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子供達に贈る『私の仕事』

世の中にはたくさんのお仕事があります。
綺麗なお仕事も、汗まみれのお仕事も、スポットライトが照らされるお仕事も、真っ暗闇のお仕事も。
たくさんたくさんある中で、私のお仕事は
目の前にあるのに目に見えにくいお仕事です。
ボーナスはちょくちょく出ます。
でもボーナスでお洋服や宝石は買えません。
残業も時間規定もないのです。でも有給休暇もありません。
休み時間はとりたいときに取れちゃいます。でも、とりたい時というよりも
取れる時といったほうがピタリと当てはまる様な気がします。
昼寝だってできちゃいます。おやつ時間もとれちゃいます。
でも、その分夜寝る時間をけずったり
おやつもなくなっている事があったりします。

今日はそんな私のお仕事についてお話します。


●お仕事内容その1

「見本品」

そう…私はレストランの前のガラス棚に飾ってあるメニュー見本品や、
モールで洋服をきたマネキンのようなお仕事をしています。

ずっと座っていたり、ポーズを取っているわけではありません。
でも、君たちは見本品を見て、食べたいなと思ったり まずそうだと思ったりするでしょう?
マネキンを見て、これ着たいなとか 苦笑いとかするでしょう?

私は自分をまるまるそっくり君たちに見せる事で、
君たちの感性の基準になるのがお仕事なんです。
この見本のこれはいいなとか、ここは嫌だなとか
いい所は全部持って行って、悪い所はそうならない様に
自分を作る為に必要な判断をきずく要素「見本品」となるんです。

「例え」としての見本にもなります。
宿題で必ず「例:」ってあるでしょう?あれです。
どうやって問題を解くのか、何となく導いたりする例文や例えが
私の見本品としてのお仕事にもなります。
こんなのなくても分かるよ!って言われて無視されることもありますが、
でも、困った時にはヒントになるので
まぁそこにある事が大切なのだと毎日お仕事しています。
よい例えにも わるい例えにも どっちにもなることがあるので
たまにへこみます。



●お仕事内容その2

「マジック」


たまに紙芝居のおじさんになったり、ピカソになったり、
坂道で転がる子犬に変身します。
キッチン用具を楽器にかえてミュージシャンにもなります。
たまに泥んこになったり、びしょびしょになることもありますが
「楽しい」事を作り出すのがお仕事です。
私のお仕事はテレビに出てくるマジシャンよりもすごいです。
にんじんをお花にかえたり、
穴の開いたズボンだって穴なしにできちゃいます。
お庭にできたお野菜があっという間に美味しい料理に早変わり。
どろんこのお洋服を新品みたいにしちゃいます。
うとうとする君たちを瞬間移動させるのも私のお仕事。

私はたまにバンドエードに変身します
といっても、薬局のバンドエードよりも何十倍もすぐれています。
お風呂に入ってもはがれないし、
普通のバンドエードが貼れないところにもぺたっと貼れる。
どんな大きさの傷もカバーできるくらいのストレッチ素材で
自由自在に形を変えられます。
頭痛にも心の傷にもぺたっと貼れる万能バンドエードです。


●お仕事内容その3

「水やり に くみとり」


私は色々なものに水やりをするのがお仕事です。
生きているものにお水をやるのはとても重要なお仕事です。
枯れない様に、元気にお日様を浴びれるように。
君たちだってお水は必要でしょう?
生きるものは種を植えてもお水をあげないと芽が出ません。
だから土が乾かない様に一生懸命水やりします。
でも お日様も必要です。
なので、言葉を話さないものの気持ちを汲み取って
お外に出したりします。
外にばかりいると暑すぎてばててしまうこともあるので
ここでも気持ちを汲み取って、部屋の中に入れたりもします。
君たちの葉っぱの色とか、つやとかを読み取って
嬉しいのかな?悲しいのかな?お腹すいたかな?ねむいかな?
色々なサインを読み取ります
いつも読み取りが上手くいくわけではありません。
でもサインを見逃さない様にいつもめくばりをして
沢山沢山自分なりに考えて読み取りをしながら
一番いいと思う事を力いっぱいしてあげます。


●お仕事内容その4

「交通整理」


たまに信号機が故障してしまう事がありますよね?
そんな時に道の真ん中に首からフエをぶら下げて、
旗をあげ下げしているあのお仕事。
いつ道を渡ってよいのか分からなかったら、車にひかれてしまうかもしれません。
いつまでも止まっていたら渋滞もできちゃいます。
どんな車も歩行者も、
動物だってなんだって…
皆が目的地にスムースに そして安全に行きつけるように
私は旗を上げ下げしながら笛をぴっぴと吹いています
君たちが赤信号を渡ろうとしていたら、ピッと笛を吹いて眉をひそめます。
誰かが君たちの前をびゅーんとスピード上げて走って行ったら
追いかけて注意します。
車のライトが壊れていたら、こわれているよと教えてあげます。
たまにパンクも直してあげます。

時間がかかってしまっても、事故なく前に進めるように
毎日毎日 旗をふりふり 笛をぴっぴとならしています。


●お仕事内容その5

「待つ」


待っているのがお仕事の一つです。
待っているだけなんて楽なおしごとと思うかもしれません。
でもこれは一番たいへんで、でも一番大事なお仕事なんです

君たちは誰かを何かを待っていたことがありますか?
誕生日、クリスマス、お友達、お手紙。

いつくるかな?
まだかな?
ちゃんと来るかな?
迷子になっていないかな?
いつできるかな?

待つ事にはソワソワがつきものなんです。もちろんワクワクも楽しみも
たっくさんあります。
でも、待つ事には辛抱とか忍耐とか…じっと見守るどっしり感が大切で
これはとってもムズムズする気持ちです。

でも、このお仕事が一番大切なのは
「とどく場所」「かえる場所」になるという事だからです。
それは
「届けたい場所になること」でも、「帰ってこれる場所になる事」でもあります。

何があっても、どんな時でも
『ここにいるからね』と私はいつも笑って待っています。





こんなお仕事内容を
鼻歌を歌いながら毎日毎日こなしている私のお仕事は
たまに涙したり、悲しんだりするけれど
世界で一番楽しくて、嬉しくて、やりがいのあるお仕事です。
お金が出る代わりに君たちの笑顔がサラリーです。
ボーナスは君たちが思い切り喜んでくれた時。
有給休暇はないけれど、
君たちとソファーでごろっとしている時や、
お菓子を一緒に食べたり、
たまに私のベッドにもぐりこんでくる夜なんか
何週間分のお休みよりもホッとできる時間です。


そんな私のお仕事…

その名は


『お母さん』。



子供達へ…もっとボーナスまってます。




私の母から受け継いだ、大切なお仕事をする
七田 苗子ママ


メディアパルさんのこちらの企画に参加させて頂きました:)。皆様も是非「子供に伝えたい私のしごと」夏の作文を書いてみませんか?



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