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ボイトレ講座2017前期

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ボイストレーニングについて書きます。 内容は ・発声理論(アッポッジョ、声の闘争、歌手のフォルマントなど) ・発声法と練習方法 ・参考動画紹介 …などです。 よろしくお願いしま…
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#ボイトレ

支えは声を出す筋肉と息を止める筋肉を利用すると良いです。また、声を出し続けることと止め続ける感覚も必要です。走り続けると点灯する自転車のランプのように、継続した呼吸管理が支えを作ります。歌うときは”支える”というよりも”支え続ける”という継続力が重要です。

情緒で高い声は出ません。情緒がもたらす筋肉の緊張で高い声を出すと良いです。攻撃的な情緒がもたらす戦闘態勢の筋肉が重要です。情緒が声になるのではなく、情緒が筋肉に影響を与えて声になるということです。

『声』は力が声を作り、その力が方向を決めて安定して飛ぶことになります。脱力は最適なバランスによる結果の状態です。全身で力を分かち合うので楽に感じる、そのため脱力(リラックス)という感覚になります。力を抜けば良い声になるわけではありません。

声の闘争の圧縮は「出す力」と「出さない力」による支え合いです。ホースで水をまく時、そのまま水を出すと地面に落ちるだけですが、出口を圧縮すると明確な方向性を持って水は飛びます。声の闘争の無い歌唱は、声が足元に落ちるか周囲に散らばる結果(そば鳴り)になります。力自体が道を作ります。

声の闘争を活用して歌う場合は、力をチャージすることが重要です。力をチャージして、チャージされた力を解放せずに歌うと良いです。力の解放は響きの拡散につながるため、支えのある声を出すときは”出さない力”で出す必要があります。

お腹の横は適度に広げたままにすると良いです。腹斜筋は肋間筋とくっついているのでお腹の横を使う際は、肋骨全体(胸郭)も少し持ち上げることが大切です。発声は筋肉を単体で考えない方がいいです。筋肉と筋肉の連携で最適な呼吸を行い、その呼吸を発声に生かすと良いです。

発声時の力は「支え」というよりも「支え合い」が大切です。双方向からの圧力が必要になります。風船を水に沈めるとはね返ってきますが、このはね返りを押さえつける感覚が必要です。

心を込めて歌う練習をするときは、息がもれている場合が多いです。息をもらしながら歌うことは支えを失いやすく、歌唱表現と発声技術が一致しません。支えを意識して歌うためには、無感情・無感動・無心で練習する過程が必要になります。いつでも心を込めれば良いというわけではありません。

発声では、広げたA4の紙を丸く握って出来るだけ小さくする圧力が必要です。広がろうとする紙を包み込むように圧縮して小さくする感覚で声を出すと良いです。声は小さく圧縮すると、強く大きい声になります。最初から大きく出そうとすると声は広がってしまい、響きの散った弱い声になります。

アッポッジョのある声で歌うときは最少呼気による発声が良いです。呼気を最少にするものが声の闘争です。息を止めている、あるいは非常にゆっくり息を出している感覚が支えのある歌声には必要です。

ジラーレとかキューゾとかアペルトみたいな用語で説明するのはあまり好きではありません。日本語でいいと個人的に思います。言葉を知るよりも体感で分かることが重要です。専門用語を知っていると声もよくなった気持ちになる場合がありますが、発声は知識よりも体感であり、特に筋肉の記憶が大切です。

発声は情緒(心や気持ち)に期待して練習しない方がいいです。情緒がもたらす筋肉の収縮が重要です。情緒はきっかけであり、きっかけ無しで筋肉を収縮させた方が正確な声になります。情緒まかせだと気まぐれで声は不安定になります。情緒は筋肉を通じて声に変化を与えるものであり、基礎ではないです。