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マイクロノベルちょいす 072「ここではない場所の話」
No.1322
「もっとちょうだい」学習データはさっきあげたでしょ。そんな目で見るなよ。その無垢なまなざしに負けて、街で写真を撮影してAIに与え続けた。人を。道を。建物を。「もっとちょうだい」ぼくは街を呑み込んだAIを連れて街を出る。次はもっと都会がいいかな。
No.1348
宇宙では音が響かない。そんな常識が通用しないのが観測可能宇宙の外側。わたしの声は波となって広がり、重力にとらえられて掠れ、あなたの元には届かないかもしれません。でも、確かに響いています。歌声こそがわたしの思考。喉がかれることもありません。
No.1349
木陰で休んでいたら、草の裏側についた雨粒がひそひそと話していた。いまね、空に上ではタイヘンなことが起こっているんだ。それは落ちてくるの? もちろんだよ。そのときに地上の人間どもは――あっ。雨粒はくっついて地面に落ち、蒸発した。夏に聞いた話。
No.1352
偉大なる勝者に花束を。海底より川を遡り、滝を登り、天と地を逆転させた若者。敗者には新しい土地を。勝者に捧げる花が咲く場所。時が経てば、これは名誉ある仕事となりましょう。幼き手が花束を編み、老いた手に渡す時、天と地は再び混ざりましょう。
No.1361
雨を読んでいるのさ。あんたたちには無理だよ。縦読み、横読み、気が利いたところで斜め読みぐらいだろ。なにがわかるかだって? ははは。読む前に書くことを始めてはどうだい。おっと。我々はそろそろオイトマするよ。君たちと会うことは二度とないだろう。
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