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2016年 18冊目『人材サービス産業の新しい役割 就業機会とキャリアの質向上のために』

労働市場における需給調整の担い手として人材産業の役割を整理した本です。

特に労働者派遣業業を中心に、専門家が様々な観点で説明しています。

ネガティヴな側面だけを捉えられがちな、派遣業、請負業の真実態、
価値を知るのに良い本だと思いました。

以下にポイントを書いておきます。


1. 就業機会の質向上:働く人々の視点

・「事務系派遣スタッフのキャリア」として

1一般事務  2営業事務  3経理事務  4金融事務  5貿易事務の
主要5職種について分析をしています。

ポイントは3つ

①職種の幅(1ー5)を広げることで技能の幅を広げられる

②異なる派遣先を移動しながらキャリアを積むことが重要である

③未経験者は1 一般事務がエントリー職になっていること

2 .時給アップ:派遣事務職と派遣営業職

・派遣事務職、派遣営業職についての分析をしています。

時給が上がった人のポイントは

共通:裁量が高い仕事、ストレスが大きい仕事、スキルを活かせる仕事

事務:賃金交渉、処遇改善のための情報収集、キャリア相談

営業:仕事を選り好みしない、派遣先社員との積極的なコミュニケーション

3 .生産職種の就業意識:満足度から見た人事管理課題

①就業理由は「正社員としての就業機会が限定」が高く、「魅力的な働き方」の割合は低い。

②満足度では「仕事内容、労働時間、休日など」と比べて「賃金や評価処遇、教育訓練、雇用の満足度」が低い。

③就業条件改善要望では、管理職外では「賃金水準向上、雇用継続、有給所得できる環境整備、苦情相談対応の充実」が、リーダでは「賃金水準向上、苦情対応充実」の声が高い。

④満足度向上施策では、人事管理面では
「賃金水準向上、有給休暇取得環境整備、苦情対応、人間関係改善、
教育訓練充実」が、仕事管理面では
「仕事の幅を広げる配置、OJTを通じての技能向上機会提供、
リーダ登用、社員への転換の仕組み」などを求めている。

4 .生産分野派遣スタッフのキャリア、就業意識:製造業派遣禁止の賛否

・製造派遣禁止に「賛成」している派遣社員は、社員にはなれないと思っているが、現在の満足度が低い。

・製造派遣禁止に「反対」している派遣社員も、社員にはなれないと思っているが、現在の満足度が高い。

5. 派遣会社の機能と課題:機能の高度化

・派遣会社が担う機能は
①マッチング②能力開発支援③処遇・労働条件整備④キャリア形成
⑤苦情・相談対応である。

・取り組み状況は①③7ー8割、②⑤6割で、④キャリア形成は3割と低い。

・派遣企業の業績とへの影響では、従業員1人あたり月平均稼働派遣社員の多さと相関があるのは①マッチング⑤苦情・相談対応である。

6 .事務系派遣営業所の運営と課題:独立系と資本系

・共通:既存派遣先との取引継続、拡大及び新規派遣先の開拓を重視、スタッフの希望に合わせたマッチングと就業継続を重視している。

・独立系は高付加価値サービスと事業の多角化を、資本系もグループ外取引拡大を志向している。

7. 26業務適正化プランの影響:派遣元、派遣先、労働者の変化

・26業務適正化の目的が「雇用を失わずに本来の26業務のみに契約を是正していく」と考えた場合、全体でみるとある程度目的に沿った結果となっている。ただ、労働者にとってメリットが大きかったとまでは評価できないのが現状である。

8. 派遣先企業における人事管理:活用を高める人事管理

・派遣先人事、現場の役割として①人間関係マネジメント②仕事、業績マネジメント③職場環境マネジメント④人材育成マネジメント⑤派遣会社との連携がある。

・取り組み状況は①8割と一番高く、④が5割と最も低い。

・職場管理職が上記①ー⑤により多く取り組んでいる事と派遣社員の仕事意欲には優位の相関があった。

・管理職や職場社員に派遣活用の「教育研修」を実施している企業ほど、職場管理職が上記施策に積極的に取り組んでいる。

9 .生産業での雇用継続:リーマンショックの経験を踏まえて

・雇用継続に積極的な派遣会社・請負会社との特徴は、派遣先の積極的な開拓に加え、派遣従業員への人材育成に積極的である。

10. 職業紹介担当者の能力とスキル:ハイパフォーマーの特徴

1人のCAがマッチングする人数が多いことをハイパフォーマーと定義している。

・サーチ型:業界知識と求人にマッチする求職者の開拓能力が高い。

・登録型:スピード。

・紹介予定派遣:求人企業の開拓。

・手数料が高い事業所:求職者のスキルアップ、求職者を励ます、求職者の条件拡大などを通じ、彼らの付加価値を高め自事業との関係性を長期に維持する。

・手数料が低い事業所:求人企業に対しての条件緩和、求職者への現状認識促進

11 .未就業卒業者へのマッチング機能:新卒就職応援プロジェクト

・ミスマッチの要因は2つ。1つは、求人企業と求職者の情報の非対称性、もう1つは未就業卒業生の基礎学力やコミュニケーションといった社会人としての基礎素養の欠如。

・人材企業が、採用意欲の高い優良中小企業確保と未就業卒業生への教育訓練を通じて、社会人への一歩を踏み出せるまで成長させ、その過程で両者の高すぎる期待水準の適正化をはかり、現実的な就職活動、採用活動を図っていることを明らかにした。(価値ありますね)

▼前回のブックレビューです。

▼新著『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』です。

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