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【旅の記憶】フィレンツェの甘いクリスマス

フィレンツェでふなっしーを見かけたのは、あと数日でクリスマス、という寒い朝だった。
サンタ・クローチェ教会の広場のクリスマスマーケットで
ふなっしーは、バーバパパやキティちゃんと一緒にバルーンとなって売られていた。いつの間にそんなワールドワイドに。
いや、ふなっしーとはどこか違う。青い服の雰囲気も違うし、メガネもかけているし。
ふなっしーの偽物かもしれない。偽物にしては謎の完成度。
そんなことを思いながら、クリスマス直前の街を歩き回った。

クリスマス感あふれるショップや教会を覗いたりして疲れた午後、
私はピッティ宮殿のすぐそばにあるお菓子屋へ向かった。
可愛らしい店内で美味しいスイーツが食べられるらしい、とかねてから狙いをつけていたのだった。
ショーケースを覗き、ううーん、どれも美味しそうと小ぶりのケーキ2つを選び、
チョコラータという温かい飲み物と一緒にオーダーした。

さて、やってきたそれを一口食べてみると・・・
こ、これはものすごく美味しいのだがしかしめっちゃ甘くてものすごくラム酒成分の強いババ・オ・ラムではないか。
私はそんなにアルコールに強くない。
あかん、これは酔ってしまいそう、ともう1つをかじってみたところ
・・・色も形も違うけど、どっちもババ・オ・ラム。いや、あんなに種類あったのに。
あかん、ますます酔ってしまう、とドリンクを飲むと
これは湯煎したチョコレートですね!という甘い甘い飲み物であった。

私は知らなかったのだ。
その「ドルチッシマ」という店名が、イタリア語で「めっちゃ甘い」という意味だということを。
あの、めっちゃ美味しかったんです、私が組み合わせをミスっただけで。
イタリア語でも英語でも「これ、何?」と確認せずに勢いで選んでしまっただけで・・・
甘いもの好きの皆さま、ぜひお試しあれ。
‥きっとほどよい甘さのもあるはず。

そんなこんなでちょっとリッチなおやつを食べたし、晩ご飯はどうしようと思いながら歩いていたら
朝に通りかかったサンタ・クローチェ教会のクリスマスマーケットに舞い戻ってしまった。
そこにムサカのお店が出ているではないか。
ムサカと言えばギリシャ料理、ギリシャ料理って美味しいって聞くよね、と
食い意地のはっている私は
屋台で10ユーロは高い気がしたが、お店で食べるより安くつくだろうと、それを注文することにした。
寒空の下で待っていると、「チーン!」という不穏な音。
こ、この音は・・・
後から考えるに、クリスマスマーケットの屋台ご飯なんだからそりゃそうだろうと思うのだけれど、
ちょっと期待しすぎた私は、レンジで微妙に温められた
「ぬるいグラタンっぽいもの」を広場の端で頬張りながら、寒さに震えたのだった。

さて、冒頭のふなっしー、後日泊まっていたB&Bのオーナーのご主人に写真を見せ
「I have a question. What's this.」という簡潔な英語を繰り出して聞いてみたところ、
「ああ、そいつぁアニメのキャラクターで、悪いボスの子分だよ。」という趣旨の答えが返ってきて、
まったくもってふなっしーではないことが判明した。
・・・その後世界中を席巻するミニオンと、このとき私は初めて遭遇したのであった。
10年前のクリスマスの出来事。

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