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バスケットボールU15の話          第1章 U15の基本

はじめに

ここ数年、バスケットボール競技における中学生年代の世界は大きく様変わりをしています。これは、日本バスケットボール協会が2014年に国際バスケットボール連盟からの制裁を受け、様々な変革を行ったことが、その一因とも言えます。

しかし、それだけではなく少子化や国民のライフワークの変化など日本国内の社会構造の変化そのものが、日本スポーツ界における育成年代のあり方を変える(今後変えていく)大きな要因となっていることも間違いないでしょう。

ひと昔前までは、中学生年代でバスケットボールをプレイしたければ、自分の通う中学校の部活に入る以外の選択肢はありませんでしたが、現在は部活以外にもクラブやBユースなどの選択肢があります。

このように、様変わりしてしまった中学生年代のバスケットボール環境の中で、選手としてバスケットボールをプレイしている中学生の皆さんや、その保護者の方々にとって、中学生が活躍する場の選択肢が増えたことは喜ばしいことです。

その一方で、「部活とクラブとBユースって何が違うの?」「自分(わが子)はどこでプレーしたら良いのだろう?」という新たな疑問や悩みが生まれてしまったことも事実です。

そこで、このnoteの記事では日本におけるバスケットボールU15の世界について図解を用いてわかりやすく解説しようと考えています。部活動やクラブおよびBユースの違い、ありがちな誤解などを理解して、「バスケットボールU15」についての知識を深めていただければ幸いです。

第1章 U 15の基本


①U15カテゴリーの構成

U15カテゴリーとは、いわゆる中学生年代を指します。
日本バスケットボール協会のチーム・競技者登録の登録区分ではU15カテゴリーのチーム区分は中学校(部活)、クラブ、Bユースの3つに分かれています。

2018年度に日本バスケットボール協会は登録制度の改定を行い、現在のような登録区分(図1)となりました。

図1:日本バスケットボール協会の登録区分
引用:日本バスケットボール協会ホームページ

それまでは、ミニ、中学校、高校といったカテゴリーの区分で、中学校=部活のことを指すのみで、クラブやBユースなどのチーム区分はありませんでした。

つまり、2017年度まではクラブチームやBユースは存在せず、中学生がバスケットボールをプレイする場所は学校の部活動しかなかったのです。(実際はそれ以前からクラブチームは存在していましたが…。)

それでは、なぜ部活動以外にクラブやBユースというチーム区分が生まれたのでしょうか。いや、その前にそもそも部活動やクラブ、Bユースとは一体何なのでしょうか?

②部活動とは何か?

U15の世界において、一番の古株は「部活動」です。
部活動とは、簡単にいうと「同じ中学校の中でバスケットが好きな生徒たちが集まってできたチームによる活動」のことです。

学校単位での活動になりますから、指導者は基本的にその中学校の先生になります。(図2)また、活動場所も自分達の中学校の施設を利用することになります。そのため(あまり知られてはいませんが)、部活動の最高責任者は校長先生になります。

「学校単位での活動である」ということが多くのメリットをもたらすと同時に、様々なデメリット(例えば、バスケットをしたいと思っていても人間関係のトラブルが原因で部活に所属することが困難な生徒は、バスケットボールを続けたくても、転校しなければバスケを続けることが出来なかったり、教師が本来の業務ではない部活動の指導に低賃金で従事している現状があったりするなど)が存在するのも事実です。

そのような中、部活動のデメリットを解消する存在として、クラブチームというチーム形態が大きく期待されるようになってきました。

頭2:部活動は学校単位の活動

③クラブチームとは何か?

U 15におけるクラブチームは部活動と同じように、「バスケットボールが好きな中学生が集まってできたチーム」ですが、部活動と違い、学校単位のチームではありません。(図3)

そのため、コーチは基本的に選手たちの学校の先生ではありませんし、集まった選手たちも異なる中学校の生徒たちになります。当然ですが学校単位の活動ではないので、最高責任者としてチームの活動を見守る校長先生のような存在もいません。

クラブチームの1番のメリットは、選手がチームを選べることです。部活動のように校区という縛りがないため、自分が教えてほしいコーチや自分のスタイルに合った戦術のチームを選び、そのチームに所属することが出来ます。

一方で、デメリットとしては学校単位の活動ではないので、ほとんどのクラブチームは自分達専用の練習場を持っていません。そのため、練習場所の確保がなかなか難しいことや、様々な校区の中学校から生徒が集まってきますので、どうしても練習時間が遅い時間になってしまうことなどが挙げられます。

そのほかにも様々な、課題はありますが、「自分で選んだ仲間、コーチと一緒にバスケットボールができる」という経験は、部活動にはない大きなメリットであり。部活動のデメリットを解消する存在として、今後ますます、その発展が期待されています。

図3:クラブは学校単位の活動ではない

④Bユースとは何か

U15カテゴリー最後のチーム区分はBユースです。
Bユースは、その名の通りバスケットボールのプロリーグであるBリーグに所属するチームが保有する15歳以下のチームになります。
サッカー(Jリーグ)でいうところのJユースのような存在です。

Bユースはプロチームの保有するチームですから、そのコーチもプロコーチです。練習場所もトップチームと同じ施設を使用するユースチームも多く、中体連やクラブと比較して、非常に恵まれた環境にあります。(図4)

ここ数年で、その優れた育成環境を求め、より高いレベルでのプレーを求める中学生たちがBユースでプレーすることを望むようになりました。しかしながら、Bユースに登録できる選手数は15名以内という規定があるため、トライアウトなどで合格した選手のみしかそこでプレーすることが出来ません。また、部活やクラブと比較して費用面での負担も大きくなります。

競技レベルの高い仲間とプレーできることや素晴らしい環境があることがBユースの良さですが、誰でもBユースに所属することができるわけではないですし、金銭面での負担も大きいことなどが、そのマイナス面でもあるでしょう。

図4:Bユースはプロの下部組織

⑤スクールという存在

この3つの区分以外に、バスケットボールをプレーする場所として、いわゆる「スクール」というものがあります。スクールは個人の技術に特化した練習を指導してもらえるバスケの個人塾のような場所(図5)で、チームで活動したり、大会に参加することは基本的にありません。

そのため、スクールに通っているからといって、日本バスケットボール協会に登録する必要はありません。つまり、部活動やクラブ、Bユースなどのチームで活動しながら、別個にスクールに通い、個人のスキルを高めることが出来るのです。

多くのスクールは月謝制をとっており、(中にはボランティアでスクールを開設されている稀有な方もいらっしゃるそうですが。)いわゆるビジネスです。プロのスキルコーチがドリブルやシュート、パスなどの個人スキルに特化した練習を指導してくれます。

自分が所属するチーム以外にも練習し、個人のスキルを高めたいという子供たちのニーズは多く、そのようなニーズに応えるための存在として、今後も発展していくことが予測されます。

また、クラブチームやBユースの中には、その運営と並行してスクール事業をおこなっているチームもあり、スクールが選手勧誘、選手獲得の入口となっているケースも見受けられます。

図5:スクールは個人の技術に特化した個人塾

一方で、スクールに通う子供たちやその保護者の方々の中には、「スクール」と「クラブ」の定義を混同してしまっている人もいて、時々、話がややこしくなる場合があります。

例えば、部活に所属しながらスクールに通っている選手とその親が、部活の顧問に「部活とは別にクラブ(本当はスクールなのですが…)にも通っています。」と誤って伝えてしまい、その勘違いが元で、その後の登録や移籍、大会参加などでちょっとした手違いが起きる場合もあるのです。

このようなことからも、U15世代の子供たちが、大会参加やその後の移籍について不利な状況が起きないようにするためにも、そこに関わる保護者や指導者は部活・クラブ・Bユースやスクールの違いをちゃんと理解し、U15界の構造を理解する必要があるでしょう。(図6)

図6:保護者、指導者、選手はU15界の構造を理解する必要性がある

⑥まとめ

ここでは、U15カテゴリーには中学校(部活)・クラブ・Bユースの3つの区分と、それ以外に個人のスキルアップを目的としたスクールという存在があることを説明しました。また、中学校(部活)・クラブ・Bユースそれぞれの区分について、その概要と課題点及びスクールの概要を簡単に説明しました。

図7:U15カテゴリーの登録区分とスクール

第2章以降では、中学校(部活)・クラブ・Bユースそれぞれの区分について、その歴史的背景や現在置かれている状況、競技者数や参加できる大会の違いなどについて、もう少し丁寧に見ていくこととします。

U15の疑問について、この章の説明では物足りなかった方々は、ぜひ次の章からの内容にも目を通していただければと思います。


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