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「小さい頃なんでこのお菓子あんなに好きだったんだっけ?って」

◇登場人物
主人公=高松早苗(27)
早苗の母=高松京子(58)

◇あらすじ
ダメな人を好きになった。
恋人でも友人とも違う、
私は彼の何でもないまま。
彼がある日事故に遭った。
避けそうとしたトラックの運転手が転倒して
亡くなってしまった。
彼が心配で葬儀の様子を入口まで見に行くが、
支える恋人を目にし帰ってきてしまう。
悩む私に母が言った言葉。
私は時が経ち、
『報われない方が良かった片想い』
もある事を知った。

〇高松家・リビング

   高松早苗(28)は喪服姿で荷物を置く。

   高松京子(58)がソファに座り、お茶を       飲んでいる。

京子「おかえり」

早苗は無言で京子の隣にドサッと座る。

京子はお菓子を手に取り、テレビを見続ける。

早苗「ねえお母さん」

京子「ん〜?」

早苗「死にたいと思ったことある?」

   びっくりして、口にはさんだせんべいを   バキッと折る京子。

京子「いじめ?お母さんは会社変えてもいい

 と思うよ……」

早苗「(苦笑いで)あたしじゃないよ」

京子「いや、そんな喪服で言うから影響されてきたかと思ったわ」

早苗「いつ死んでもいいって言う人がいてさ」

京子「うん」

早苗「事故にあって、自分だけ生き残っちゃって」

京子「うん」

早苗「自分が死ねば良かったって」

京子「うん」

早苗「でもその人さ、台風に備えて食料買い込んでたのよ。見たくなかったな」

京子「なんで?どう思った?」

   早苗も目の前のせんべいをとり食べる。

早苗「あの人がそのまま生きたいって言えるようには、どうしたらなるかなと思った」

京子「生きたいに聞こえたんだ」

早苗「うん、でもその役目は私じゃないのに」

   せんべいをこぼしながら食べる早苗。

早苗「傍に居たくて空しくなっての繰り返し」

京子「面倒な人と一緒にいるのは大変だよ」

早苗「だよね」

京子「時間がたったら、そいつの事を昔このお菓子好きだったな。懐かしいな。くらいの感覚で思えるようになるよ」

早苗「お菓子?」

   お菓子の中の麩菓子を手に取る京子。

京子「(笑いながら)小さい頃なんでこのお菓子あんなに好きだったんだっけ?って」

   早苗はつられて笑い、お茶を一気飲みする。

(終わり)
※改行が変なところがあります。

見てくれて有難うございました。


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