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もも
2023年3月6日 15:57
二月下旬のことだった。O 駅から路線バスに乗り込んで、ひとり座席に腰かけていた。バスは停車していた。次の発車まで後五分だった。時刻はちょうど二十一時を差し、これが最終の便だった。冬も終わりを迎えていたが、窓硝子からはまだ微かに冬の匂いが感じられた。夜なのに街は明るく、ネオンの光が鬱陶しかった。私は街ゆく人の姿を目で追い、発車を待っていた。皆揃ってより強い光に向かうように、駅やビル、ロータリーで