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マイクロノベル集 121

876
あんなのダメだよ。あれはただのマネっこさ、俺のね。オリジナリティが感じられない。……そう貶されていたぼくは、模倣を繰り返して成長した。ぼくはぬいぐるみのクマさん。人間は可愛いって言ってくれるよ。さあ、熊はなにを模倣するんだい?


877
上空から獲物を狙うトビたちが人間に追い払われている。愚かだなあ。翼のある鳥だからって飛ぶ必要はないんだ。我ら賢いカラスは地面をチョコチョコ歩いて、さっと獲物を……い、犬だぁ! おたすけー!!


878
コピーして増やして食べる。またコピーして増やして食べる。便利だなあ、このチョコ。食べても食べてもなくならない。でも、なにかおかしい。最初はイチゴ味だったはずなんだけどな。いまはヨーグルト味だ。なんだかお腹も痛いぞ。


879
君に会いたくて階段を降りていく。変わる季節をカメラに収める。秋から夏へ。春から冬へ。君が待つところに着いたら、スイッチはオフ。景色は見えなくなる。「なにを撮っていたの?」なにも。なにも見えなくてかまわない。


880
電話番号みたいな存在感。未知でも繋がるトーク。アクセス、アクセス。アウトプットは現在進行形。「そのナンバーは使われておりません」過去完了形の残骸。接続、接続。死屍累々のトークン。暗号資産みたいな電話番号。知らない。買えない。会いに来て。

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