見出し画像

なぜ[Chat-GPT]は社内活用できないのか②IT知識よりビジネスリテラシー

 Chat-GPTを業務に取り入れる企業は増えたものの、多くの場合、やがて一部の社員にしか使われなくなってしまう、①ではそんな話をしました。




活用できている企業の共通点


 僕の知ってる限り、Chat-GPTを活用しているのは、広告代理店、コンサルティング会社、弁護士事務所、あとは特定のベンチャー企業などです。

 これらの企業の共通点は? それは、インターネットにある、外部データーを活用して業務を行っていることです。

 例えば、僕も以前働いていたコンサルティング業界では、プロジェクト受注前にクライアント企業と競合企業の調査は必ず行います。業界の研究・考察もよくします。

 この場合は公開情報、つまりインターネットある情報を検索した結果を取りまとめてレポートにします。これはChat-GPTが得意とするところです。



一般企業には活用しづらい理由がある


 それに対して一般的な企業の場合、業務の大半が、社内にあるデータを活用する仕事です。例えば、経営企画部は、過去の経営会議の議事録から、あるテーマについての過去の議論を取りまとめて資料化する、などです。

 そもそもChat-GPTはインターネットにある情報を学習していますが、企業の内部情報は、もちろん学習していません。

 そして現状、企業のChat-GPTは、「Microsoftの企業版Chat-GPTを導入しただけ」の企業が大半のため、社内データを読むことはできていません。だから、業務に直接使えることが少ないのです。



「社内データを読み込ませる仕組み」とは


 そこで、最近、企業版Chat-GPTに社内データを読み込ませる企業が増えつつあります。しかし、それほど進んではいません
 
 なぜ、それほど進まないのか。それは、その仕組みを作るのが難しいからです。

 Chat-GPTが社内のデータを読めるようにするには、次のような手順が必要になります。

Chat-GPTが、社内のデータを読めるようにするための手順

①企業版Chat-GPTに、行いたい業務を入力する。
(X会議の資料を社内のデータから作って」など、仕事の指示をする)

②入力された仕事の指示文を実行するのに必要な社内のデータを、社内のシステムから探して取り出す。

③取り出した「社内のデータ」を、仕事の指示文と一緒にChat-GPTに渡す。
(「社内のデータを使ってXXして」とChat-GPTにお願いする)

④Chat-GPTは、渡された社内データの情報と指示文から、答えを生成して利用者に回答する。

 このプロセスにおいて、難しいのは、どのような社内の業務に、どのような社内データが必要か、また、その社内データを、Chat-GPTが読めるようにシステムを開発・整備することです。

 これには、業務データベース(DB)のシステム変更と、Chat-GPTがそのデータを読み込めるシステム環境を構築する必要があります。

 しかし相当の検討時間と開発コストがかかります。

 つまり、「Chat-GPTが社内のデータを読めるようにする」のは想像以上に大変な作業で、そのため、企業のChat-GPTは、いまひとつ使えないままなのです。



それでもやっぱり「面倒くさい」


 既にChat-GPTが社内データを読める環境を構築して、使い始めている企業もあります。

 しかし残念ながら、それによって劇的にChat-GPTを使うようになれたかというと、実際はそうでもないようです。

 教育が足りないからでしょうか?

 導入企業のシステム部門は、業務で使うコツやノウハウ、などの教育を行っています。「用件は具体的に書きましょう」、「箇条書きを使いましょう」「あなたはXXです、と役割を指定しましょう」といった類のモノです。

 加えて、業務でよく使う日本語の文章を、あらかじめテンプレート化してそれを使って業務をするようにしている企業も多く存在します。


 こうした、教育や環境整備もむなしく、企業でのChat-GPTのビジネスでの活用は進んでいません。社内データーをChat-GPTに読ませても、情報システム部門が教育しても、テンプレートを用意しても、です。

 なぜでしょうか? それは、「面倒くさい」からです。

 面倒くさい? はい。面倒くさいのです。

 例えば、何か業務をしたい時、仮にテンプレートが手元にあったとしても、そのままは使えません。

 文章の修正が必要です。その修正をすることが、「面倒くさい」のです。

 そして、修正したとしても、業務に使える答えが一発でChat-GPTから戻ってくることはありません

 再度、Chat-GPTに「もっと教えて。ここをこうして回答して」と何往復か会話しないといけませんが、これも「面倒くさい」のです。

 この「面倒くさい」が重なると、やがて、Chat-GPTを業務で使うことをしなくなってくるのです。



使いこなす能力は「会話して答えを引き出す力」


 使われないもう1つの理由に、社内教育の仕方があります。

 ほとんどの企業が、Chat-GPTはシステム部門が導入して、システム部門が、システム導入研修と同じく、使い方を教えます。またテンプレートを用意して、Chat-GPTの画面から呼びさせるようにします。

 しかし、Chat-GPTを使いこなす能力は、そもそもITリテラシーが要求されるものでしょうか?

 ここまで書いてると、もう明らかですが、結局、業務で使いこなすには、Chat-GPTにうまくお願いする、会話して答えを引き出す力、ですね。


 Chat-GPTはシステム、テクノロジーなので、「システムリテラシー」が必要と思われて、システム部門が教育していますが、それは大きな勘違いで、必要なのは、「ビジネスリテラシー」です。

 これについては次回、詳しく述べたいと思います。



この記事が参加している募集

AIとやってみた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?