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【連続企画 #2】アニメ〜美少女ゲーム〜スマホゲーム〜VTuber…各年代のキャラクターコンテンツにおける「主流」は、何が理由でどのように変化するのか? -「スマホゲー×キャラゲー」の現在地-

おつかれさまです。
スマホゲームのプランナー、プロデューサー、マーケティング担当などをやっているナカムラケンタロウです。

前回から始めた「キャラゲー×スマホゲーの現在地」の2回目をお届けします。

前回は「アニメをサブスクで試聴する人が増えたこと」と「VTuberの登場」がスマホゲームに大きなインパクトを与えたというお話でした。

今回は、そこからさらに視野を広げて、1990年代後半から現在にかけてのキャラクターコンテンツの「主流」の移り変わりを見てみたいと思います。
テレ東系アニメやOVAから美少女ゲーム(ギャルゲーやエロゲー)、深夜アニメ、スマホゲーム、VTuberと、その時々のタイミングで「主流」となるものが変化しているなと感じていて、その変化の要因や背景について考えてみたいと思います。

今回もよろしくお願いいたします!


連続企画「スマホゲー×キャラゲー」の現在地
【#1】アニメのサブスク配信やVTuberの登場は「スマホゲー × キャラゲー」にどのような影響を与えたのか?

【#2】アニメ〜美少女ゲーム〜スマホゲーム〜VTuber…各年代のキャラクターコンテンツにおける「主流」は、何が理由でどのように変化するのか?

【#3】なぜ好きなキャラの呼び方が「嫁」から「推し」に変わったのか? そのことで「スマホゲー×キャラゲー」はどのような影響を受けたのか?


最初に前提を説明させてください【注意点】

決して何か特定のコンテンツのイメージを下げたり、
コンテンツの優劣を決めたりする意図はありません。
その点だけご理解いただけるとありがたいです。

最初に定義的な部分や注意点について説明させてください。

ここで言う「キャラゲー」や「スマホゲー」というのは、
主なターゲットを男性に設定した、一定数の女性キャラクターが登場し、キャラクターの魅力を感じることが大きな楽しみとして設計されているゲーム
といったものをイメージしています。
「天華百剣 -斬-」がこのようなゲームであったため、その運営を通して経験できたことをベースにしています。

さらに、今回は1990年代後半から「主流」が移り変わっていく様子を示します。その際に前よりも後に出てきたものが優れているかのように見える方もおられるかもしれません。

もちろんそのように見えないよう細心の注意を払いますが、いずれにせよ特定のコンテンツを下に見たり、貶めたりするような意図は一切ありませんので、その点ご理解いただけますと幸いです。


[1] 1990年代後半〜2020年代まで、その時々でキャラクターコンテンツの「主流」の遷移
-アニメ〜PCゲーム〜深夜アニメ〜スマホゲーム〜VTuber-

ここから本題に入っていくのですが、上の図の通り1990年代後半からキャラクターコンテンツの「主流」は何度も移り変わっています。
まず最初に各時代の概況を簡単に紹介したいと思います。

1990年代後半

・テレビ東京系のアニメ
・OVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)と呼ばれたパッケージ販売とレンタルのみで流通したアニメ作品

この時代は「アニメ」が主流の時代でした。
主にテレビ東京系列で放送されるものとOVAがメインで、テレ東で放送されたアニメが1クール後や半年後、遅いものでは1年後とかにローカル局で放送されるといった、すごくタイムラグがある状況でした。

このような「地域格差」が尋常じゃなくあった当時を思うと、今と比較して「オタク」とよばれる人たちの数がかなり少ない時代だったなと感じています。

2000年代前半

・いわゆるギャルゲーやエロゲーと呼ばれる美少女ゲーム

1990年代の終盤くらいからギャルゲーやエロゲーと呼ばれる美少女ゲームがオタク系コンテンツの主流になっていました。
一般的にはコンシューマゲームとして流通した全年齢版の恋愛アドベンチャー系ゲームが「ギャルゲー」、PC用の18禁の恋愛アドベンチャー系ゲームが「エロゲー」と呼ばれています。
その後、「Fateは文学」「AIRは芸術」「CLANNADは人生」という有名なコピペが生まれたりもしました。

2000年代後半

・深夜アニメ

2000年代半ば頃から、地方の独立系TV局、いわゆるローカル局の深夜枠で大量にアニメが放送されるようになりました。
「アニメのDVD(当時)を販売するのに、高いお金を出してCMを打つより、安い地方局の深夜枠で全話放送した方が宣伝効果が高い」ということに誰かが気づいたんだと思うのですが、この頃からどんどん1クールあたりに放送されるアニメの数が増えて今に至っています。

この「地方局でアニメがほぼリアルタイムで見られる」という状況は、1990年代後半にあった地域格差が大幅に改善されており、この頃から徐々に「オタク人口(自分をオタクだと認識する人)」が増えていったと思っています。

2010年代後半

・スマホゲーム

長らく深夜アニメが主流の時代が続いたのですが、その次に主流となったのが「スマホゲーム」になります。
ちょうどFGO(Fate/Grand Order)がリリースされたのが2015年の夏で、そこから本格的なキャラクターコンテンツにおけるスマホゲーム全盛期へと移行していきました。

スマホゲームが主流になる前段階として、いわゆるソシャゲ(mobageやGREEなど)の流行や艦これ(艦隊これくしょん)の流行があり、さらにパズドラ(パズル&ドラゴンズ)やモンスト(モンスターストライク)等の大ヒットスマホーゲームを経て、その延長線上に「スマホゲー × キャラゲー」の流行がある状態です。

2017年頃〜現在

・VTuber

VTuberのキズナアイさんが2016年から活動を開始し、これに2017年から活動を開始した輝夜月さん、ミライアカリさん、バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさんを加えて「バーチャルYouTuber四天王」と呼ばれていました。また「ホロライブ」が2017年、「にじさんじ」は2018年にスタートしています。
2018年以降、瞬く間に超人気コンテンツとなった「VTuber」という存在は、キャラクターコンテンツの勢力図を一気に大きく塗り替えていきました。


[2] キャラクターコンテンツの「主流」は何が理由で遷移したのか?

ここまで各年代におけるキャラクターコンテンツの「主流」の移り変わりを振り返ってきました。
続いて「なぜ「主流」が移り変わったのか?」という点を考えてみたいと思います。

エンタメ業界において、主流のコンテンツが大きく変わる時、その後からやってきて主流の座に君臨したコンテンツには、何か「新しい体験」「今までになかった価値観」を備えていることが多いと考えています。

そのような後発コンテンツがもたらした「新しい体験」や「今までになかった価値観」を簡単にまとめたものが上の図になります。
ここから各年代の詳細を見ていきたいと思います。

2000年代前半
「ギャルゲー・エロゲー」がもたらした「新しい体験」や「今までになかった価値観」

「ギャルゲー・エロゲー」がもたらした「新しい体験」や「今までになかった価値観」は、
ユーザー自身が「作品世界中の主人公」として、ヒロインを攻略できる
というものだったと考えています。

それまでのアニメでは、テレビの画面に映るヒロインや登場人物を眺めているだけでした。
アニメに登場するキャラクターのことをどれだけ好きでも、ユーザーとキャラクターの間に立ちはだかっていたのが「二次元と三次元の壁」でした。

そのような状況に対して、ギャルゲーやエロゲーでは「主人公=ユーザー自身」として、その作品世界の中に存在することができました。
さらにヒロインとコミュニケーションを取ることができ、そのヒロインを攻略することが可能になりました。

このような「作品世界の中に自分自身を投影できるキャラがいる」ことや「ヒロインを攻略できる」という体験が、アニメから「主流」を奪えた原動力なのではないかと考えています。

2000年代後半〜2010年代前半
「深夜アニメ」がもたらした「新しい体験」や「今までになかった価値観」

上述のギャルゲー・エロゲーから「深夜アニメ」に主流が移り変わるのですが、その変化の原動力となったものが「たくさんの人と同じタイミングで同じ感情を共有できる」といったものだったと考えています。

というのも、ローカル局で深夜アニメが放送されたことで、ほぼ同じタイミングでアニメを見ることができる人が大幅に増えました。

それ以前は、アニメが放送されない地域の人はアニメ誌の情報を頼りにレンタルで見たり、首都圏で放送された1クール後、半年後、1年後など大幅に遅れたタイミングで放送されるアニメをみたり、とにかく「アニメを同じタイミングで見れる人」が少ない状態でした。

その地域格差が改善されたことに加え、インターネットを通してリアルタイムでたくさんの人が盛り上がれる環境が生まれたことも、かなり大きな要因だと考えています。
2000年代は掲示板(2ch)やブログ、2010年前後からはTwitterで「たくさんの人がほぼ同じアニメを同じ時間に同じ熱量で盛り上がれる」という体験が可能になりました。

このような状況の変化によって、いわゆる「オタク」と呼ばれる層が増えていき、1クールに50〜60作品が新たに放送されてもビジネスが成り立つような規模感になっていったのではと考えています。

2010年代後半
「スマホゲー」がもたらした「新しい体験」や「今までになかった価値観」

深夜アニメが流行したと言っても、アニメはアニメなので「好きなキャラクターを眺めるだけ」という状況は、90年代後半と同じだったと言えます。
それゆえに「ゲームがアニメに対して持つアドバンテージ」がここでも発揮されることになりました。

ただし、スマホゲームはオンラインゲーム、配信・運用型のゲームですので、その特徴が最も現れた体験として「キャラクターを自分のものとして所有できる」ということが可能になります。

この「キャラクターを所有できる」という体験だけでも大きな価値を持っているのに、それに加えて「所有していることをSNS(主にTwitter)で自慢できる」という付加価値が加わります。

キャラを所有することの充足感に加え、SNSで自慢して独占欲や優越感、承認欲求も満たせる、そんな満足度の高いコンテンツが「スマホゲーム」だったんだと思っています。

2017年頃〜現在
「VTuber」がもたらした「新しい体験」や「今までになかった価値観」

「VTuber」というコンテンツの最大の特徴は「キャラクターと直接リアルタイムでコミュニケーションが取れる」ということだと思っています。
これまで他のコンテンツにあった「自分自身とキャラクターの間にある越えられない次元の壁」というものが、VTuberというコンテンツにおいては限りなくゼロになっています。

キャラクターコンテンツに何を望むかは人それぞれですが「キャラクターと直接対話できる」ということは、他のコンテンツに対してかなり大きなアドバンテージを持っていると感じています。

さらに、スパチャ(スーパーチャット=投げ銭)によって「みんなの前でキャラクターが自分だけに対して話しかけてくれる」という体験は、スマホゲーム同様の満足感を得られます。
むしろ生配信という限定的な状況なので、Twitterよりもより直接的に満足感を味わえる環境になっています。

といった形で、キャラクターコンテンツの「主流」が移り変わる要因となった「新しい体験」や「今までになかった価値」を見てきました。

最後に、補足的な観点として「世の中の変化」がどのように「主流」の移り変わりを後押ししたかについても確認したいと思います。


[3]  キャラクターコンテンツの「主流」の遷移を後押しした世の中的な状況

上の図はキャラクターコンテンツの「主流」の移り変わりを後押しした「世の中の変化」を簡単にまとめたものになります。
ここから各年代で起こった「主流の移り変わり」について、それを後押しした「世の中の変化」について見ていきます。

2000年代前半
「ギャルゲー・エロゲー」が主流に変わったことを後押しした「PCの高スペック化」と「PCの低価格化」

1990年代後半から2000年代にかけて、PCがどんどん高スペックになっていきました。
対してPCの値段そのものは以前と比べて安く買えるようになっていきました。

ちなみに、2000年に発売されたPS2はDVDの再生機能があったことも相まって、ゲーム機史上で最も売れたハード(1億5500万台・2021年時点)となったのもこの時代になります。(ここで多くの人がDVDを再生できるようになったことが、次の時代にもつながっているのかなとも思っています)

このような「高スペックハードの普及」が、ギャルゲー・エロゲーの躍進の立役者となったと見ることができます。

2000年代後半
「深夜アニメ」が主流に変わったことを後押しした「オタク人口増加」と「ネット上でのコミュニケーション」

まずは上でも説明した通り「ローカル局でアニメが放送されるようになり、アニメを見れる人が増えた」という変化はかなり大きいと思っています。
それに加えて、掲示板(2ch)やブログ等のネット上でのコミュニケーション手段の登場や増加も大きな要因で、その2つがかけ合わさったことでオタク人口が大幅に増えるレベルの変化につながったと考えています。

2010年代前半
「深夜アニメ」の主流が続いたことを後押しした「Twitterの一般化」と「デジタルでイラストが描ける環境」

まず1つ目はシンプルに「Twitterの一般化」だと思います。
Twitterというツールは、キャラクターコンテンツと非常に相性がよく、必須ツールだといっても過言ではないと思います。

さらに、デジタルイラストが描ける環境が安く整えられるようになったことも大きな要因になっているはずで、

イラストを描いてTwitterに投稿する

そのコンテンツが盛り上がる

そのコンテンツのファンが増える

イラストを描いてTwitterに投稿する人が増える

といった好循環によって深夜アニメがさらに大きく盛り上がっていったように感じています。

2010年代半ば
「スマホゲーム」が主流に変わったことを後押しした「スマホの一般化」と「スマホの高スペック化」

これもシンプルに「スマホ」の普及と高スペック化が大きな要因になります。
2008年に日本でiPhone(3G)がソフトバンク独占で発売され、2011にau、2013年にドコモでiPhoneが発売されるようになりました。
Android端末も年を追うごとに高スペックモデルが発売されています。

さらに、スマホゲームが主流となる土壌として、mobageやGREEのソーシャルゲームが流行したこと、ブラウザゲームの「艦隊これくしょん」が流行したことも外せないポイントです。
特にソーシャルゲームから発展した「ガチャ」という課金システムは、スマホゲームの収益力の高さに直結しました。

2017年頃〜現在
「VTuber」が主流に変わったことを後押しした「技術的な進展」と「配信の容易化」

この変化については、技術的な進展と、それに伴う配信環境を整える費用の低価格化が主な要因になります。
たとえば「自分の体の動きに合わせてリアルタイムで2Dや3Dのモデルを動かすシステム」は、一昔前ならすごく高額なものだったと思うのですが、今はスマホ1つあればできてしまいます。

さらに各社のスマホの料金プラン的にも、移動中に動画を見たり、長時間の生配信を見続けても問題ないような設定のプランが出てきていることも、動画配信が主たる活動になっている「VTuber」というコンテンツにフィットしていると言うことができます。

若干「タマゴが先かニワトリが先か」の議論に見えなくもないのですが、上の「2章」で紹介した「新たな体験や価値」とこの「3章」で紹介した「世の中的な変化」が掛け合わさって「主流の遷移」が起こっているのかなと考えています。


さいごに

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

自分自身の体験、体感からここ20年くらいのキャラクターコンテンツの大きな変化について概観してみました。
「新しい体験」や「今までになかった価値」をどうやったら提供できるのか?というテーマは、エンタメ業界にとっての永遠のテーマな気がしています。
それに加えて「世の中の流れを読んで、次の時代の覇権コンテンツを仕込む」ということを、多くの人が現在進行系で常にチャレンジしている状況です。

現状のまま環境が進むと、まずは「VTuberと自分のアバターが同じ空間で一緒に遊ぶことができる」というホロライブさんの「ホロアース」が理論上、もっとも可能性があるコンテンツのように思えます。
なので、その次の時代の環境やコンテンツを考える必要がある、と言えます。自分もここにチャレンジすべく準備を進めたいなと思っています。

そして、次回予告になるのですが、次は「世界観設定やストーリー、キャラクター設定の主流の変化」みたいな観点から、各時代のキャラクターコンテンツの変化について考えてみたいと思います。
「どうして異世界転生ものが流行ってるの?」とか「そういえば、妹がヒロインの作品って最近はほとんど見ないよね」みたいな部分をきっかけに、いろいろ探っていければと思っています。

それでは引き続きよろしくお願いいたします!


連続企画「スマホゲー×キャラゲー」の現在地
【#1】アニメのサブスク配信やVTuberの登場は「スマホゲー × キャラゲー」にどのような影響を与えたのか?

【#2】アニメ〜美少女ゲーム〜スマホゲーム〜VTuber…各年代のキャラクターコンテンツにおける「主流」は、何が理由でどのように変化するのか?

【#3】なぜ好きなキャラの呼び方が「嫁」から「推し」に変わったのか? そのことで「スマホゲー×キャラゲー」はどのような影響を受けたのか?

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