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台風と精神

今日こそは晴れを! という僕の切実な願いも虚しく、夏の終わりを告げるような曇天が相変わらず広がっていた。聞けば、どこか南の方で台風が発生したらしい。また荒波に揉まれて救難信号をだした外国籍船がいたとか。

僕の住んでいる地域は東北であるから曇り空であることと台風の発生の因果性について知るところでないが、どうしても両者を結びつけて考えたくなってしまう。夏を追いやろうとしているのはまさしく台風なのだと。距離だとか日本を覆っている雲の動きだとかは関係なく、事実季節は堂々と巡るのだから。秋は台風が多く発生する季節だというのは言うまでもなくみな知っているところだ。

閑話休題。今日は外に出ていい思索ができた。どこか晴れない心持ちであったが街の雑踏が、かすめる風が素晴らしかった。通行人はみな生きている喜びを放ち、僕はそれを享受したようである。ジーパンにTシャツといった軽装の人もいれば、女性らしく細長い腕を覗かせる清廉な格好の人もいたし、赤信号を何食わぬ顔で渡るスーツ姿の男性について渡る中年のおばちゃんがいた。

街中を闊歩していると真に生きているという実感もしくは、まるで幽霊になってしまったような虚無感のどちらかに苛まれるが、今回は前者であった。フラットな思考を保てている証拠だ。これが鬱になると後者になる。鬱は正常な思考を妨げ、時には思いがけない選択をしてしまうからそういう時には安静にするのがよろしい。

よく健全な精神は、健全な肉体に宿ると言われる。心の荒波に呑まれぬよう文化的な生活を心がけるが吉ということだ。




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