見出し画像

『好き』しか勝たん

 最初に結論を言うと、人が仕事に就くには二つの道があって。
幼い頃から大好きだったことやずっと描いていたことにまっすぐ突き進んでいく道と、目の前のことをしている内にたどり着いているって道。

 いずれにしても最大の原動力は「好き」だと思う。子どもが自分の好きなことをただ「好き」と言える環境は実はとても大切なものかも知れない。

将来の夢

 私も経験したが、子どもの頃将来の夢を聞かれることは面白くもあり苦痛でもある。そしてそれを面白くするのも苦痛にするのも子どもに寄り添う大人次第だ、ということを付け加えておく。
 極端に「子どもに夢を聞くな」とか「人の進路を聞くな」と言うのはまた違う話だとは思うが、気をつけたいのはそのリアクション。「まだ希望とかないんですよ」という人に大して、それが悪いことであるかの様なリアクションを取ると次からその話題を避けたり嫌な思いをしたりする。
 学校でキャリア教育が言われる様になって、将来の夢やしたいことがないなんておかしいという指導がされ始めると、子どもたちにはまた自分を責める材料が一つ増えた。希望から進路を導き出せたら、そりゃ導く方は楽だろう。でも希望も夢も無理やり人に「持て」と言われるものではない。

 そこで「じゃ、想像してみようか。20年後。何してると思う?」
楽しい想像をして遊んでみてはいかがだろう。その自分は車を運転してる?ペットは?どんな場所に住んでるだろう?想像してみると仕事は浮かばないにせよ、どんな自分になっていたいかの希望は出てきそうだ。
 「時間以内に夢を考えろ」「○○日までに提出」だけではあまりにも乱暴な気もする。
 出した仕事を勝手にジャッジする大人もいるらしいが、それは論外。

「好きなものがない」子

 「うちの子は好きなものがない」と悩む方がおられる。
でもよくお子さんと話をしてみると好きなものがたくさんあって、でもそれらは親が認めたくないことだから親は「好き」としてカウントしない、ということや、将来の仕事に繋がる様な何かでないと、小さな「好き」は好きなものとして見えてきていないということに気付く。

 何にも興味を持っていない様に見える子もいるのかも知れないが、食べ物や色、キャラクターや遊びなど、その子がちょっと笑顔になること、また止めたがらないことは、きっとその子が好きなものなんだと思う。実は子どもたちの中には本人も気付いていないけれど、強く心惹かれるものがあるものかも知れない。

「好き」はコントロール出来る

 怖い話だが、「好き」は多少コントロール出来ると私は思う。もちろん無理やり好きにさせることは完全にNG。でも方法はある。

 親がそれをとても楽しんでいること。

 例えば釣りが好きな父親に影響されて釣りが好き、音楽が好きな親と好きなバンドが一緒、そんな話をよく聞く。要は、子どもは大好きな人の楽しそうな瞬間が大好きで、そこにあるものも一緒に好きになってしまうのだ。
そして、それは親にとっても子にとってもただの「喜び」でしかないから、うまくいくのだ。

 そこに親の評価「そこはもっとこうした方が良い」などが入ると一気にそれは楽しさから遠ざかるから要注意。「親が評価してくれること」には絶対に結び付けてはいけない、ということ。結果は同じに見えるが気持ちは全然違う。「楽しい」「好き」の原動力は持続するし、苦労も乗り越える。

 ただ、「コントロール出来る」部分はそれだけ。しかも親がいくら音楽が好きでもそれになびかずに、親の別の趣味であるお菓子作りの方に興味が湧く子もいれば、スポーツでなく動物を選ぶ子もいる。要は子ども自身にもそれぞれの性格や性質があって、選ぶものはコントロール出来ないということだ。
 そもそもコントロールしよう、と思う気持ち自体が親のエゴなので、一緒に楽しむ気持ちが「好き」に繋がるかもね、という気持ちで子どもとの楽しい時間を共有することを目的にするのがベスト。というオチがついたところで次。

「好き」の見つけ方

 最後に私が得たスキルをご紹介する。
私は小さな教室を運営する英語教師だが、多くの子どもたちの体験レッスンを行っている。正に英語への入り口。与えられた時間は20分のミニレッスン。その中で私はその子の好きなものを見つけて、そこから英語にアプローチする。その子の目の輝き、反応。笑顔がふっと出る瞬間や声が出る瞬間、それを見逃さない。

 好きなものからアプローチすると、子どもたちの口からたちまち英語が出てくる。笑顔が出てくる。緊張で固まっていた子が、帰りには「バイバイ」と笑顔で手を振ってくれる。「好き」の力の大きさを知っているから、私はそれを探して一緒に楽しむ。

 その20分で集中して得たその子の特徴は、その後の指導にかなり役立つ。
そしてレッスンの中でもそれぞれの子の好きなものを絡めながら、自分目線で物事を語れる様にとサポートする。

 大人はついつい「好きなもの」を「夢」などと直結させたいあまりに勇み足で大きなものと捉えがちだが、実は小さな「好き」はその子の中にたくさんあって、それを一緒に愛でることが大きな何かに繋がっていくのかも知れないと思っている。

 お子さんの好きな色は、好きな動物は、好きな食べ物は、好きな食べ方は、好きな場所は、好きな靴は、好きな服は...そう見ていくと、お子さんの「好き」がたくさん見えてくる。
「好き」をたくさん共有して楽しんでいると、その先は放っておいてもその子が選ぶ。そう信じている。
 

この記事が参加している募集

子どもに教えられたこと

読んでくださって、ありがとうございます。 もし気に入ってくださったら、投げ銭していただけると励みになります💜