見出し画像

歴史小説「Two of Us」第3章J-35

割引あり

~細川忠興父子とガラシャ珠子夫人の生涯~
第3章 本能寺の変以後から関ヶ原合戦の果てまで
    (改訂版は日本語文のみ)
    The Fatal Share for "Las abandonadas"


J-35 ~ The end of a Civil War era ~

細川越中守忠興屋敷跡付近


 稲富祐直は、三日三晩走り続けた。
 それはどの早籠や飛脚よりも駿足だった。通りがかった関所手前の旅籠で、一旦仮眠を摂る。

 その地点こそが、後世に伝わる天下分け目の合戦場〈関ケ原〉であるとは、知る由もなく。
 ただただ、あなたガラシャ珠子の書状を、その夫であり自身の主君である細川忠興に、届ける事だけを考え、走っていた。

 拙者は、どんな事が起こってもこの報せを忠興殿に届けねば。
 死んでは成らない、その時まで。


 旅籠や峠茶屋での情報で、主忠興は会津へ上杉征伐に向かった事を知る。

 とにもかくにも届けねば。珠子様の御遺志を届けねば。。。

 あくる日の夕方、会津の手前で本陣を形成していた徳川家康軍のもとに、辿り着いた。


「申し上げます。我が主君、細川忠興殿に、お渡しせねばならぬ書状がござります。お目通りを。主忠興殿は❔」

 何者かも分からぬ武士に、槍を突きつける歩兵達を搔き分け、家康家臣の本多正信が声をかける。

「その方、まず名を名乗れ」
「拙者は稲富祐直
(いなとみすけなお)と申しまする。
 主君、細川忠興殿に是が非でも、お目通りを!!」

ここから先は

1,035字 / 2画像

この記事が参加している募集

歴史小説が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?