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なぜ親世代は住宅ローンの繰り上げ返済を勧めるのか?

ファイナンシャルプランナーの吉岡奈美です。

家を買うとき、ご両親から頭金の資金援助を受けた人もいらっしゃると思います。物件価格に対しての頭金比率が高ければ、それだけ月々の返済額が減り、家計のやりくりが楽になるし、住宅購入目的であれば贈与税の優遇も受けられるので双方にメリットがあります。

ただ資金援助と合わせて「お金を貯めて繰り上げ返済するように」という条件、というか、釘をさされた人も多いのではないでしょうか?

なぜ親世代は繰り上げ返済を勧めるのか?について検証していきます。

住宅ローン金利推移を確認しましょう

これはフラット35のホームページより引用した、昭和59年(1984年)からの民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利)グラフです。平成3年のバブル崩壊以前は、変動金利で6~7%、固定金利では8%超えというのは当たり前でしたが、その後、平成7年にかけて大きくローン金利は下がりました。

そして、日銀による景気回復の起爆剤として平成12年に「ゼロ金利政策」が取られ、いちど翌年に解除されたものの平成13年のITバブル崩壊を機に復活して以来、そのまま実質ゼロ金利で推移しました。そして、平成28年にマイナス金利が導入され、現在まで続いています。

貯蓄よりも借金に有利な金利状況

前回、こちらのグラフを用いて検証した通り、今は貯蓄では利息がつかず、資産を殖やすことができません。
https://note.mu/nami_yoshioka/n/n1b151bca83d0 

『利息がつかない』のは借金も同じです。
ということは、今は貯蓄するよりもローンを組んで、自宅を買ったり、事業を起こしたりしやすい金利環境であるといえるのです。

親世代の目線:繰り上げ・借り換えの効果絶大
今回もライフプラン例に当てはめてみます。
30歳の時に生まれた子どもが小学校に入るタイミングで住宅ローンを組んだとします。ちょうど金利水準はピークですから、固定金利なら10%くらいと高金利の借金になったことでしょう。

そして、中学校を卒業し、教育費の負担が増えるタイミングで借り換えをしたとします。「ゼロ金利政策」が取られていますから借り換え後は固定金利でも3.5%くらいまで下がったことでしょう。ローンの金利負担を10%⇒3.5%に減らせたのです。しかも、その間の貯蓄の金利も年5%近くあり、月々1万円ずつ累計180万円貯めた資金も約260万円ほどに殖やせています。

確かにこの時代にお金を貯めて繰り上げ返済することは、家計改善の有効手段だったのです。この成功体験があるので「繰り上げ返済しなさい」と言うのです。

子世代の目線:得策とは言えない
直近15年間の金利環境下ではどうなるでしょう?そもそも、最初の借入金利は低く、しかも預金で貯めても利息はつかず殖やせません。

借り換えにはコストがかかる
さらに住宅ローンの借り換えには手数料などのコストがかかり、以下の3点をすべて満たさなければ、効果を得られないと言われています。
 ・1%以上の金利差がある
 ・返済期間が10年以上残っている
 ・借入残高が1000万円以上残っている

知らないことが最大のリスク
家を買うとき、まずご両親に相談する方がほとんどだと思います。相談された親世代の人は「自分の時は○○だった」と、誠意を持って記憶をたどり、アドバイス下さると思います。

ですが、そのアドバイスは、経済環境の変化や、金利水準の変化による影響度合いまでは加味されていないことがほとんどです。なぜなら日本人はお金の話を家族の間であまりしたがらない国民性を持っているから。

高度成長期はそれでもまだよかったのです。
でも、今はそれではダメなのです。
「難しそうだから」「経済なんてわからないから」と、知らないままでいることが最大のリスクであることをまずは認識して欲しいのです。

まとめ

私たちを育ててくれた親世代の住宅ローンの組み方や返済方法などの常識は今となっては非常識です。マイナス金利が続く限り、繰り上げ返済よりも、適切なリスクを取りながら運用し、今後 必要になる学費や、独立資金などの準備を、時間を味方につけながら進めていくことが重要です。

また、トランプさんのツイートでも話題になっている通り、今まさに、米FRBやECBが追加利下げに向かっています。

ちょうど夏休みで海外へ旅行した人は「円高になってラッキー!」と、お買い物を楽しんだかもしれませんが、どうして円高になったのか?どうしてコツコツ貯蓄してもお金が殖えないのか?といった、日々の素朴な疑問を流さないようにしてください。

「日銀の政策」とか「政府のやっていること」と捉えるとなんだか他人ごとに感じるかもしれませんが、日々のニュースにもう少しだけ興味を持つことが、大きな時代の流れに乗り遅れない大切な一歩になります。

”ライフブック”は一人ひとりの将来の夢や目標に対して、お金の面の悩みをサポートし、その解決策をアドバイスする日本で唯一のサービスです。

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