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仕事や人生に迷ったときはいつも「A3用紙」がぼくを助けてくれた

ぼくは「A3用紙」が大好きです。
人生のパートナーと言っても過言ではありません。

いま、ぼくは会社を経営しています。全国の企業や自治体と組んで、イベントやコミュニティなどの企画・運営をおこなう会社です。

「どうやって企画を実現させるか?」「会社の方針をどうしていくか?」毎日、考えることは山積みです。

そんなとき、いつも使っているのが「A3用紙」

1枚のA3用紙に、関係する要素や条件をすべて書き出して、それを再構築しながらアイデアを練り上げていくんです。

こんな感じ。こちらは「A3用紙の使い方」について、A3にまとめてみました。笑

ぼくのキャリアはすこし変わっていて、ライトオンの店舗スタッフ、マーケター、CRMの会社のディレクター、Yahoo! 復興支援室のプロデューサー、経営者……と、いろんな仕事や立場を経験しています。

しかし人生のフェーズが変わっても、この「A3用紙」仕事術は変わらず使いつづけることができました。

社員へのナレッジシェアもかねて、ここにやりかたをまとめてみます。

A3に書くとなにがいいのか?

ぼくがA3用紙を使うのは、こんなとき。

・自分のキャリアをふり返るとき
・プレゼンを作るとき
・ウェブサイトを作るとき
・企画のアイデアを考えるとき
・企画をどうやって実行するか考えるとき
・会社の方針を考えるとき

とにかく「悩む」のをやめて「考える」をやりたいときにおすすめです。

自己紹介を1枚の紙にまとめる

そもそも、なぜA3用紙を使うようになったのか? ちょっと振り返ってみます。

「1枚の紙に書く」重要性に気づいたのは、20代のころ。昇進面接の対策をしていたときでした。

ぼくは高校卒業後、バンドマンを経て「ライトオン」のアルバイトとして働きはじめました。そこから本社のマーケティング職になるために、面接を通過する必要があって。

ところがぼくは緊張しいで、面接での自己紹介がすごく苦手でした。そこで、1枚の紙に「自分」を構成する要素をまとめてみたんです。

当時はA3を出力できるコピー機がなく、A4にまとめていました

これまでやってきたことや、これまで読んできた本を一覧にして。すると頭のなかの整理ができて、面接でもスッと言葉が出てくるようになりました。

A4じゃなく「A3用紙1枚」がいい

無事に面接を通過し、本社のマーケティング職になったぼくは、ある日ライトオンの「経営理念」をつくるプロジェクトにアサインされました。

大事なプロジェクトだけに、関係者がものすごく多くて、意見をまとめるのはかなり大変でした。「こないだはああ言ってた」「いやそんなこと言ってない」みたいな小競り合いも起きたりして。

それでぼくは1枚の「A3用紙」に、会議で出た「経営理念を構成する要素」をすべて並べて、みんなに共有したんです。

※個人的な活動として勝手にまとめた資料です。

ふつうはA4用紙2枚に分けたり、内容ごとに1枚ずつ紙を使うかもしれません。でもそうではなく、「A3用紙1枚」にすべておさめる。

そうすることで、すべての要素を「平面で一覧」できることが重要でした。

どんな要素があり、どんな関係性なのか。ページをめくったりしなくても、ぱっと見てすべてを把握できる。すると、みんなの頭の中に共通の認識が生まれて、同じ方向をみて議論できるんです。

A3なら余白もあるので、浮かんだアイデアや意見はあとから書きこめます。

もちろんぼくだけの手柄ではありませんが、このA3用紙がきっかけで、プロジェクトは前に進むことができたんです。

ウェブサイトの全ページを1枚の紙で見る

その後、ぼくはシナジーマーケティングというCRMの会社に転職しました。

仕事内容は「クライアントのウェブサイトを分析して、より効果的にユーザーに届くよう運用する」というものです。

この仕事で肝になるのは「現状のウェブサイトに足りないものはなんなのか?」を見極めること。いま思うようにユーザーに届いていないなら、そのボトルネックはどこにあるのか。どんな要素が足りていないのか、探していくわけです。

しかしウェブサイトを普通に見ると、1つのモニターに1つの画面しか見ることができません。ウェブサイト全体を俯瞰して見るのはなかなか難しいです。

そこでぼくは、ウェブサイトの画面をスクリーンショットして、1枚のA3用紙の上に並べてみることにしました。「平面で一覧」してみようと思ったのです。

今回は手書きで失礼します

ECへの誘導や採用など「最終的に達成したいゴール」をまんなかに書いて、いまあるコンテンツを周りに書く。そしてそれらが、どのような導線で「ゴール」につながっているのか、矢印で書きこんでいきます。

すると、ページが折り重なっていたときには見えなかったサイトの構造を見渡せて、ボトルネックを見つけることができます。「コンテンツはいっぱいあるけど、ゴールにちゃんとつながってるものは少ないなあ」みたいに。

イメージとしては、壊れた目覚まし時計のネジをぜんぶ外して、部品を目の前にずらっと並べてみるような感じ。組み立てた状態だとわからなかった、部品の故障や欠損に気づけるんです。

この手法はいろいろと応用できます。たとえばプレゼンをつくるときなんかも、いきなり作りはじめずに、まずは平面で全体の構成を考えるとうまくいきます。

こんな感じです。

重層的なものを、分解して1枚の紙の上に置いてみる。
立体の世界を平面で見わたして、ボトルネックを探す。

これが「A3用紙仕事術」の肝なのです。

「A3用紙仕事術」で企画をつくる

その後ぼくは、Yahoo!の復興支援室に出向になり、そのまま独立して起業しました。

いまのぼくの仕事は、地域や社会の課題を解決するための「企画」をつくることです。震災の復興支援のためにグッズをつくったり、農業や漁業の魅力を広めるためのイベントをしたり。

毎回「これに困ってるんです」という課題以外は、なにもない状態からスタートして、企画を考え、実行しないといけません。小さな会社をたくさんつくるような感じなので、けっこう大変です。

そんなとき「A3用紙仕事術」が、いまだに役に立っているんです。実際にぼくがやっている方法を紹介します。

①課題をつかんで、解決策(アイデア)を考える

まずは課題解決のための「アイデア」を考えないといけません。

仮に「人材業界の現状を変えたい」という課題があるとします。そうしたらまずは、A3用紙の左半分に、人材業界の関係者をバーっと書いていきましょう

人材会社、人材会社の担当者、転職先の会社、求職者……。

書き出したら、それらがどのように関わっているのか、どのように人や情報が動いているのか、連想ゲームのように書きこんでいきます。ITでよく使う「フローチャート」のような感じです。

A3用紙の左側に「現状」を書く

書いてみると、ボトルネックがなんなのか見えてきます。

この場合、人材会社は「転職する人が増えれば増えるほど儲かる」仕組みになっているわけです。すると「求職者」がスキルを身につけられないまま転職を繰り返して、生きる力がなくなってしまう……という課題がありそうでした。

そうしたら次は、紙の右側に、ボトルネックである「求職者」だけを抜きだして書きます。で、彼らがスキルを身につけられるようなしくみを考えてみるんです。

A3用紙の右側に「理想」を書く

この場合は、ベンチャー企業やスタートアップで丁稚奉公のように働きながら、スキルを身に付けられる「松下村塾」のようなコミュニティを作れないだろうか……と考えました。

最後にA3全体を俯瞰して、左側(現状)と右側(理想)をつなぐにはどうすればいいか考えます。

理想と現実をつなぐ

求職者を「経営者人材」に育てたら、ファンドと連携して、買収した企業の立て直しのために、育てた人材に経営陣として働いてもらうのはどうだろう? ……今回はこんなアイデアが生まれました。

他にも「メディアも作れそうだな」「資本家とどうやってつながったらいいだろう」みたいに、余白にイメージを広げていくんです。

②アイデアを実現させていく

アイデアが浮かんだら、今度はそれを「どうやって実現していくか」を考えないといけません。これがまた大変です。

アイデアはすごくいいのに、いざ現実に落とし込もうとすると、要素が多すぎてどうしたらいいかわからない……なんてことはよくあります。

そこで、A3用紙の出番です。

とあるコミュニティを作ったときのユーザーの動き

企画を実行したときの「ユーザーの動き」を、時系列で、連想ゲームのように書いていくんです。

この場合は、SNSでユーザーと接点をもつ→アプリの自動返信で会員登録してもらう→データベースに落とし込んでリストをつくる→参加者をジャンルごとに分類→それぞれイベント参加までの動きを考える……みたいな感じ。

ユーザーを具体的に想像して、ひとつずつ書いていきます。

アイデアが煮詰まっていなかったり、必要な情報が足りていなかったりすると、絶対に途中で書けなくなります。書けなかったときは、ヒアリングしたり調べたりインプットしてから、もう一度書いてみましょう。

動きを最後まで書けたら「ここで集めたデータをここで活用して……」というふうに、関連性も書き加えていきます。

そこまで書けたら、あとは実行あるのみ。

このA3用紙が、企画の「地図」のような役割をしてくれるので、「今やってるこれって何なんだっけ……」みたいに迷走せず、みんな動くことができるんです。

アナログのほうが伝わるときもある

企画が成功するかどうかは「相手の頭の中に、こちらの理想像をいかに具体的にイメージさせられるか」にかかっています。

A3用紙で地図を描くのは、そのためでもあるんです。

ぼくは農業や林業、漁業を営む方々など「自分とはまったくちがう環境」で育った人と仕事をすることが多いです。すると、自分があたりまえに使っている言葉や価値観が、まったく通用しないことがざらにあります。

地方の仕事だと、地元のおばあちゃんたちにいきなりパワーポイントをぼんと出して「この資料の通りです」なんて言っても伝わりません。

そこで「興味あるものはなんですか」「この中でかわいいと思うものはありますか」とヒアリングして、紙で出して。それをA3用紙やホワイトボードの上に、パズルのように組み合わせていくんです。

そうするとちゃんと伝わるし「自分たちでつくった」という感覚をもってもらえるので、プロジェクトがすごくやりやすくなります。

人によって、価値観も見えている世界もまったくちがう。そのなかで、できるだけ共通言語で話すために、なるべく「アナログ」かつ「ビジュアル」で伝えるようにしているんです。

おすすめA3用紙

ちなみに、ぼくがよく使うA3用紙を貼っておきます。

方眼がついていて書きやすく、ぺりぺりはがして何枚も書き直せるので気に入っています。

とにかく吐き出してから考える

A3用紙とペンを用意したら、みなさんもぜひやってみてください。

行き詰まらずに書くコツは、まず頭に思い浮かんだものをとにかく吐き出すこと。

明確なゴールが決まっていなくても、ブレスト的に書きはじめてOKです。「ちょっと、今までやってきたことを時系列で書いてみよう」「これまで担当したクライアントさんを、ぜんぶ書いてみよう」みたいに。

書き直しはあとからいくらでもやっていいんです。ぼくはいつも、消せるタイプのペンを使っています。

まずとにかく、はき出しまくる。「もうこれ以上なにも出てこないな」と思ったら、次は吐き出したものたちの「関係性」を考えます。

「吐き出す」と「考える」は分けるのがコツです。一気には考えられないので。一つ一つ書いて、つなげていって、気づいたらひとつの絵になっている。

それを見わたしてみると「あ、こういう新しいことできるかも」「次のアクションをするには、これが足りないな」と思い浮かんだりするんです。

おもしろいアイデアを生み出すコツ

A3用紙で考えるとき、ぼくが意識しているのは「できるだけ遠くに点を打つ」こと。

ひとつの業界のことばかり書くのではなく、一見ぜんぜん関係ないような要素も書きこむようにしています。

SNSやウェブサイトなど、オンライン上に存在するもの。これまで関わってきたクライアントさんの業界。関わった街や、そこに住む人、彼らの暮らしのようす。戦争や少子高齢化、貧困などの社会情勢……。

できるだけ遠く、できるだけ幅広い要素を、A3の平面上に書きこんでいく。

そのほうが、最終的に実現できるものはおもしろくなります。なぜかというと、新しいアイデアは、一見すると関係ないものどうしを組み合わせることで生まれるからです。

遠くに点を打ちつづける

うちの会社は「なにをやってるかよくわからない」とよく言われます。

ぼく自身、バンドマン、アパレル、IT企業、地域貢献と、いろんな業界を転々としてきました。会社をつくってからも、北海道に行ったり長崎に行ったり、大企業と仕事したり、地方の村と仕事したり……。

一見、まったく脈絡がないようにも見えます。

でもそうやって、いろんな場所に「点」を打っておくことで、ぼくらはおもしろい企画を生み出せているんです。

最近は、6年前のYahoo!時代に出会った東北の漁師団体といっしょに、全国規模のイベントをやりました。人材業界ではあたりまえの「就職説明会」を漁師の世界に持ちこんで発想した「漁業就職フェア」です。

世田谷区さんとおこなっている「産官学連携のプラットフォーム」をつくる仕事では、別の仕事で知り合った、世界的に活躍するアーティストさんにイラストを描いていただきました。

新しいアイデアは、一見すると関係なさそうなものどうしを組み合わせることによって生まれます。

それらを結びつけるために「平面で一覧」できるA3用紙はとても役に立つのです。

A3用紙の上の世界を、どんどん広げていく

起業したいまは、会社の未来について「A3用紙」で考えています。

経営しているとよく「会社をどれぐらい大きくしたいですか?」と聞かれることがあります。

でも、会社というのは本来、課題解決のための手段にすぎません。だから考えるべきは、会社のことではなく「社会」のことなんです。社会にある課題を認識して、それを解決するために必要な会社であればいい。

会社の規模を決めるのは、経営者ではなく「社会」です。

だから会社の未来について考えるとき、ぼくがA3用紙に描くのは、会社ではなく「社会」のこと。

ライトオン時代は、自分や、所属する会社について。
CRMの会社では、ウェブサイトについて。
企画の仕事では、街や産業について。
いまは、社会全体の課題について。

思い返すと、A3用紙のサイズは変わっていないのに、そのなかに表現する世界はどんどん広くなっていました

会社の未来像を描いた「A3用紙」は、まだ未完成です。
この余白にどんな点を打っていこうか、ぼくは今日も考えているんです。


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