荒れてて…!」
ナイフが叫ぶように伝えた。ディルムッドはハッとして、拠点の中へと入る。
「…これは…。どういう状況だ…」
「…ミリアとゴナンがこの小屋で留守番していたんだけど、僕らが戻ったらこの有様で、二人の姿はなかった…」
リカルドの報告を受け、ディルムッドは床に這いつくばる。
「ディル?」
「…足跡が…。貴殿等の靴ではない跡が残っている…。これは…、帝国軍が戦地でよく履く靴の跡に似ているな…。室内を歩き回っている。複数だ」
「帝国……?」
ディルムッドのその言葉に、リカルドはストネの街で『フローラ』を襲った面々を思い出した。
「…まさか、あいつらが…? いや、でも彼らが探していたのは卵だ。このように押し入って2人を攫う意味がわからない…。何かの意趣返しか…?」
「帝国軍と何かあったのか? ア王国内で?」
ディルムッドがリカルドに確認する。
「あ…、ああ。前にいた街でちょっとね。一般の旅人を装っていたけど、軍人だった。ただ、彼らの狙いは僕らじゃ無くて巻き込まれただけだったし、ミリアの素性はバレていないと思うから、同じ輩かどうかは…」
「……」
ディルムッドはぐっと目を閉じ、何かを考える仕草をした。しかしすぐに外に出て、また地面に這いつくばり道を見る。
「……真新しい馬車の跡が見える。この通りはあまり馬車は通らないように思うが…」
「そうね、道が余り広くないから、ここまでは入ってこないわね」
ナイフはそのディルムッドの言に気付くと、すぐに周辺の店へと話を聞きに回る。
「…ディル! 30分程前に、ここに馬車が止まっていたらしいわ。男が何人か乗り降りしていた様子だったって」
「……!」
ディルムッドはその報告を受け、馬車の轍をじっと見た。そして駆け出す。
「……追うぞ…。何者かはわからないが、その馬車で攫われていると考えるのが妥当だ」
「ええ!」
ナイフもすぐに続く。エレーネも駆け出そうとしたが、横で足を止めたままのリカルドに気がついた。
「……リカルド? 行かないの?」
「……」
リカルドの顔色が真っ青になっている。体も震えているようだ。
「……リカルド?」
「…ご、ごめん…。もし、ゴナンに何かあったらと考えたら、足が震えて……」
「……」
うつむき、動けないリカルド。エレーネは一瞬、考えた後に、リカルドの背後に動いた。
そして…、リカルドの尻に回し蹴りをガッと食らわせる。
「…いたっ。……えっ?」
予想外の衝撃に、思わず前のめりに地面に倒れるリカルド。
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「…エ、エレーネ……?」
「震えは止まった? さあ、行くわよ」
そう冷たい目線でリカルドに告げて、エレーネも駆け出す。慌てて立ち上がり、後を追うリカルド。
「…君がこんな手段に出るなんて……」
エレーネに追いつき、感心するようにそう呟くリカルド。エレーネは少し笑った。
「ナイフのやりように倣ってみたのだけど。あなたには実力行使が一番のようだから。効果的だったみたいね」
「……」
リカルドは苦笑いして、自身の頬を叩き、走るペースを上げた。
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