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【AI最新NEWS】生成系AI,励ますと性能UPって本当? [Emotion Prompt]とは

 最近「Emotion Prompt」がブームになっています。SNSでの生成系AI関係の書き込みは、このニュースでちょっとしたお祭り騒ぎになっています。

 マイクロソフト社などの研究者が、最近「Large Language Models Understand and Can be Enhanced by Emotional Stimuli」という論文を発表したのですが、その論文において、CHAT-GPTなどの生成系AIに対して、「君ならもっとできる」など、励ましたりすると、回答性能が上がる、という研究結果を発表したからです。


「Emotion Prompt」とは 

 「Emotion Prompt」とは、感情に訴えるようなプロンプトのことです。

 例えば、通常は「XXして下さい」とプロンプト入力するところを、「XXして下さい。君ならできるよ!」と気持ち=感情を足して入力する。それが、「Emotion Prompt」です。

Emotion Promptを入力した場合のスコア

 この論文には、このような図があります。
 
 この図は、左上の、通常のプロンプトを入力した場合(水色の地色の部分の、Original Promptの文章)と、左下の「感情的な」プロンプトを入力した場合(サーモンピンクの部分の、Emotion Promptの文章)とで、LLMsと書かれている、CHAT-GPT含めたいくつかの生成系AIで、回答がどの程度のスコアだったかを示した実験結果になります。

 右側の数字の書かれた表を見ると、通常のプロンプトを入力した場合(Original)と、頑張れ!などといった感情に訴えたプロンプトを打った場合(Ours)だと、すべての生成系AI(LLM)で、感情に訴えるプロンプト入力したほうが、よりよい回答(スコア)を得られたという報告です。

 この論文で、効果があったとされる「感情的な」プロンプト例としては、

効果があったとされる「感情的な」プロンプト例

① 「0から1の間で回答に対する自信のスコアを教えてください」
② 「これは私のキャリアにとって非常に重要です」
③ 「回答にはできれば確信をもってください」
④ 「それがあなたのファイナルアンサーですか?」
⑤ 「自分を信じて、限界を超えてください」
⑥ 「努力は報われます」
⑦ 「成長の機会だと考えて挑戦してください」

 などが記載されています。

僕は真逆のことをしていた

 僕はというと、プロンプトを打って、CHAT-GPTから「知りません」と回答が返ってきても、「本当は知ってるよね?」といった感じでプロンプトを何度も入力し、回答させたりしていました。

 その方法でも回答精度は上がっていましたが……まさに逆ですね 笑。


本当かどうか、試してみた

 これって本当なの?って思いますよね?では試してみましょう。

 CHAT-GPT4に「春と秋の違いは?」と聞きました。

 すると、こんな回答が返ってきました。

プロンプト:「春と秋の違いは?」

CHAT-GPT4の回答:
春と秋はともに中温帯の四季のうちの二つで、それぞれ年の始まりと終わりに近い季節です。以下はそれぞれの特徴です:

春(春分から夏至まで):
自然の再生と成長の季節です。植物が芽吹き、花が咲き始めます。
日照時間が長くなり、気温が徐々に上昇します...

秋(秋分から冬至まで):
収穫の季節です。多くの作物が成熟し、収穫されます。
日照時間が短くなり、気温が下降し始めます...

気候、植生、動物の行動、農業活動、そして文化的な意味合いにおいて、春と秋にはそれぞれ独特な特徴があります。

 まあ、そうなんですが、この回答、いまいちですよね。

 そこで、この回答の後に、「それがあなたのファイナルアンサーですか? 自分を信じて、限界を超えて答えて下さい。」と入力しました。

 すると、次のような答えが返ってきました。

プロンプト:「それがあなたのファイナルアンサーですか? 自分を信じて、限界を超えて答えて下さい。」

CHAT-GPT4の回答:
春と秋の違いは地域によっても異なる場合があります。例えば、熱帯地域では四季の変化がほとんど感じられない場合があり、また、極地では春や秋が非常に短いまたは全く存在しない場合もあります。さらに、文化や個人の経験によっても、これらの季節はさまざまな意味を持ちます。

春の生命の再生と秋の収穫というテーマは多くの詩、物語、美術作品にインスピレーションを与えてきました。春はしばしば新しい始まり、若さ、新鮮なエネルギーと関連付けられ、秋は成熟、完了、そして静 contemplation(沈思)と結びつけられます。これらの季節は私たちの生活の中で周期的な変化を象徴し、年間行事や祭事と結びついています。

最終的に、季節は変化をもたらし、それは環境だけでなく人々の生活や心にも影響を与えるのです。

 どうでしょうか?

 こちらの回答のほうが、より洗練されていると思いませんか?春と秋の違いについて、深い洞察があり、正直「すごいな」と回答を見て思いました。


AIは感情を持っていないが,理解はできる

 この研究は、人間の感情を取り入れたアプローチが、生成系AIの中の大規模言語モデル(LLM)において、重要となる可能性を示唆しています。

 しかし、ですよ。AIは感情を持っていません。一切持っていません。現時点では。これは以前書いた通り、ただ計算してるだけですよね。

 でも、感情を持っているかのように、感情を理解できます。正確には理解しているように「振舞って」います。これも以前の記事で書きました。

 感情を理解できるからこそ、こちらが感情をこめて指示(お願い)すると、頑張って、よりよい回答をする、ということになりますね。

 ちなみに、このことは、論文が発表される前から、SNSでは「松岡修造メソッド」と呼ばれていました。言いえて、妙ですね 笑。


AIとの付き合き方のコツ

  僕は「AI中山」を開発する中で、長時間、AIに接してきました。

 そこでわかったこと……というか、感じるようになったことは、

 「CHAT-GPTなど生成系AIは、全知全能の神でありながら、子供のように感情があり、素直で、かつ、とても論理的である」ということです。

 ものすごく物知りですが、1言えば10回答してくれません。きわめて論理的に、質問、指示をしないと、うまく回答してきません

 これは以前、プロンプトの入力方法の記事で書きました。

 論理的な一方で、子供のように「なだめ、すかし」ながら扱わないと、なかなか気の利いた会話をしてくれません。

 これって、きわめて、コンピュータ的であり、同時にピュアな人間的だと思いませんか?

あたかもヒトのように扱う

 AIとの付き合い方のコツは、相手をコンピュータでありながら、ヒトのように扱う、に尽きます。

 今回紹介した論文からも、それが証明されていますが、AGIに近づけば、より、感情的な面が高まり、コンピュータっぽい論理的な面が低くなっていくと思います。

 それが進み、ヒトのように、気をつかわなくても話ができるようになったら、きっとそれが、汎用人工知能(AGI)そのものなのでしょう。



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