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本の装丁を考えるー随筆編2ー


こんばんは、七緒らいせです。
前回に引き続き、【文学フリマ東京36】で頒布する随筆集の装丁について書いていきます。

1.前提条件をリストアップする(前回)

前回は、文学フリマでものを売る際に考えていることをまとめました。
以下からぜひお読みください!
https://note.com/nana_0rion/n/n423aa362f5d5

2.中身の特徴を抽出する

前項で、前提条件から「ユニークな本を作る」と「発行部数を減らす」という軸を定め、「面白い形の手製本を作ろう!」という方針を決めました。

次に、本の中身から装丁を考えていきます。

私の場合、本を作るために中身を書いているようなところがあるので、本の形が先に決まっていることが多くあります。

しかし今回は、中身が決まってから装丁を決めるように気を付けました。

最近、ある出版社の編集者の方とお話した際、

「本の中身が先にあって、それに服を着せてあげるように装丁を考えています」

とおっしゃっていました。

それに感銘を受けて、今回はできる限り本の中身に寄り添って本の形を決めていくことにしました。


さて、今回の随筆集の特徴について簡単にまとめていきます。

まず一番大きな点は「友人との連作」である点です。
演劇をやっていた時代からの友達で、今は大学院で民俗学を研究している友人です。普段、俳句や短歌を中心に書いています。
対して私は、大学院で哲学を研究するかたわら、詩を書いています。

重なるようで重なりきらないフィールドで活動している二人が、毎週書いた原稿を交換しながら、影響を受けたり受けなかったりしながら、書き繋いでいく、そんな本です。

そして、二人でテーマを話し合った結果、「身体」がテーマになりました。
これ以上具体的なことは決めずに、お互い身体にまつわるいろいろな話を書いていきました。


他にもいろいろ考えていた気もしますが、一旦このふたつの特徴を中心にして、本の形を決めていきたいと思います。

3.製本の方法を考える

さて、次は手製本製作のなかで一番楽しい部分です!

具体的に本の作りを考えていきます。

今回は、「2人の連作」という点を最大限活かすために、「2束の本」ということをぼんやりイメージしていました。

連作という形で書いているので、影響を与え合った2つの作品を対照しながら読めるといいなーと考えていました。

これを具体化していくために、Pinterestでイメージに近い本を探していきたいと思います!

Pinterestは、日本語で検索するより英語で検索した方が様々な国のアイデアがヒットします。

なので、今回は「book design」「unique book」「art book」「book binding」などと検索してみます。

その中で「2束がひとつの本になっている」ものが何種類かありました。


これらを眺めながら、イメージを固めていきます。

同時に見比べるなら、一度に開ける形がいいな、とか、
一般的な本の縦長サイズに収まる方がいいな、とか、
作るのが簡単な方がいいな、とか。

そういうことを考えた結果、一番下の形を目指していくことに決めました。

https://pin.it/65tmGcP

一番のポイントは作るのが簡単な点です。

一般的な本の本文を半分に割ったような形なので、作り方が想像しやすいし、難しくなさそう!と思いました。


次に、背の作り方を考えていきます。

写真を見る限り、Pinterestに上がっているものは普通の上製本(表紙も背も厚紙が入っているやつ)のようです。

上製本として作るとなると、厚表紙を作らなければいけません。
また、本文をボンドで固めるとしても糸で綴じるにしても、2つの束がバラバラに背にくっつく形になるので、安定性が確保できなそうです。


作り方の想像図(とっても見づらい!)

ということで、厚表紙にふたつの束をくっつけていく形はやめになりました。

次に考えたのは和綴じ本です。
和綴じ本は、それぞれの束を表紙に縫い付けていく形になるので、安定性が高そうです。

しかし、和綴じ本は作りの問題で、紙が倍量必要になります(!)
今回、ページ数が多くなる予定だったので、それではモサモサしてしまう気がします。
また、全ての折丁に穴を開けるのも骨が折れます。


和綴じ本の作り(やっぱり見づらい!)

そんなわけで、和綴じも断念しました。


そこで、コデックス装を作ろうと思って調べていた時に見つけたある綴じ方を思い出しました。
「Coptic binding」といわれる綴じ方で、その名の通りコプト(エジプト)で昔おこなわれていた製本方法です。

日本語では、「コプティック製本」「コプト製本」などと呼ばれています。

これの大きな特徴は、折丁の中を縫いながら背の部分に糸を絡め、表紙にそのまま縫い付ける点です。


言葉では説明し難いので、私が参考にした製本家の山崎曜さんのブログをご覧ください!

(こちらのブログは山崎曜『手でつくる本』の補足説明になっています。絶版になっているようなのですが、書誌情報も載せておきます↓)

この作り方をベースに、作りやすくアレンジしながらやっていこう!という方針になりました。


次回は紙の選び方やショップなどを紹介していこうと思います!
頑張れれば、実際に製作して難しかった点や困った点、作り方のコツなどもご紹介していきます……!

4.紙を決める(次回予定)

5.製作開始~完成(次回予定)



そして!鋭意製本中の七緒らいせの意欲のために!ぜひ文学フリマのカタログの方に「気になるボタン」をお願いいたします↓

https://c.bunfree.net/c/tokyo36/h1/P/13



それではまた明日お会いしましょう、おやすみなさい。



七緒らいせ

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