2023年7月の記事一覧
1場面物語 つくづく、縁がない
縁側で足をプラプラやっていると、彼はにこやかな顔で隣に座った。
「西瓜でも」
などと言って、丸々とした西瓜を出してくる。
「おう。もらおうか」
私はそう言って野菜包丁で西瓜を切る。
風鈴が機嫌良くチリチリと鳴る。夏空の青が透けて、絵柄の金魚も良く泳ぐ。
「川で泳ぎたい」
彼は金魚を目を細め見る。
私は西瓜をサクサクと切りながら
「そいつはそこに捕らえたんだから駄目だよ」
と答えた。
一場面物語〜聖剣物語〜
朽ち果てた建物に光が差す。
その光は隙間を縫うように建物内部を照らした。
美しいなぁと私はその光に、溜息をもらす。
崩れ落ちたドームが長い戦いの記憶を呼び覚ます。
周りの苔むした感じから、この場所が長い間放置されたことを知る。
火薬と怒号と血のニオイ。
混沌に堕ちていく世界がそこにはあったのだ。
その中で彼と私は出逢った。
そして、力強く握りあった。
まるで、運命に導かれるように。
強かった。