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彼女たちの夜明け


『絶対ありえないですよー。ブサメンと付き合うと

か。少し冷たくても絶対イケメン、イ▪︎ケ•メ•ン!』

私は小沢可奈28歳。そしてこの大のイケメン好きが

えり子25歳。私たちは仕事先が同じ。でも年もキャ

リアも私の方が長い。この日ば春ももうそこまでの、

三月の金曜日に二人で飲んでいた。私はこの数日後

にえり子が変わり果てる事を知るよしもなかった。


…『可奈さん、えり子今日も休みてすって』

それはあの日の飲みの3日後のことだった。えり子と

同じグループの子が言った。「私からLINEしてみる

よ」と言ったものの、もうすでにLINEしてるんだけ

どスルーさるてるんたよね、なんてそんなこと言え

るはずがなかった。えり子はすごく明るくて、えり

子がいるだけで、場が盛り上がる、みんなのムード

メーカー的存在だ。そんなえり子が今日で三日間休

みを取っている。既読は付くんだけど返信がない。

通話も出ない。諦めたその時、えり子から返信があ

った、『可奈さんごめんなさい。泣きつかれまし

た…』私は瞬時に女の勘が働いて、彼氏と何かあった

な、と思った。「奢るから一杯行こうよ」と誘って

みた。返信は早かった『はーい』


私は仕事を片付けて、えり子が住む永福町へ向かっ

た。いつも二人で行く焼き鳥が美味しい居酒屋『ご

んべい』で待ち合わせた。お店に入ると、メニュー

を見ているえり子が4人掛けの席に座っていた。

えり子は私を見つけると、笑ってるんだか、泣いて

んだかわからない顔で抱きついてきた。私はよしよ

ししてあげて、席に座った。なんで休んだかを訊く

と、三年付き合った彼氏にフラれたとの事だった。

浮気がいつしか本気に変わってしまったらしい。

私はずっとえり子の話に相槌をうつしかなかった。

気持ちえり子が囃せた気がする。喜ぶかと思って言

ってみたら、三日間ろくに食事を取らなかったみた

いだ。散々飲んだ。ごんべいのメニューに、何故だ

かセックス•オンザ•ビーチがあったから悪ノリで頼ん

でみた。若大将が持ってきたときに『お盛んだ

ね!』とごんべいらしく出してくれた。私はちょっ

とだけ口にし、後はえり子が飲んだ。もうかなりベ

ロベロだ。セックス•オンザ•ビーチで笑えるくらいだ

から、相当飲んだ。えり子は明日からちゃんと行き

ますと言ってくれた。ごんべい、ありがとう!

…翌日、えり子は三日間代わりに仕事してくれたメンバ

ーにお辞儀をしていた。なんだかそれが私には微笑

ましく見えた。お昼になり、えり子とランチに出

た。新しい移動販売車が見えた。えり子は見てきま

す!と言って背中を向けて小走りで去っていった。

しばらくするとえり子が移動販売車の前から

『可奈さーん!イ•ケ•メ•ン』と大きく口でジェスチャ

ーするのであった。


「ばっか」

私は小さく笑った。

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