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マイクロノベル集 275「人魚に関する話」

No.1521
人魚が売られているところを見たことがあるよ。とても小さくて、両手ですくえるぐらい。なにかの手違いで縁日の金魚すくいに混ざっていてね。そのあと? 二人で海まで行って、それっきりだよ。――風音が歌声のように聞こえる夜に、ばあちゃんから聞いた話。


No.1522
「こちら、山の湧き水をくんでろ過した美味しいミネラルウォーターです!」うそだよ。だってほら、ペットボトルの中に入っている私をごらんよ。尾びれがついているでしょ? 人魚だよ。山に人魚がいるわけない。「生きて腸まで届きます!」届けなくていい!!


No.1523
龍にならんと滝登りをしていたら、滝壺で人魚と出会った。「底に開いた穴があって、海に通じてるのよ。来たはいいけど、疲れて戻れなくなっちゃった」ぼくは川の下り方を教えてあげて、お礼に滝の登り方を教えてもらった。竜宮城で再会するのは少し先の話。


No.1524
ねえ、リュックから顔を出しちゃだめ? 空が見たいの。「星空でよければ」悪いね、運んでもらってさ。吸血鬼って、なかなか力持ちだね。「いま、空前の筋トレブームなんだ。人魚を背負って歩くなんて楽なもんだよ」長生きすると価値観も変わるもんだね。


※noteだけで読める、このマイクロノベル集の続きはこちら。



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