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百貨店の話をしよう。加筆⇒再投稿

このnoteは、2019年の2月に以前のバージョンを投稿しました。今回、少しだけ加筆修正しましたので、そのまま編集で更新ではなく、新たな投稿としました。

このnoteは、みんなが知っているようで知らない百貨店のビジネス、百貨店を持っている会社、問題点について、外部人材として4年間大手老舗百貨店会社の役員をしていた筆者が書きました。百貨店について、いろいろなことを言う人がいます。否定も肯定もしませんが、まずは、正しく理解をしてから、コメントをした方がよいのではと常々考えていたことを文字にしたものです。百貨店に仕事の話に行く会社さんにも必ず役に立つ内容だと思います。

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 私の子供のころ、服を買うというと百貨店に行くか、駅前の洋品店に行くくらいしかありませんでした。ところが、今は、百貨店だけでなく、スーパー、セレクトショップ、量販店、ファストファッション、ショッピングモール、通販、ECなどなど、たくさんの選択肢があります。
 消費者の選択肢に多様性が出てきたと考えられます。経済成長期で、新しく増える需要のところだけが新しい選択肢に行けばよいですが、そんなわけはありません。市場も縮小している中、既存のチャネルから新しい選択肢への流出があります。なのに、同じやり方で消費者に同じものを提供していて、それまでの売上や「規模」が維持できるはずがないのです。
 スーパーマーケットが出てきたときに、百貨店の皆さんは、スーパーは「スー」ときて「パー」と消えていくからとバカにしていたそうですが、スーパーに抜かれ、コンビニに抜かれ、ECに抜かれと。。。
「規模」と書いたのは、百貨店にも昔から変わらないと考えられている役割があり、その部分はあまり変わっていないのではと思うからです。それは、「ギフト」「ハレの日の買い物」そして「新しいこと、文化などの発信」ではないかと。
 その部分の役割で必要とされている百貨店事業の規模だけは、今後とも続いていくのではと思っています。


 百貨店の話をするときに、よく混乱するのが、「百貨店事業をやっている会社」と「百貨店事業そのもの」です。この2つを混ぜてしゃべっているのでややこしくなります。
 JFR(大丸松坂屋)などは不動産など百貨店事業以外の比率も高い会社ですが、百貨店の会社といわれます。逆に、三越伊勢丹は全売上に占める百貨店事業の売上が90%以上ですので百貨店の会社と言わざるを得ないでしょう(それを弱みと感じているようです)。単純に比較も、同列で話はできません。せめて会社全体の話をしているのか、百貨店事業での話をしているかは明確にしないと、かみ合わないことが多いようです。

 上で書いた「ギフト」「ハレの日の買い物」「新しいこと、文化などの発信」の生み出される業界全体の売上の割り当てが、すべて、他社ではなく三越伊勢丹の百貨店事業に集約されるのであれば、特に問題はないのですが。
 企業としては、存続ができれば、利益が出れば、で考えれば、創業の基幹ビジネスを減らす、なくすということもかまわないのでしょう。個人的には、状況の必然で変わっていくよりも、ある程度連続性をもち、さらに意思を持って(流されるのではなく)変わっていくことが好ましい気がしています。

 「百貨店事業をやっている」⇒「百貨店事業を持っている」会社の事業を乱暴に分けてみると:
A.百貨店事業
B.百貨店事業周辺の小売業
C.百貨店事業と関連のない小売業
D.その他の事業(不動産など)
この分け方だと、商業ビルをどこに入れるのか、百貨店内に入っているエステはどうするなどの疑問がありますね。

 別の分け方をしてみると:
a.百貨店事業
b.百貨店事業の顧客をターゲットにしている事業
c.百貨店事業の顧客と関連のない事業
などと分けることができるかもしれません。

また、百貨店自体も
・都市型百貨店
・地方百貨店
そして、
・呉服系百貨店
・電鉄系百貨店
といった分け方もあります。
 百貨店の会社自体が本体の場合もありますし、他に主事業があるグループの中の一つの会社や子会社の場合もあります。
 環境、成り立ちはかなり違いますし、リソースの使い方、使え方もさまざまです。同じなのは、百貨店らしいたてものを使っているのと、百貨店の昔から変わらないである、「ギフト」「ハレの日の買い物」「新しいこと、文化などの発信」くらいです。

 ここで、百貨店がどうなったらいいとか、どうすべきということは、言わないですし、言えないですが、考えるための下地作りとして、個人的に思うことはあります。
 外部から入って経験し、私が個人的に考える百貨店が「変わるため」に「変えるべき」ことですが:


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