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マイクロノベル集 278「呑んで、呑んだ、想い出」

No.1536
なあ、覚えてるか? 俺は前の彼女にこっぴどく振られて、この世とおさらばするつもりだった。この店で酔い潰れてね。「ヘベレケって奴だね」そんな時、俺のすべてを受け入れてくれる美しい人と出会ったんだ。色白で、グラマーな。「一人きりの便所でな」


No.1537
店から帰る道で、何度か奇妙な女を見かけたんだ。ほら、あのでかい踏切の近くにあるトンネル。幽霊かと思ったけど、足はあるんだ。「お前のファンだろ?」自慢じゃないが、俺は音痴が取り柄の三流ギタリストだぜ。「泥酔した時はいい線いってるよ?」マジで?


No.1538
「諸君、聴きたまえ! これがロックンロールだ!!」おお、酔った指が走る。まるで音が俺を突き動かしているようだ。そうか、俺が弦に触れているんじゃない。弦が俺の指に吸い寄せられるんだ。「残念だがここでお別れだぜ、ハニー」二度と弾けなかった。


No.1539
音楽に沈む俺は格好いい。「酒に溺れているだけだ、馬鹿者」女に溺れたい。「今時、酒とタバコと女か?」そうだよ、欲しいんだよ。あっ、かわいい子猫ちゃんだ。にゃーん、にゃーん……なぜこっちに来ない? 「酒臭い上にタバコ臭いからだろ」禁酒禁煙する。


※noteだけで読める、このマイクロノベル集の続きはこちら。



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