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2023年 27冊目『学生を戦地に送るには』

佐藤優さんが

「若者を殺す思想とは何か?」

『二度と騙されないための「思考の集中キャンプ」』をされた全記録です。

中身は、東大の理科数学科に入学しながら哲学科に転課し、東北大学の講師をしている時に京大の西田幾太郎の行木で京大に行き、43歳で京大教授になった田辺元がどうやって京都大学の学生を洗脳したのかを学びます。

戦争の場合、

「祖国を守るために、愛する家族を守るために命を差し出してくれ」

という説明は比較的やりやすい。

しかし、侵略戦争の場合には、理屈付けが必要です。

アメリカは対アフガニスタン、対イラクの時には「自由と民主主義を守るため」

ISをはじめイスラム教過激派は「アッラーのため聖戦に参加して殉教者になった人は天国で永遠に生きる」

このような思考と心理操作をして死を超越させます。

日本の太平洋戦争は3つの性格があった

1 米英などとは対等の帝国主義戦争

2 アジアでの戦いは、侵略戦争と呼ばれても仕方がない

3 ソ連との戦いは、(日ソ中立条約侵犯なので)防衛戦争

つまり、3は理屈はいらない。

客観的に見て勝ち目のない1とアジアにおける植民地拡大をどう正当化するかは、知的操作が必要になる。

それを田辺元は

「生きる事は死ぬことだ」

「悠久の大義に殉じたものは永遠に生きる」

というような結論に人々を引き込む

悪魔的魅力を持った論理と表現法で正当化していくのです。

この本を読んで、危険思想に対する予防接種をすることを佐藤さんは目指しているのです。

今後、世界的規模で「国家のために命を捨てよ」という感染症が流行した時に、この予防接種を思い出す必要があると思いました。

佐藤さんは参加者と

田辺元が書いた「歴史的現実」を読み合わせて、解説し、議論をします。

この本では、

「1人ひとりの命は有限だけれども、それが悠久の大義のために使われるのであれば、永遠に生きる事になる」

というレトリックで、「国のために死ね」と言っています。

この本は当時ベストセラーになり、読んだ学徒動員が感化されて納得して特攻隊に行ったのです。

当時の時代背景として

国の為に死のうとは思っていなかったけれど、兵隊にとられるのは当たり前だし、

いつ死ぬのか、何を考えて死ぬのか、そんなことばかり考えていた

そんな時に、この本はよく読まれて、大きな影響力を持っていたそうです

田辺元は、抜群に頭が良く、相手に合わせて、人の腹に染み入る様な話術も巧みだったそうです。

ある意味悪魔のような思想家だったのです。

庶民は敗戦の1年前までは、結構銃後の生活を楽しんでもいたようなのです。

※敵機空襲という国策映画からも分かるようです。

いやー、読んでみて、怖くなります。

▼前回のブックレビューはこちら


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