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「二度と観ない!」と、心に誓ったはずだった映画集


前回のnoteで「リリイ・シュシュのすべて」についての話を書いた。

前回の記事では、この映画を「大好きだけど大嫌いな映画」と言い表したけれど、
この作品は、私に映画の魅力を最初に教えてくれた作品。

鬱屈とした物語の中で描かれる、眩しすぎるぐらいの映像美に惹かれて
こんな表現方法があるんだ。と目から鱗だった。
映画の表現の幅の広さを初めて感じた。

その反面、やはり好んで観られるような内容ではないし、
人によっては目を背けたくなったり、不快に思われる映像も、容赦なく描かれる。

当時、高校生だった私にとって理解ができないようなシーンの数々。
心に不思議なモヤモヤが残った。______


時は過ぎ、様々なモヤモヤを抱えて居心地悪そうに仕事をする20代前半。
愚痴を吐いて、話を聞いてくれる同期なんて周りに1人もいなくて、ガールズバーでついついお酒を頼みすぎる。

その時の私は、何も考えていない10代後半くらいの女の子の輝きが羨ましくて、
「学生時代に戻りたいなあ。」とか、
「今が1番楽しい時期だから楽しみな?」とか、
生意気な説教を垂れ流すような若手社員だったと思う。

ガールズバーで綺麗なドレスを着て、お喋りをして、お金が入る煌びやかな世界が、相当腐ってたその時代の私にはキラキラして見えたのだ。

ガールズバーの話がしたいんじゃなかった💦

映画というのは、そんなキラキラした世界を体現させ、現実から逃避できる一つの手段としてかなり優れているエンタメだと思うが、
鬱屈とした現実を突きつけてくる映画もある。

「リリィシュシュ」を初めて観た時のあの時のモヤモヤは、今も私の中で立派に育って頭の中で渦巻いている。
それも私を構成した一部。
映画を観て、現実から逃避するだけではなく、現実を直視して、そのモヤモヤをどんどん育てていかないと不公平だと感じてしまう。

なので、私はあの時の衝撃を追い求めて、自分の中のモヤモヤを育てるための映画の旅に出ることがあります。
今日はそういう映画を紹介します。

以下、ネタバレを含む内容になります。

ファニーゲーム


〜人間が1番怖い〜

穏やかな夏の午後、バカンスをしに、別荘へと向かうとある家族。

そこに見知らぬ青年が卵を借りに訪ねてくる。
快く卵を貸すも、青年の態度は徐々に豹変していき…

避暑地に別荘をもつ幸せな家庭を築いた夫婦がひたすら2人の若者にめった殺しにされる映画。

初め、夫婦の一人息子が銃殺されてからの10分ほどの静寂がとても観ていて辛いです。
幸せな夫婦2人に都合の良い展開は一切訪れず、
映画の定石を全て覆すあり得ない展開の数々がとても不快。

"理由なき暴力"という言葉がひたすら似合う作品。
不条理な展開の数々に「二度と観ない!」と心に誓ったのを覚えている。


岬の兄弟

〜ふるえながら生きていけ〜

足が不自由な兄と自閉症の妹と、2人きりの六畳間でひっそりと生活する中、厳しい貧困を乗り越えるために2人は犯罪に手を染める…。

最後、震えました。
生きることの辛さと真っ当に仕事にありつく事ができない不条理がひたすら悲しかったです。

生活に困窮した兄は妹を売春させ、
妻に先立たれた年寄りの男、障がいをもって不自由に暮らす青年をターゲットにお金を稼いでいく。

救いようのない展開の数々に「二度と観ない!」と心に誓ったのを覚えている。


ダンサー・イン・ザ・ダーク

〜魂の歌声は、誰にも止められない。〜

遺伝性の病から視力を失いつつあるセルマは女手ひとつで息子を育てながら、工場で働く。

いずれ訪れる息子の手術のためにコツコツとお金を貯めて、働きに出るのであったが…。

泣きました。
純粋な一つの"信念"を抱えて生きる母親が不幸のどん底に落ちていく。

ラストの母親の選択、息子への深すぎる愛を感じつつ、やるせない展開に「二度と観ない!」と心に誓ったのを覚えている。


前にも書いたが、私はMARVEL作品とか魔法使いが魔法を使って〜とか、そういったキラキラした世界観には、とことん縁がない。

人生は全て「めでたし、めでたし。」で終わらないし、その一方で、世界のどこかで傷ついている人たちがいる。

上記の作品のように、「若者が人を殺して〜」とか、「お兄ちゃんが妹を売春させて〜」とか、
「お母さんが息子の手術費をコツコツ貯めて〜」とか、
こういう不条理な現実もあってこその人生なのだから、観ておかないと不公平だと感じてしまう。


これからも私は上のような映画を何度も何度も観るだろう。

「2度と観るか!」は
「なんか気になるからもう一回だけ観てみよう」から
気づいたら「なんか定期的に観ないといけない作品」に不思議と変わっていく。

今回、紹介した3つの映画に共通するのは、
本当に嫌になるほど、人間が人間臭く生きている。
泥水を啜るような人間臭さがあるからこそ、他の作品にはない魅力がついてくるのだと思う。

そういう作品は、いつまでも自分の心の中に残り、自分の中で育っていく。歳取って色んな解釈を生んだりする。
そういう作品とどんどん出会っていきたいと思う貪欲さと一期一会を大事にしていきたいなと、
最近何かと忙しい今、思うことです。

3つの作品。興味がございましたら是非。
心に深〜いキズが残ったとしても、
私は一切責任を負いません💧悪しからず😅(笑)

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