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【旅の記憶】夕暮れのザッテレ(旅のなかの旅 ブラーノ島③)

ブラーノ島には結局4時間ほど滞在しただろうか、このユニークな島との別れを惜しみつつヴァポレット(水上バス)へ。
暖かい船内で少しうとうとしながらフォンダメンタ・ヌオーヴェに戻る。
空がまだまだくっきりと美しく、座ってちょっと休憩したいと思いつつ、結局てくてくと本島を縦断する形でサン・マルコ広場へ向かう。
この辺りは初めて歩く場所であり、名も知らぬ教会のファサードが綺麗だったり、やはりヴェネツィアはどの路地を通っても興味深い。

通ったことのない道を珍しがっているうちに、本島の反対側(南側)のザッテレと呼ばれるエリアまで縦断してしまった。
すでに景色は夕景に変わっている。
歩き疲れた私は、このエリアで有名な「ジェラテリア・ニコ」のテラス席で不思議な夕焼けを眺めながらやっと休憩した。
お向かいのジューデッカ島にある大きな建物、後で調べたところヒルトンホテルだったが、その上に真っ赤に染められた雲が帯状にかかるとても幻想的な夕焼けだった。
寒さが増し、しかも私の頼んだカフェ・コン・パンナ(イタリア風ウインナーコーヒー)はコーヒーに対してクリームの量が多めで、
今の季節ちっとも身体が温かくならなかったが、それでもこの瞬間は強く印象に残っている。
憧れていたヴェネツィアやブラーノ島を歩き回り、淡くはあるが地元の人との交流もできた。さいわい嫌な思いをしたことも全くといっていいほどなかった。
旅先での時間は心底速い。翌日は帰国する日だったが、
その前のひととき、こうして暗くなってゆく景色を眺めながらゆったりとお茶を飲めたことを嬉しく思った。

夕食は以前にも書いたBrekで食べ、「疲れた、どっかでヴァポレットに乗りたい」と思ったのに結局またもサン・マルコまで歩き、
いつもの停留所からリド島へ戻ったのだった。

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