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歴史小説「Two of Us」第3章J-34

割引あり

~細川忠興父子とガラシャ珠子夫人の生涯~
第3章 本能寺の変以後から関ヶ原合戦の果てまで
    (改訂版は日本語文のみ)
    The Fatal Share for "Las abandonadas"


J-34 
~ The other last nights of the ”Battle SEKIGAHARA ”~
 (もうひとつの関ケ原合戦前夜)

「なぁなあ、河内屋はん!あれ見て!あれ!」

 谷町四丁目の和菓子屋女将が、駆け込んで廻船問屋〈河内屋〉に、勢いよくなだれ込んで来た。


「えっどこ❓」
「空が!あれ見て!」

「空がなに!?満月でも落っこちて来たんか?」
「いやちゃうちゃう!お空が真っ赤やろ?」
「そやから、何やねん!?」
「とりあえず、あれ見て!玉造のお屋敷の方や!」


 そろそろ床につこうかと、店先で台帳とにらめっこを止めた廻船問屋〈河内屋〉の主人。けたたましくて鬱陶しい時もあるが、長年の御近所づきあいのこの女将さんは、ごくたまにものごっつい朗報を持ち込んで来るので、無気にも扱えない。

 和菓子屋の女将が指差す方向を見た〈河内屋〉ご主人は、言葉が出て来なかった。
 口に当てたいのか、叫ぼうとしてるのか、アワワアワワと両手をふさいだり離したりしているだけで、声が言葉が、出て来ない。
 とうとう頭を抱えて、両眼を見開いたまま閉じられない。


「ぁ、、、あ、、、珠子様ぁ、、、お屋敷が、、、お屋敷が、、、」
 眼を見開いたまま、〈河内屋〉は涙をこぼし始めた。

「あんな真っ赤に炎上した空、初めて見たわ。。。」
 
女将は、恐竜でも遭遇したように珍しがっている。

 珍しがってる場合ではないのだ。少なくとも〈河内屋〉主人にとっては。

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