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歴史小説「Two of Us」第1章J-4

~細川忠興&ガラシャ珠子夫妻の生涯~
第1章 TAMAKO met TADAOKI @The Crossroads


J‐4

 珍しく、甘味の和菓子について語っていた与一郎忠興。急ぎ足で蹄の轟音が近づいて来ている事に、不意に気づいた。

 ほどなくして、あなた珠子が歩いて来た方角とは反対の彼方、竹林の入り口に、10頭近くの栗毛の馬と人影が現れた。

 忠興は立ち上がり、彼らが己の家臣であることを確かめ、頷く。側近の若衆も立ち上がり、あなたと侍女を礼節怠らずに促す姿勢で、声をかける。「馬を、ご用意出来ましてござります。」


 忠興の家臣が集めてきた馬は、忠興一行の人数分である。
 忠興と鷹匠、側近の3名と、あなたと侍女の2名、計5名は新しく調達された馬に乗る。

 残りの家臣達は、亀山城に預ける3頭とあなたが手綱を引いて来た1頭の分も乗り合わせ、帯同しながら歩く者も若干。
 「旅は道連れ世は情け」という言葉はこの時代にも存在したのだろうか。偶然の巡り合わせながら、忠興は何がしかの深い縁を感じていた。

 本来は人との関りが不器用である忠興なのに、あなた珠子にとっても、見知らぬ者の懐に優しく染み込むような素直な行為を、他の同い年の青年には感じえない好感として、快く受け取っていた。



 先を急ぐわけではない忠興一行は、乗馬が心もとない侍女に合わせたスピードで、共に丹波路をのんびりと渡る。

 先頭に側近の若衆。次には、忠興とあなたが並んで馬を導きつつ、進む。
 その後ろに家臣達が侍女を囲むように続く。最後尾は、都ことばを扱う鷹匠である。

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