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世界放埓日記

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世界の堰堤(改)

 泣きながらするセックスは随分と気持ちのいいものだったなあと、後になって思い返した。大晦日のことだった。
 私の肉体は、冷えきった巨大な肉塊に組み敷かれ、きしんだ音を立てた。 男は、機械の状態を確かめるように私の体のあちこちをためすつがめつした後にゆっくりと体の中へ侵入してきた。

相手の顔も思い出せないのに、その性器とセックスの感触だけは思い起こされる。
 二次元的な運動が繰り返される中で少しず

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母の名は

お母さん、ママ、おふくろ。

世の中に、親の呼称は数あれど、私はその中のどの言葉も用いない。

私と親の関係をいぶかる人は絶えない。

私の高校の担任は、私と母親のやりとりを見て「変な親子」と愉快そうに笑った。

私の高校のPTA役員だった母親は、その際立った容姿と仕事の速さで一躍有名人だった。

同級生も先輩も、そして先生までもが私に倣い、私の母のことを「七瀬ちゃんのお母さん」ではなく、母の名前

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