歴史小説「Two of Us」第3章J‐14
~細川忠興父子とガラシャ珠子夫人の生涯~
第3章 本能寺の変以後から関ヶ原合戦の果てまで
(改訂版は日本語文のみ)
The Fatal Share for "Las abandonadas"
J-14 ~conversasion@水戸野~
(3)On The MITONO Villa Night
別室で、お長と侍女のイト(清原マリア)も寝静まったようだ。
小笠原(少斎)は、忠興が帰って来た際の馬番を兼ねて、納屋の三和土で眠っている。
忠興が歌仙兼定(日本刀)の次に大事にしている水玉模様の白黒グラデーションの駿馬。俊敏すぎて神経質だから、主人が滞在している間は、小笠原が納屋で寝起きして護る。納屋と言っても山あいの農家の土地を借りているので、ハナレのように広く、井草畳も敷かれている。
家族への好奇心で一日を充たされた興之丸は、あなた達夫婦の寝所の中で、傍に置かれて熟睡しているようだ。
枕元の灯篭の明かりを確かめてから、あなた珠子は正座して声をかける。「そろそろ、お休みなさいますか❓」
座机に向かっていた忠興は、父上藤孝(幽斎)が監修した勅撰和歌集の未完成部分を、読み返していた。
むしろ、細川大坂屋敷に居る時よりも、書物に没頭できるのだろうか、、、知識欲旺盛なあなた珠子のもとなら、置き去りにしても問題ないのか、戻って来る度に書物の束が増えて行く。
特に不機嫌でもなく、忠興はすぐに振り向き「ん❔」という顔で尋ねる。「あいわかった。何か、述べたいことでも❔」
「いえ。わたしは、心配しているのでございます。
お休みは、お取りなさっておりますか❓」
「うむ。。。ここに来ると、深く眠れるのじゃ」
「たしかに。かように戦(いくさ)が続きますと、お屋敷では、いつ何時出陣のご準備される運びになることか。。。
お体が一番大事でござります。お越しになる度、何かしら書物を抱えて〈ハヤブサ〉を飛ばしてらっしゃいますが、、、そのあたりの調整は、池田殿や一色殿にもお伝えなされてますか❓」
「心配するでない。太閤秀吉殿に任される事が増えるのも、武将の励みであるぞ。
秀吉殿が、勅撰和歌集が発刊される前に読み知りたいとの事。ご無理をおっしゃる常ゆえ、あの父上(細川藤孝)だからこそ叶うであろう、と云う有無を言わせぬ眼光であるぞ❔
鷹揚 ではあるが、眼は笑わぬ。珠子も気を付けよ」
「珠子が気を付けるのは、そちらの眼差しではござりませぬ」
「あいわかっておる。それがしが常より申しておる通りじゃ」
「、、、かしこまりましてござります」
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