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【連続企画 #1】アニメのサブスク配信やVTuberの登場は「スマホゲー × キャラゲー」にどのような影響を与えたのか? -「スマホゲー×キャラゲー」の現在地-

おつかれさまです。
スマホゲームのプランナー、プロデューサー、マーケティング担当などをやっているナカムラケンタロウです。

今回から何回かに分けて「キャラゲー×スマホゲーの現在地」と題した内容をお届けします。

「天華百剣 -斬-」の運営を通して得られた知見や考えたことを、キャラクターコンテンツのビジネスに活かせるような形の読み物として展開できればという試みになります。

そんな試みの第一回目となる今回は「サブスクやVTuberの登場は「スマホゲー × キャラゲー」にどのような影響を与えた?」といった内容です。

「天華百剣 -斬-」というスマホゲームのサービス期間であった2017〜2021年の間に「スマホゲー×キャラゲー」をめぐる世の中的な、界隈的な状況は大きく様変わりしたと感じています。
みなさんも同じように感じられてるかもしれないのですが「アニメをサブスクで試聴する人が増えたこと」と「VTuberの登場」が2大インパクトだと考えていて、その2つが「キャラゲー×スマホゲー」のスキームのタイトルに大きな影響を与えたと思っています。

これらの影響について「天華百剣 -斬-」の運営の経験を通して、個人として感じたり考えたりしたことをこれから展開していきます。

どうぞよろしくお願いいたします!


連続企画「スマホゲー×キャラゲー」の現在地
【#1】アニメのサブスク配信やVTuberの登場は「スマホゲー × キャラゲー」にどのような影響を与えたのか?

【#2】アニメ〜美少女ゲーム〜スマホゲーム〜VTuber…各年代のキャラクターコンテンツにおける「主流」は、何が理由でどのように変化するのか?

【#3】なぜ好きなキャラの呼び方が「嫁」から「推し」に変わったのか? そのことで「スマホゲー×キャラゲー」はどのような影響を受けたのか?


2. 最初に前提を説明させてください【注意点】

前提①と前提②についてご理解いただけますと幸いです。

最初に定義的な部分も説明させてください

ここで言う「キャラゲー」や「スマホゲー」というのは、
主なターゲットを男性に設定した、一定数の女性キャラクターが登場し、キャラクターの魅力を感じることが大きな楽しみとして設計されているゲーム
といったものをイメージしています。
「天華百剣 -斬-」がこのようなゲームであったため、その運営を通して経験できたことをベースにしています。

また、この後「サブスク動画配信サービス」や「VTuber」について言及しますが、どちらもネガティブなニュアンスで扱っているわけではなく「スマホゲームの運営側から見た個人的な印象」として記載しています。
決して「サブスク動画配信サービス」や「VTuber」というコンテンツを貶めたい意図ではありませんので、ご理解いただけますと幸いです。

と言うわけで、改めてよろしくお願いいたします!


3. アニメをサブスク配信で見る人が増えて「スマホゲー×キャラゲー」はどのような影響を受けたのか?

世の中的に2014〜2016年あたりから「月額XXX円で映画やアニメが見放題」のサブスクサービスが徐々にユーザー数を増やしていっています。
個人の感覚として、2018年くらいからアニメをサブスクの配信サービスで見る人がすごく増えたような印象があります。
もしかしたら、スマホのサービス内容的に月に使えるデータ容量が増えたとか、そういったことも関係しているのかなと思っています。

ここで重要だと考えているのが「アニメをテレビではなく、スマホで見る人が増えた」という事実になります。

3-1. 「スマホゲー×キャラゲー」のターゲット戦略

「スマホゲー×キャラゲー」は、その特徴から「アニメを好きな人」を中心的なターゲットとして設定していることが多いです。
また「アニメを好きな人」と、いわゆる「声優コンテンツ」と呼ばれる、声優さんのラジオやライブ等のコンテンツを好きな人が重複していることも多く、そういった人たちをまとめてターゲットに出来ることが「スマホゲー×キャラゲー」の戦略上の強みの1つでした。

上の図は「スマホゲー×キャラゲー」のターゲット戦略を概略化したものになるのですが、アニメが好きな層の多くがターゲットになり、その面積がかなり大きいことがわかります。

そして、そのようなターゲット戦略をベースにしてゲームの基本設計が行われるわけですが、2017〜2019年くらいまでにリリースされた「スマホゲー×キャラゲー」のタイトルの多くは「すきま時間にプレイしてもらう」や「TV等を見ながらプレイしてもらう」の「ながらプレイ」に適合した基本設計になっていたのではないかと思っています。
通勤や通学途中のちょっとした時間にデイリーミッションをこなしたり、家でアニメを見ながらイベントの周回ミッションをこなす、といったパターンです。

そういった基本設計が続いていた前提となっていた状況が「アニメが好きな人たちは、1日のうちアニメをTVで見ている時間が一定以上ある」というもので、その時間にスマホゲームをプレイしてもらうことを狙った設計になっていました。

3-2. ターゲット戦略に基づいて作られた「ゲームの基本設計」の崩壊

「スマホゲー×キャラゲー」がターゲットとしていた「アニメを好きな層」は、1日の中で「TVでアニメを見る」時間があることが前提でした。
しかし「サブスクの動画配信サービスでアニメを見る人が増える」と、その前提が崩壊してしまうことになります(PCで見る人もいらっしゃるかと思いますが、スマホで見る人が増えてきた状況を主に指しています)。

どういうことかというと「サブスクの動画配信サービスをスマホで見ている時間」は、言い換えると「その人にとってスマホゲームが出来ない時間」になります。
これまでの前提となっていた「ながらプレイ」は「TVを見ながら」という状況がないと成立しません。
しかし、TVを見ながらスマホゲームが出来なくなってしまった結果、「アニメが好きな人たち」の「自由時間に何をする?」という行動選択に対し「アニメを見る or スマホゲームをプレイする」の二択を迫る形になりました。

これは、以前なら「自由時間にアニメを見ながらゲームをする」という蜜月関係が成立していたのに、ゲームとアニメがスマホ画面を奪い合うライバル関係に変わってしまったこと意味します。

3-3. 「スマホゲー×キャラゲー」のターゲット戦略はどのように変化したのか?

上の図は、サブスクの動画配信サービスでアニメを見る人が増えた時期以降の「スマホゲー×キャラゲー」のターゲット戦略の概略図です。

このタイミングでは、もはやアニメとスマホゲームはスマホ画面を取り合うライバル関係となるため「スマホゲームにとって戦略上、有利な部分(=ターゲットが重複する部分)」の面積は非常に小さくなっています。

そして「TVでアニメを見ながらスマホゲームをプレイする」を前提としていた基本設計は、以前は「同じ時間で2つの趣味が楽しめるお得な設計」だったのが、今や「いたずらに時間を奪う悪しき設計」へと変貌しました。
2017年くらいから「スキップチケット」や「周回するための導線の最適化や簡略化」などは、スマホゲームに必須というレベルで求められるようになった機能ですが、このような状況の変化によるものだったと考えています。

といった形で「アニメのサブスク試聴」がスマホゲーム界隈にどのような変化をもたらしたかを見てきました。
ここまでを簡単にまとめると「サブスクの動画配信サービスでアニメを見る人が増えたことで「スマホゲー×キャラゲー」の「ターゲット戦略上の強み」が消えた」ということになります。

次からは今回のもう1つのテーマ「VTuberの登場がもたらした変化」について考えていきたいと思います。


4. VTuberさんが登場したことで「スマホゲー×キャラゲー」はどのような影響を与えたのか?

4-1. 「スマホ画面の奪い合い」における現在の勝者

2017年の後半から2018年にかけて「VTuber」という存在が広く認知されるようになり、そのままの勢いでキャラクターコンテンツ界隈の中で覇権的なコンテンツになりました。
その「VTuber」と「スマホゲー×キャラゲー」は、ターゲット戦略が基本的に同じで「アニメをはじめとするオタク系のキャラクターコンテンツが好きな人たち」がメインターゲットになります。

多くのVTuberさんのメインの活動が「生配信」になるため、上で説明した「スマホ画面の奪い合い」においてアニメやスマホゲームとガチで競合するコンテンツでした。
その「スマホ画面の奪い合い」における現在の勝者が「VTuber」という状況になっていると感じています。

4-2. スマホゲームにどのような影響を与えたのか?

かつては「スマホ画面の奪い合い」において勝利していた「スマホゲー×キャラゲー」ですが、敗北して以降、リアルに現れた影響として「掛け持ちするゲーム数が減ったこと」や「メインでやってるゲーム以外の課金額が減ったこと」があるんじゃないかと感じています。

というのもアニメやVTuberさんの配信を見ることでスマホゲームに使える時間が減ると、プレイヤーにとって「何のゲームをどれくらいの時間プレイできるか?」は、かなり大きな問題になると思います。

2017年くらいまでは「いわゆる「サブゲー」としてでもいいから継続的に遊んでもらえるかどうか」が「スマホゲー×キャラゲー」にとってビジネス的に(≒収益確保の面で)目指すポイントでした。
それが2018年くらいから「限られた時間をどのゲームに使うか?」という基準で遊ぶゲームが選択されるようになり「いかにメインゲームの座を奪えるか?」がビジネス的に(≒収益確保の面で)求められるようになりました。

それはつまり「超人気ゲームたちとプレイヤーを奪い合って、プレイヤーの中の優先度1位を奪わないとビジネスが成り立たない」という超シビアな状況になったことを意味します。

4-3. ここまでのまとめ

1人のプレイヤーさんの「自分の自由時間にスマホで何をするか?」という問題は、そのままスマホゲームのビジネスの難易度に直結していて、2017〜2018年頃を境に、スマホゲームのビジネスがすごく難しい状況に変化している体感があります。

その大きなポイントととして「アニメをスマホで見るようになったこと」と「VTuberさんの配信を見るようになったこと」が挙げられます。
というのも、多くの人にとってアニメやVTuberさんの配信を見ている時間こそ、かつてはスマホゲームをしていた時間だったからです。

世の中的な大きな流れとして「スマホゲームをする時間が減少」すると、その限られた資源をスマホゲーム業界で奪い合う形になり、その争いに敗れた敗者から収益を落としていくようになっているのが現在のスマホゲーム業界なのかなと感じています。


5. 番外編:サブスクとスパチャ(投げ銭)は、スマホゲームの課金にどのような影響を与えたのか?

「スマホゲー×キャラゲー」の多くはガチャでキャラをGETするところがスタートラインになっていると思います。
この「ガチャのために課金する」という感覚が、2017年くらいを境に大きく変わっていったなという個人的な実感があります。

今になって思うのは「サブスク」や「スパチャ(投げ銭)」という課金形態と「ガチャへの課金」を(無自覚的・無意識的も含め)比較できるようになったことは、かなり大きな出来事だった、ということです。

もし「スマホゲー×キャラゲー」が、動画配信サービスや音楽配信サービスと同じ形態・相場感のサブスクだったら、1ヶ月500〜1000円くらいで全キャラを使える、みたいな話になります。

VTuberさんへのスパチャ(投げ銭)も、自分の中の「そのVTuberさんを応援する気持ち」を行動で示すことだったり、VTuberさんにコメントを読んでもらいたい!という気持ちだったり、とにかく「自分の好きな相手に対する行動」としてお金を使っています。

こういった「自分の趣味としているコンテンツへのお金の使い方」が「多様化」することで、「スマホゲームのガチャへの課金」のニュアンスが変化したのではないかと感じています。

個人的な経験として、いつか5chで「キャラクター1人分のデータを使う権利が、確率によっって時には数万円もすることはどうかしてる」といった内容のコメントを見た時に「スマホゲームに課金することの意味」が大きく変わったんだなと強く感じたことがありました。

この「番外編」の内容は個人の経験と感覚のみの話なので、何か調査やデータに基づいているわけではないのですが、兎にも角にも「スマホゲームへの課金」という行為も、意味合いが大きく変わってきたという実感を持っています。


6. さいごに

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

2017年から2021年にかけて「天華百剣 -斬-」というスマホゲームを運営したことで見えた業界や界隈の大きな変化を「アニメのサブスク配信とVTuberさんとスマホゲーム」という角度から考えてみました。

そして次回予告になるのですが、次は1990年代後半〜2020年代初頭にかけてオタク系のキャラクターコンテンツがどのように変化していったかの系譜をまとめてみたいなと考えています。

その時々の覇権コンテンツの移り変わりと、何がきっかけて覇権が移り変わっていったのかを見ることで、キャラクターコンテンツ関係の何かの参考にしていただけるポイントが見つかればいいなと思っています。

それでは引き続きよろしくお願いいたします!


連続企画「スマホゲー×キャラゲー」の現在地
【#1】アニメのサブスク配信やVTuberの登場は「スマホゲー × キャラゲー」にどのような影響を与えたのか?

【#2】アニメ〜美少女ゲーム〜スマホゲーム〜VTuber…各年代のキャラクターコンテンツにおける「主流」は、何が理由でどのように変化するのか?

【#3】なぜ好きなキャラの呼び方が「嫁」から「推し」に変わったのか? そのことで「スマホゲー×キャラゲー」はどのような影響を受けたのか?

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